第三話 ブサデブはやりなおす②

 とりあえず、ベッドから起きて部屋を出てわかったことはアレだ。


 ここはどこかの一軒家だということ。

 そして、なぜか両親や妹がここで生活しているということ。


 そしてそして。

 彼らの態度からすると、どうやら陸もここに住んでいるということ。


「うん……意味わからん」


 少なくとも、昨日までの陸——獅童一家はクソ狭いボロボロマンションに住んでいた。

 要するに貧乏だ。


「断じてこんな綺麗な一軒家じゃなかった……っていうか、まぁいい」


 ぶっちゃけ、そんなことたいした問題ではない。

 現在、陸は凄まじい問題に直面しているのだ。


 さてさて。

 遅れたが、場所は洗面所——鏡の前。


 陸は宣言通り、顔を洗いにここにやってきた。

 パニックになりかけている頭を落ち着かせ、なんとか顔を洗い……鏡に写った自分を見た瞬間。

 陸は気がついてしまったのだ。


「いや、誰だよ!?」


 いやマジで誰!?

 と、陸は何度も自分の顔を触る。

 すると当然、鏡の中でも同じ動作をする自分。


 そう、自分なのだ。

 間違いなく鏡に写っているのは陸本人だ。

 でもそれはあり得ない。


「誰なんだよ、このイケメン……」


 鏡に写った陸は、どうしようもないほどにイケメンになっていた。


 まるでアイドルのような顔立ち。

 高身長に筋肉のついたがっしり肉体。

 まるでラノベやアニメの主人公のようだ。


「……」

 

 怖い。

 もう朝から色々ありすぎて、マジで怖い。

 今すぐに布団被って現実逃避したい。


 だがしかし。

 それにも増して耐え難い欲求がある。


「…….」


 二年生の始業式の日に時間が戻ってる。

 おまけにイケメン金持ち化してる。


「……」


 そんなん。

 そんなんアレだ。


「……」


 やること。

 一つしかないだろ。


「うぉおおおおおおおおおおおっ!! ハッピーエンジョイモテモテハーレム学園ライフ送るしかないだろこれぇええええええええてえ!」


 言って、陸は洗面所から全速力で飛び出るのだった。

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