日陰縁童〈べらんだわらし〉 作中作集

7にんのトム

　むかしむかし　おおきなうみをわたった　ずっとむこう

　ちいさなしまぐにに　7にんのせいねんがいました

　なまえはみんな　トムでした

　なまえだけでなく　かおも　せかっこうも　みんないっしょでした

　7にんのトムは　なまえもみためも　おなじでしたが　こころは　ちがっていました

　とあるトムは　やさしいトムでした

　とあるトムは　しんぱいしょうのトムでした

　とあるトムは　おこりっぽいトムでした

　とあるトムは　じしんかのトムでした

　とあるトムは　さみしがりやのトムでした

　とあるトムは　のんびりやのトムでした

　とあるトムは　あそびずきのトムでした

　7にんのトムは　おおきなおうちで　いっしょにくらしていました

　7にんのトムは　なかよく　へいわにくらしていました

　ですが　あるあさ

　あそびずきのトムが　いなくなっていることに　6にんのトムはきがつきました

　どれだけまっても　あそびずきのトムは　かえってきませんでした

　いつも　わいわいたのしそうだったトムがいなくなり　おおきないえのなかは　とてもしずかになってしまいました

　どのトムだったか　いまとなってはわかりませんが

　とあるトムが　あそびずきのトムのへやにあった　トランプを　ひろまにもってきました

　6にんのトムは　おおきなテーブルをかこみ　まいにち　あさからばんまで　かけにふけりました

　6にんのトムはみんな　のどがかわいてきました

　おなかもすいてきました

　けれど　かけがたのしくて　みずをくみにいくきも　りんごをとりにいくきも　おこりません

　そのうちに　6にんのトムは　かけをするきも　おこらなくなってしまいました

　おおきなテーブルにつっぷす　みんなのなかに　ひとり　たちあがるものがおりました

　じしんかのトムでした

　じしんかのトムは　じぶんなら　みんなをげんきにすることができる　といって　いきようようと　いえをでていきました

　ところが　どれだけまっても　じしんかのトムは　かえってきません

　5にんのトムは　じしんかのトムならだいじょうぶだろう　とおもうと　ふしぎと　ちからがみなぎってくるのでした

　きぶんがよくなった　のんびりやのトムは　ひなたぼっこをしてくるといって　いえをでました

　ところが　どれだけまっても　のんびりやのトムは　かえってきません

　つぎつぎになかまがいなくなるので　4にんのトムは　こころが　とてもつかれてしまいました

　つかれた4にんのトムは　なんにちも　なんにちも　ねむりつづけました

　あるばん　しんぱいしょうのトムが　めをさましました

　しんぱいしょうのトムは　あそびずきのトムと　じしんかのトムと　のんびりやのトムを　さがしにいくといいはって　いえをでました

　ところが　どれだけまっても　しんぱいしょうのトムは　かえってきません

　3にんのトムは　あそびずきのトムと　じしんかのトムと　のんびりやのトムと　しんぱいしょうのトムのことが　しんぱいで　しんぱいで　しかたなくなりました

　しんぱいで　しんぱいで　しんぱいで　3にんのトムは　いっすいもできません

　おこりっぽいトムは　ねむれないと　もっと　おこりっぽくなりました

　おこりっぽいトムは　いらいらして　いらいらして　やさしいトムと　さみしがりやのトムに　ぼうりょくをふるってしまいました

　さみしがりやのトムが　めをさますと　おこりっぽいトムのすがたは　ありませんでした

　さみしがりやのトムのとなりには　やさしいトムが　たおれていました

　やさしいトムは　つめたくなって　しんでいました

　さみしがりやのトムをかばって　しんだのでした

　ひとりになってしまった　さみしがりやのトムは　とてもさみしくなりました

　でも　それだけではありませんでした

　あそびたくて　ちからがみなぎって　つかれて　しんぱいで　いらいらして　だれかのためになることをしたかったのです

　こころがいっぱいになった　さみしがりやのトムは　なきました

　ずっと　ずっと　なきつづけました

　おしまい