第五話 体育館裏の地獄

「おい、脱げよ」


 場所は体育館裏。

 陸が到着してすぐに聞こえてきたのは、そんな声だった。


「で、でも……うちは」


「いいから脱げって言ってんだよ!」


 と、再び聞こえてくる声。

 陸がそちらの方へと視線をむけると、そこに見えてきたのは——。


「なんで、なんでこんな事するんだ……うち、何にもしてないのに」


 と、そんなことを言うのは茶髪ポニーテールがトレードマークな、色々と発育のいい制服少女。

 見たことがある——というか、同じクラスの少女だ。


 スポーツ万能の有名少女……名前はたしか悠里澪ゆうりみおだ。


(途中から退学しちゃったのは知ってたけど、まさかこれが原因で?)


 などなど。

 陸がそんなことを考えている間にも。


「なんでだと?」


 と、聞こえてくるのは男子生徒達——そのうちの一人の声。

 彼は仲間達と共に、澪を取り囲みながら彼女へと言う。


「俺の彼女がさ、お前に焼き入れて欲しいって言ってんだわ」


「ど、どうして……そんな」


「お前のせいでレギュラー逃したんだと。だからとりあえず、お前のこと全員で回したあと人前に出れねぇツラにしてやるから」


「う、うち…….なにも悪くないっ」


「うるせぇなぁ。目をつけられるようなことするのが悪ぃんだろうが!」


 ダンッ!

 と、澪の肩を突き飛ばす男子生徒。


(っ……あいつら!)


 もう冷静に状況確認している場合ではない。

 今こそイケメンの勤めを果たすべきだ。


(橋から飛び降りたあの子の時は失敗したけど、今の俺はあの時とは違う)


 イケメン力マックスを持って、絶対に目の前の子を助けてみせる。

 さぁ。


「今からイケメンを執行する」

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