13.十八番?
その後も恵梨香は我が道をまっしぐら。
次に乗ったアトラクションはバイキングだったが、気が付けばコウちゃんの隣を陣取っていた。
さらにその後のアトラクションもその次もコウちゃんの隣。
そして、反対隣にはしっかり林田君をキープし、彼の疑念を最小限に抑えようとしている。
コウちゃんも特に嫌がる様子も見せず、それどころか楽しそうに恵梨香とお喋りをしている。
だが、それがいつまでも続くわけがない。
流石に林田君の顔にもイライラがにじみ出始めた。
私の方はもう諦めの境地に近かった。
こんなにも簡単に幼馴染が恵梨香に落ちるとは思わなかった。
まったく、最初だけだ。ざまあ!と思って喜んだのは。
結局、コウちゃんだって顔が可愛けりゃいいんだ、誰だって。
そんなことをブチブチ心の中で思いながらみんなの後を付いて行くと、次にたどり着いたのはお化け屋敷だった。
「・・・マジか・・・」
私は思わず呟いた。
正直苦手なやつだ。絶叫マシーンなら何でもOKなのだが、こういうのは不得手だ。
「私、ちょっとトイレ行ってくる。先に並んでて。戻ってくるのが遅かったら私を置いて入っててね」
歩実と斉藤君に伝えると、私はお手洗いに向かった。
しかし、歩実が後から追ってきた。
「ちょっと、唯ちゃん!」
トイレで歩実が私に食らい付いてきた。
「何やってんのよ!? 幼馴染君、ミイラ取りがミイラになってない? ダメじゃない!」
「・・・うん。ダメみたい、アイツも・・・。ごめんね、歩実、折角の斉藤君とのデートをお邪魔しちゃって」
「幼馴染君がダメって言うより、唯ちゃんがダメなのよ! もっと本田君にくっつかないと!」
「そうだけど、隙が無いんだもん・・・」
「隙なんて問題じゃないのよ! 割り込むの! グイっと!!」
うう・・・、歩実が怖い。いつもは優しい彼女がお怒りだ。
そりゃそうだ。私のせいで斉藤君にも迷惑かけてるもんね。
「はあ~・・・」
長く溜息を付くと、二人でお化け屋敷まで戻っていった。
残りの四人は列には並ばず、私たちを待っていた。
「早く、早く~!!」
恵梨香が歩いてくる私たちに向かって可愛らしく叫ぶ。
その手は林田君の腕だけではなく、コウちゃんの腕にまで手をかけている。
まさに両手に花状態。
悪気の無いその笑顔に、私も歩実も目を丸めて口をアングリ開けてしまった。
「ふふふー、早く入りましょ! 楽しみ!」
「へえ、西川さんってお化け屋敷系好きなんだね」
コウちゃんが優しく話しかける。
「意外?」
恵梨香は可愛らしく首を傾げて笑顔を見せた。
「いや、そう言う意味じゃなくて。そんなに楽しみなんだなあと思ってさ」
「うん!」
もはや、林田君とどっちが彼氏か分からない。
優しく話しかけるコウちゃんを林田君が睨みつけているが、コウちゃんはどこ吹く風だ。
しかし・・・、
「そうか! じゃあ、楽しんできて!」
コウちゃんはにっこりと恵梨香に笑いかけると、自分の腕をスッと抜き取った。
え? っと恵梨香は目を丸めた。
「唯花はお化け屋敷苦手なんだ。だから、俺たちは他のところに行くよ」
そして私の傍に来ると、
「それに、もうそろそろ別行動でもいいんじゃない? トリプルって言ってもデートなんだしさ」
そう言って私の手を取った。
「俺もいい加減、唯花と二人きりになりたいし」
そして、繋いだ私の手を口元に持って行くと、私の指輪にキスをした。
「!!!」
「いいだろ? 唯花。次、何乗りたい? 絶叫系全制覇するって言ってたよな?」
にっこりと笑って私の顔を覗き込む幼馴染に、私はパクパクと口を動かすだけで、何も言葉が出てこない。
「そうよ! 私も斉藤君と早く二人きりになりたい!」
そこに歩実が乗っかった。
歩実は斉藤君の腕に手を絡めると、
「ね?」
と可愛らしく首を傾げる。
「ははは! なんだよ~、歩実~! 急に~!」
普段、あまりデレないこの歩実の態度に、斉藤君は一発KOのようだ。
「私もお化け屋敷は嫌! 違うのがいい! ね? 斉藤君、いいでしょ?」
歩実が悪女になっている・・・。
ごめんなさい。私が不甲斐ないせいで。
「も~、我儘だなぁ~。どこに行きたいの? 歩実は」
デレッデレの斉藤君・・・。
まあ、こっちはいいか・・・。
それよりも・・・。
「唯花、早く行こうぜ! 唯花が乗りたいものなら何でもいいから」
こっちの幼馴染・・・。
にっこり笑っているけど、ちょっと悪い顔している。
もしかして、今までコウちゃんのわざと・・・?
ああ、でも、そうかも・・・。
―――持ち上げておいて、一気に落とす。
これ、コウちゃんの十八番だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます