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それからというもの、私が庭園へ向かうと分かれば幾つかの精霊たちが纏わりつくように飛んできては話しかけてくれるようになった。
庭園の作業は大変だったけれど、この先に咲く花たちの事を考えるだけで嬉しくなった。そして今は、精霊たちが話し相手になってくれる。
そうそう、庭園に私を探しに来たフィオが、精霊たちに囲まれる姿に悲鳴を上げたこともあったわ。驚きではなくて、歓喜の……。良い研究対象になると質問攻めにする彼女に、何時しか精霊たちは私を盾に隠れるようになってしまったけれど、彼女はまだ諦めていないらしい。
「ねぇ、フラウ。あなた、カーティオ様の事が好き? 」
「どうしたの? フィオ、突然、そんな事を聞くなんて」
「何となく、ちょっと確かめたくなったの」
「前にも言ったけど、眺めるだけで幸せな花と、手ずから育てる花とは違うのよ。カーティオ様は、私にとっては高嶺の花。そこにいらっしゃると思うだけで幸せになるの。きっとこれは、あなたの言う『好き』とは違うわね」
そう、カーティオ様はとても素敵な方で、私と精霊たちとお話しできるようにしてくださった優しい魔法使い。
例え、フィオの言う『好き』であったとしても、それは、決して叶う事のない想い。だから、そうであっても、そうじゃないと自分に言い聞かせる。
世の中には、どんなに望んでも叶わない事はあるから。私は私の与えられた世界の中で、幸せを見つけていくの。
「フラウ、好きよ。大好き……」
きっと、このアカデミーはゆりかご。沢山の大人たちの想いに護られた子供たちが暮らす学び舎。ここを出てしまえば、私たちは決して同じには扱われない。
「フィオ……フィオリーレ、私もよ」
だから、あと少しだけでも、彼女の手の中で咲く華で居たい。
高嶺の花はかくも艶めく 沙霧紫苑 @sagiri_sion
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