第七話 イケメン執行②

「あ、がが……っ」


 と、口から泡を拭きながら痙攣している男子生徒達。

 イケメンの力に当てられたのだ。


 陸はイケメンの力に改めて感動しつつ、今すべき最優先事項をこなす。

 それすなわち。


「大丈夫? 怪我はない?」


「……」


 と、陸の言葉に対して何も言ってこない澪。

 彼女は呆然とした様子で、陸の方を見つめてくる。


(ひょっとして、どこか怪我してるのかな?)


 いや、というかむしろ。

 男子生徒達と同じく、イケメンの波動にやられて気絶してしまった可能性がある。


(もしそうだとしたら、早く保健室に連れて行かないと!)


 などなど。

 陸がそんなことを考えたのち、澪の肩へと手を伸ばそうとした。

 まさにその瞬間。


「……い」


 と、わずかに聞こえてくる澪の声。

 彼女は伸ばしかけた陸の手を両手で掴んでくると、そのまま彼へと言葉を続けてくる。


「かっこいい……王子様みたいだ……」


「……へ?」


「っ! あ、ちがう! そうじゃないんだ! うち、そうじゃなくて!」


 と、急にわたわたし始める澪。

 彼女は慌てた様子で陸の手を離すと、さらに言葉を続けてくる。


「お、お礼! うちはお礼を言いたかっただけで、その……だからその、さっきのは違くて!」


「……」


「あ、でもその……かっこいいっていうのは本当で……じゃなくて、その」


「…….」


「う、うぅ…….うち、何言ってるんだ……」


 と、頬を真っ赤にして俯いてしまう澪。

 なるほど。


 めちゃくちゃかわいい。


 陸はスクールカースト最底辺の雑魚だった。

 当然、女の子と話した事などほぼない。

 片手で完全に数え切れる程度だ。


 それがどうだ。

 女の子にいきなりこんな可愛い反応されたらどうだ。


 やばすぎてやばいしか考えられない。


(なんにせよ、ちゃんとイケメンに相応しい助け方をできてよかった)


 見る限り、澪は大丈夫だ。

 これを機に彼女の退学という未来も変わった可能性がある。


「あ、あの……っ」


 と、陸の思考を断ち切るように聞こえてくる澪の声。

 彼女は陸が何か言うよりも先に、彼へと言葉を続けてくるのだった。


「次の日曜日……その、うちとデート……してくれません、か?」

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