出来ること、出来ないこと。持っているもの、持っていないもの。
一人一人が全く違う環境で人生は始まるわけです。そんな世界でそれぞれが思考し、願いを持って生きるわけですから、当然許容できないこと、理解できないことがありますよね。
自分にないものに憧れを抱いたり、嫉妬してしまう気持ちって悪いことなのでしょうか。
ただ、自分が持っているものを褒めてあげることだけは大切なことなのだと思います。
兄弟姉妹。
どんな兄弟姉妹がいたらよかったか。また、いなかったらよかったか。
アイ(主人公)には優しい姉と厳しい妹がいます。アイはそんな二人に挟まれながら、英語の勉強とピアノ練習に取り組みます。姉は本当に優しいので、アイがサボろうが、咎めることはしません。逆に妹はアイがサボると、口うるさく指摘するのです。どちらの意見も正しいと受け止めはするが、アイには思う所があるようで……。
具体的にどれほどの年齢差があるのか。彼女たちはどんな性格なのか。これまで、どんな関係性を築いてきたのか。
細かい設定がなくとも、読んでいる内に何となくアイと姉と妹の像が浮かんできます。
この何となくさがこの物語の世界に合っているように感じました。
そんな二人の板挟みになるアイはどこか達観しているところがあり、自分事のように思っていないような心の声がとても魅力的でした。
自分のお手本ような姉、自分が面倒を見なけばならない妹。
この二人の存在が身近にいるからこそ、生まれ作られる感情が、アイのドライな心理描写によって。上手く表現されていました。
もしかすると、アイの感情に疑問を抱くかもしれません。
ですが、この疑問を持ったまま読み進めることで、よりこの作品を楽しむことができます。
アイが選んだ決断のわけとは。
是非、お楽しみください。
素晴らしい作品をありがとうございました。