四題目「冒険 星 化け物」
薄暗い洞窟の中、目の前を盲目の怪物が通り過ぎる。
怪物の息遣いが聞こえて、少年がごくりと唾を飲んだ。
突然、怪物の足が止まり、ゆっくりと振り返る。
必死に口を押さえながら、少年は長い一瞬が過ぎ去るように願う。
その願いが通じたのか、怪物は何事もなかったかのように歩き始めた。
怪物の姿が暗闇に消えると、少年は一気に息を吐き出す。
今すぐ引き返したい気持ちが湧き出たが、自分の目的を思い出し、震える指でライトを点灯させる。
足元には砕けた骨が散乱していて、洞窟を訪れた人の末路を物語っていた。
それらを踏まないように避けながら、壁を伝って一歩ずつ歩いていく。
しばらくして、大きく開けた場所に出る。ライトを上に向けるが、天井は全く見えない。
背負ったリュックから地図を取り出して、少年は目的地なのかを確認する。
間違いない。ここに、宝があるはずだ。
少年は周囲を見渡すが、それらしき物は見当たらない。
あるのは、四角に区切られた白い砂が溜まる場所だけだ。
砂場の中に宝があると思った少年は、自分の服が汚れることも構わず、砂の中を掘り続ける。
爪の中に砂が入りながらも、少年は探し続ける。
しばらくして、少年が砂の中から星を見つける。
少年が喜んでガッツポーズをした瞬間、背後に物音がして振り返る。
そこには、盲目の怪物が仁王立ちしていた。
「こんなに汚して!」
仁王立ちの母が、男の子を見下ろしている。
「だって、お宝を見つけなきゃ……」
「また変なこと言ってないで、もう帰るわよ」
男の子が母に連れられて、公園を出て行く。砂場には、少年が落とした星形のおもちゃが残されていた。
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