第二十話 放課後エスケープ②

「はぁ……俺がイケメンじゃなかったら体力的に耐えきれなかったな」


 時はあれから数時間後。

 もうすっかり夕暮れ時。


 ホームルームの後。

 陸は担任から用事を頼まれてしまったのだ。

 それは裏庭に落ちているゴミ拾いを、担任と一緒にやること。


 何気にゴミはたくさん落ちていて、時間がかかり現在に至ったわけだ。


(まぁなんにせよ終わったわけだし、ようやく帰れるな)


 陸はそんなことを考えながら、学校の正門へと向かっていると。


「ん……あれ?」


 正門のところに見たことのある姿。

 というか間違いない。

 あれは——。


「あ、陸! ようやく終わったんだな!」


 と、一目散に陸の方への駆け寄ってくるのは澪だ。

 彼女は陸に抱きついてくると、ゼロ距離から言葉を続けてくる。


「陸、お疲れ様だ! これで一緒に帰れるな♪」


「帰れる、って……澪、今までずっと待ってたの?」


「?」


「いや、だから……この数時間、ずっとここで立ってたの?」


「うん! だってうち、陸と一緒に帰りたかったから!」


「……」


 う、嬉しい。

 なんて感動的な言葉。

 澪みたいな美少女からこんなことを言われるなんて、本当に嬉しすぎてやばい……が。


(状況が状況だけに素直に喜べねぇええええええ!)


 だって死ぬもん。

 告白されたら死ぬもん。

 一緒に帰ったら告白される率高いもん。


「ん、あれ?」


 と、陸はここでとあることに気がついてしまう。

 故に彼は澪へと言う。


「ねぇ澪、頬っぺたになんか赤いのついてるよ?」


「あぁ……ケチャップだ! 教えてくれてありがとう! 少し前、邪魔者……じゃなくて、ケチャップをつぶして捨てたんだ! きっとその時のだ!」


「ふーん、まぁ気がつけてよかった」


「うん♪ やっぱり陸は優しいな!」


 と、きゅっとさらに陸を強く抱きしめてくる澪。

 そんな彼女は次の瞬間。


「なのにどうしてうちを避けるんだ?」


 と、真っ暗な瞳を陸に向けてくる澪。

 彼女は感情のこもらない声で、陸へと言葉を続けてくる。


「昨日から態度がおかしいだって陸うちからなんか離れようとしてるしそもそもさっきだって邪魔者から用事を頼まれたら安心したような顔したし今だってうちのことみたらやばいって顔したおかしいおかしいおかしいおかしいうちの陸はそんなことしないうちの陸はうちのことしか考えない王子さまだからそんなことしない」


「……ひ、ひぃ!!」


 と、陸は思わず澪から身を離してしまう。

 すると彼女はすかさず彼へと言ってくる。


「どうして逃げるんだ? ひょっとして……あ、そっか! 陸、照れてるんだな?」


「ち、違……」


「大丈夫だ! うちがゆっくり陸に愛を教えてあげる! 照れる必要なんてないんだ! だからそうだ……まずは陸が逃げない様に、足を動かない様にしないと!」


 チキキキキキッ。

 と、カッターの刃を出してくる澪。

 なるほど。


(真冬さんや、澪がここまでやばい人だっていうのは、聞いてなかったんですがそれは……)


 普通に怖い。

 とりあえずすることは一つだ。


(逃げるんだよぉおおおおおお!!)


 などなど。

 陸は心の中で絶叫したのち、裏門目指して走り出すのだった。

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