逆行

 全ては秩序を失う方向に推移する。丸め固めた雪玉は、解れ割れ、融け流れ、浮いて散る。

 だらしなく積もった雪を丸め固めることができるのは、この手だけ。優越感に浸り、目を開ける。

 彼もまた、逆行するのだ。

 寂しくなり、しかし安堵もして、白灰はっかいを見上げる。低温の気塊より、逆行のベクトルを失ったばかりの結晶が、だらしなく降下してくる。

 俺には見えなかった。

 俺にできるのは、ただ彼の逆行の傍らに立つことのみ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る