第二十二話 運命共同体 side:真冬

 獅童陸が死んだ。

 昨日の放課後、獅童家の玄関で死んでいたらしい。

 噂によると、胸が内側から爆発したように死んでいたようだ。


「非常にまずい展開ね……」


 放課後の生徒会室。

 真冬は一人、頭を抱えながらため息をつく。


(私たちには『死んでもやり直せる』という特性があるから、陸の死は死であって死ではないわ)


 きっと今頃、過去に戻って過去の真冬と頑張っているに違いない。

 故に問題は今の真冬だ。


(私はこの世界線、時間軸で一人で頑張らないといけないわけね……)


 正直心細い。

 せっかく陸という同じ境遇の仲間ができて、これから頑張っていこうと思えたのに。


(もう自分で命を断つ勇気もないし、とりあえず一人でやれるところまで頑張ってみようかしら)


 誰かに告白されれば、真冬も死に戻りができる。

 そうすれば、過去に戻った陸と一緒に頑張れるに違いないのだから。


 などなど。

 真冬がそんなことを考えていると。


 ガラガラ。


 と、聞こえてくる生徒会室の扉が開く音。

 入ってきたのは金髪ツインテール、発育の悪そうな胸を持った少女だ。


 獅童奈々。


 少し前、真冬が痴漢から助けた少女。

 そして陸の妹だ。


「……」


 と、何も言ってこない奈々。

 いつも元気で強気そうな彼女の面影は、今の彼女からはまったく感じられない。


(まぁ仕方ない、わね)


 なんせ奈々は陸が死に戻っているのを知らない。

 要するに、彼女にとって陸の死は正真正銘の死なのだから。


 そうして、真冬には奈々がここに来た理由もわかる。

 伊達に奈々に告白されまくり、死に戻りしまくっていない。


「お姉さま……お兄ちゃんが、お兄ちゃんがっ」


 と、涙を流し始める奈々。

 彼女はそのままバッと、真冬に抱きついてくる。

 そして、奈々は真冬へとそのまま言葉を続けてくる。


「お兄ちゃんが死んじゃった……あたし、嫌だ……そんなの、嫌だよぉ」


「えぇ、慰めなんて意味はないだろうけど……こんな胸でよければ、いつでも好きなだけ貸してあげるわ」


「お姉、様」


「好きなだけ泣きなさい。そして、いつか立ち直って……陸もきっとそれを望んで——」


「好きです」


「……え?」


「お兄ちゃんがいなくなって、そんなのもう……あ、あたしもう、お姉様なしじゃ生きて行けなくてだから!」


「ま、待ちなさ——」


「だ、だからあたしと付き合ってくださいっ」


 と、いっそう強く抱きついてくる奈々。

 同時、真冬の胸から響く爆発音。


(ああ、そう……こうなる、の……ね)


 陸が死んだら、奈々は速攻で真冬に告白してくる。

 すなわち、陸の死=真冬の死。


 運命共同体。


 これは難儀だ。

 真冬はそんなことを考えながら、死んでいくのだった。

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