第3話 9月前編 9月は寒暖差に悩まされやすい

「田楽君。君、異動ね。」

「え、?」

 いかにも偉い人の部屋というような威圧感のある部屋で、俺は上司から異動を言い渡されてしまった。就職して1年も立っていないのにそんなことあり得るのか?そしてここは陸上自衛隊だ。異動なんてあるのか?何に異動になるんだ?疑問が大量に湧いて出てくる。

「俺はどこに異動ですか?」

「本当はあまり言えないんだが…。」

「なんです?もったいぶらないで教えて下さい。」

「olfという部隊だ。」

 olfという言葉は聞き覚えがあった。異世界人から地球を守るゲーム「異世界ウォーズ」で出てきた言葉で異世界生命体の意味を持つotherworldly life formの略だ。そんなものがあるのか…?

「この部隊は機密で、新設された部隊でね。君の能力が認められたんだ。光栄に思っていいと思う。」

「どんな部隊です?」

「少し前、東京にdoorが出現したろ?」

「はい、知っています。」

「それが出現してから、そこはずっと封鎖されている。なぜがわかるか?」

「いえ。」

「その《door》から怪物olfが出てきているんだ。その《olf》に関する部隊らしい。詳しいことは私もわからない。」

「そうですか。ありがとうございます。」


後日

 ちょっとした俺へのお別れ会が行われることになった。

「短い間だったけどありがとうな!」

「異動先でも頑張れ!」

といった声が聞こえる。とても嬉しい。涙で少しだけ前が滲んで見える。このまま異動か…。とても名残惜しい。


「お〜い田楽、この書類を八瀬さんのとこ運んどいてくれ。」

「わかりました!」

 俺はolf部隊へと異動になった。異動しても手厚い歓迎などもな半ばいきなりこき使われている。冷たい対応だ。そして、書類にはなにやら奇妙な動物が描かれていて、不気味だ。

「まさかこんなとことは…。」

と独り言をつぶやいたその時、見覚えのある顔が一人通っていった。俺は思わず声を出していた。

「歌鍋!」

「田楽さん!?なぜここに?」

 歌鍋も驚いた様子を見せている。当然なことだろう。

「陸上自衛隊からここに異動になったんだ。」

「今…に異動…ラーか?」

歌鍋はなにやらぼそぼそと言っている。うまく聞き取ることはできない。ただ話し方からしてきっといいことではないだろう。

「ていうかこの部隊は何なんだ?何をするんだ?」

「もう時期わかると思います。それまでは事務仕事、頑張ってください。」

「お、おい!」

 歌鍋は早歩きでさっていってしまった。

「一体何なんだ…」

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