第5話
ルルシアは十分に泣いた後で、両親に事情を説明する。
「なんと!?呪いにか!?」
「そんな!?」
「はい、言いたくてもずっと自分では言うことができなくて」
「小さい頃に、私が呪いを疑って教会で見てもらったときはなんの異常も無かったが……?」
「多分、非常に力の強い者がやったことじゃないかと……」
「術者が誰かに心当たりは?」
カイがルルシアに質問を続ける。
「女性だったことは覚えてます。たしか、空も飛んでいたはず」
「女性でかなり腕の立つ者……まさか!?」
そう言うと、カイは机から一通の手紙を取り出す。
「お父様、それは?」
「いや、王家から届いた、夜会の招待状だ」
「夜会?」
「あぁ、今日の朝、古の魔女を殺した王太子一行が凱旋してきたらしい。その記念のパーティだと」
「もしかして……」
ルルシアもカイも術者の正体に見当がつく。
「「古の魔女!?」」
「なんとも恐ろしいことだ。まさか古の魔女に呪いを掛けられていたとは」
リシアも若干青ざめていたが、
「でも本当に呪いが解けてよかった。それで、呪いの内容は?」
「そうだな。どんな呪いだったんだ?」
「それは……」
ルルシアは気づいてしまった。
ここで呪いの中身を暴露することは、すなわち自分の好意があけすけになるという事。
でも、両親の不安そうな顔を見ると、嘘もつけない。
「……自分の心で思っていることが、真逆になって出てくる呪いです」
それを聞いた途端、リシアがルルシアを抱きしめてきた。
「……つらかったでしょ!?ごめんね、察してあげることが出来なくて!」
「……私もだ。ルルシア、ごめんな」
「私だって、ずっとお父様とお母様にひどいことをしてきました。だから、謝るのは、私の方も」
それから、朝ご飯ということになった。
カイは執事に命じて、ルルシアの朝ご飯がルルシアの好きな物になるように調節してくれた。
「……美味しい!」
ルルシアはそれから一日休みを取ることにした。
というよりもカイが強制的に休みにさせた。
学園や、あちこちと連絡を取って、色々と調節をしたいそうだ。
「今、行ってるところが、真にルルシアが学びたいところではあるまい。なるべく、ルルシアの希望に沿えるように調整する」
「お父様、ありがとう!」
そうだ、これからはしたいことがしたいようにできるのだ!
そう思うと、ルルシアの気は軽くなった。
とその時。
「カイ様!すみません、突然王太子殿下と聖女様がルルシア様に会いたいと!」
といって執事が部屋に入ってきた。
カイは、手を当てて考える。
「今、ルルシアに会いに来るという事は、呪いの件かな。ルルシアが良ければ話を聞こう」
「私は大丈夫。殿下から話を聞ける可能性があるならぜひ会いたい」
ルルシアはすぐに承諾した。
カイは執事にすぐに案内するように言い、ルルシアと二人で応接間に来た。
「王太子殿下、遅れてしまって申し訳ございません」
ルルシアとカイは王太子殿下に会うとすぐに頭を下げる。
「いや、いい。突然訪ねたのは私たちの方だからな。それよりも……」
アコラと王太子殿下はじっとルルシアの方を見る。
「やはり、呪いによって言動が強制されていたか」
「はい。しかし、殿下やアコラ様のおかげで呪いを解くことができました!本当にありがとうございます!
そして、今までの非礼をお詫び申し上げます、王太子殿下、アコラ様、すいませんでした!」
ルルシアは再び深々と頭を下げる。
「殿下たちは娘の呪いの事を知っておられるのですね」
「あぁ。古の魔女が亡くなる寸前に、『あともう少しで、あの娘が破滅を迎えるのに、それを見れなくて残念だ』とぼやいていたのが気になってな。魔女の部屋を漁ってみたところ、君の姿が映る水晶があったというわけだ」
「これをみて、私たち二人は、もしかしてルルシアさんが呪いに掛けられていたんじゃないかと考えたんです」
「念のために他の仲間には知らせていない。あまり広げるとどこから情報が洩れるか分からないからな。このことを知っているのは私たち二人だけだ」
「それは、ご配慮、痛み入ります」
カイは一礼する。
「それで、ルルシアさんの事が気になって。伺ったというわけです」
「呪いの内容については文献があった。『自身の心の内が反対になって行動してしまう』呪いらしいが……」
「はい、娘からも同じような事を聞いています」
「という事は、ルルシアさんって、凄くいい人なんですね!」
とアコラは笑う。
「い、いや自分がいい人かって言われると……」
「いえ、いい人です!呪いが解けた後の雰囲気でわかります!」
「え、ええっ!?」
王太子殿下は、そんなアコラを見て、やれやれと言った感じで頭に手を当てている。
「……アコラは人を見る目はあるんだ。そんな彼女が言うんだから君はきっといい人なんだろうな」
「ルイ君……」
「ゴホン!」
二人が自分の世界に入ろうとしたところでカイが咳払いをする。
二人は慌ててこちらを見た。
「……それで?王太子殿下が出張るというのなら要件はそれだけではないはずでしょう?」
「……あ、あぁ。個人的に気になったことがあってね」
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