第8話 桜のギフト【戦術師】

 僕たちは風呂から出るとリビングに向かった。桜も新しいジャージを着ていた。急に背が伸びたので違和感しかない。髪も伸びているし。


「桜も起きたのね」

「うん、お母さん、ジャージありがとう。服が全部合わなくなったみたい」


「取り急ぎ準備していたけど、そのサイズでいいなら、用意しておくわ」

「お願い」


 リビングに或るコの字型の四人掛けのソファに、子どもたちで座った。桜も楓ママに服のお礼を伝えて僕の横に座った。桜パパの銀次さんが桜に声をかける。


「じゃあ、桜ちゃんのステータスをみんなに見せてくれるかい?」

「いいよ。ハル兄は?」


「僕はさっき、診てもらったよ」

「なんで、最初にアタシに見せないの?」


「あっ」


それを云われて、しまったとは思いつつ、言い訳する理由もない。


「理由もないんでしょう?無理に考えなくていい」

「うん、桜のステータスを教えて」


桜はみんなが見えるようにステータスを開示した。


▼ステータス 

名前 さくら

年齢 10歳

職業 学生

状態 肉体進化中 身長暫定151㎝(+20)

レベル:1

スキル:【反撃カウンター】【瞑想めいそう

ギフト:【戦術師タクティクス

装備:加護の腕輪(不可視)

加護:主神アルテの加護


「桜も冒険者向けのスキルだね」

「ハル兄も?」


「うん、あとで教えるね」

「うん、よかったね、ハル兄」


 その後、銀次パパが桜のステータスを書き終えると、詳細画面を読み上げてくれと桜に声をかけた。


▽レベル1 ステータス

強さ:3

速さ:3

HP:9

MP:10


▽スキル詳細

反撃カウンター・アタック】スキルレベル1

説明:敵の攻撃の隙をつき攻撃を与える。

特性:攻撃力1.5倍(パーティ効果あり)

規格:5

分類:パッシブ

消費:MP:0

解放:レベル:0

条件:ギフト:戦術師タクティクス


【瞑想】スキルレベル1

説明:目を閉じて静かに深く考えること

特性:毎秒MP:5%回復

規格:5

分類:特殊

消費:MP:0

解放:レベル:1

条件:ギフト:少年の儀


「戦術師というギフトは珍しいの?」


 僕の疑問に、桜ママが応えてくれた。戦術師自体は珍しいけれど、統率者、指揮官、軍師、キャプテン、リーダーとかそういったギフトもあるわよ、と。

どちらかといえば、ソロよりもパーティ向けということが分かる。冒険者活動以外でも日常生活にもいい意味で影響を行使できるのだと云う。 


 カウンターの発動条件は、後のせんといって、相手の攻撃が発動したあと効果を発揮するようだ。パッシブスキルなので難しく考えなくていい、魔獣相手なら特に反撃狙いでなくても先に攻撃することも大事だよ、と銀次パパも桜にフォローしていた。


 瞑想スキルはその名の通り、毎秒5%ずつMPが回復する。レベルが低いうちはMPを使った攻撃手段がないので、MP系のスキルを覚えたら、ダンジョン内で魔力切れを起こさないので有利に動けるようだ。


「ハル兄のも教えてよ」

「いいよ」


僕はステータスを開示して桜に見せた。


桜が不思議そうな顔をして観ている。


「ねえ、口座ってスキル、収納系?」

「よくわかったね、そうだよ」


「買い物の時に役に立ちそうね」

「え?」


僕は荷物持ちをしている自分の姿を思い浮かべた。


「でも、5個しか入らないんだ」

「スキルレベルを上げば、もっと入るんでしょう?」


「そうだと思う」

「持ち物も共通のものにすればいいのよね、装備も食料も服も」


「確かに、同じものだったらたくさん入れられるよ」

「いろんなものを詰めたカバンとか袋で、試してみた?」


 あれ?それができるなら、食料、着替え、テント、魔石袋、装備袋とか、いけるよな。


「桜ちゃん、ナイスアイデア。ハル、試してみるか」


 僕のお父さんが、桜のアイデアを聞いて閃いたようだ。テーブルの上に、先ほどの検証アイテムや小袋が並んだ。


 ランク違いの3つの魔石を入れた黄色い袋。解体ナイフと投擲ナイフを入れた青い袋。衣類をまとめたリュック。


▽【口座】スキルレベル1

黄色い袋1

青い袋1

リュック1


入ってしまった。


「ねえ、全部、同じ種類の袋に入れたらどうなるの?」


桜ママが興味深そうに、僕にそう訊ねる。


「試してみないとわからないよ」

「そうよね、同じ袋を誰か用意できる?」


「スーパーのレジ袋でいいんじゃないか?」

「それなら同じサイズね」


全て取り出してから、スーパーのレジ袋に詰め替えた。


▽【口座】スキルレベル1

レジ袋3



「引越業者に重宝されるな」

「酒樽でもいいな」

「ミカン箱のようなキャリーボックスもいいわね」

「ポーターで稼げるんじゃないか?」


「ねえ、これ10個揃って、変換したら中身はどうなるの?」


僕がふと疑問に思ったことを口にした。


「レジ袋がグレードアップするだけじゃないの?」

「中身は、安物じゃないと試すのが怖いな」


 結局、家に10個の同じ袋が無かったので、検証はここまでとなった。今度、石ころとか土とかを入れて試すことになった。中身までワンランク、グレードが上がったりはしないと思うのだけど。


「さて、誕生日プレゼントを渡そうと思うんだが、冒険者ギルドの登録とどっちを先にする?」


 僕は、桜と顔を見合わせた。二人で相談したところ、パーティ名を決めてから冒険者ギルドには行くことにした。なので、プレゼントを先に受け取ることになった。



▽プレゼント

◇初心者冒険者セット

(皮鎧、胸当て、革ベスト、肘・膝パット、革手袋。ナイフが挿せる皮ベルト肩用、腰用、冒険者用安全長靴、防水革マント・防毒マスク、革バンダナ、革チョーカー)

◇解体ナイフセット(皮、肉、骨用)

◇魔法テント二人用×2

◇帰還石×10

◇魔石ランタン×2

◇応急処置セット×2

◇迅速の腕輪×2

◇力の指輪×2


「えっと、ありがとう。とても嬉しいんだけど、これは貰いすぎじゃないかな?」

「ハル君、冒険者はね、これだけあっても死ぬときは一瞬よ」


結愛ゆあ姉ちゃんの言葉で身が引き締まる。


「死なないようにする。みんなありがとう」


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