冒険者登録
第9話 冒険者ギルド 登録
「タクティクス・サクラ」
「なにそれ?」
「パーティ名、どう」
「ハルキバンクならいい」
「自分の名前が入るのはイマイチ」
「じゃあ、春桜ならいいわ」
「名前が入っているよ?」
「二人の名前ならいい」
冒険者ギルドまで2キロの道を、僕と桜は歩きながらパーティ名を決めた。少し離れた距離で
「アンタたち絶対絡まれるわよ」
「物語のテンプレみたいに?」
「そう」
「面倒だなあ、オンライン申請が出来ないのかな」
「登録した後のクエスト受注ならできるけど、登録は直接行って手続きして、冒険者端末を貰わないと」
「だよねー」
出発前に、
◇
冒険者ギルド
物語のような風情のある建物ではない。鉄筋コンクリートの五階建て建物だ。いろんなギルドが集まっているいわゆるギルド支店ビル。本社は100階建と聞いたことがある。まあ、王都に行くことは無いだろうから、話のネタと思っておこう。ちなみに僕の住む町は田舎なので、この五階建ての建物が一番高い建物だ。
こんな近代的なビルの中で、どうやったらテンプレなど起こるのだろうか。意味が分からない。
ビルの入り口に受付があり、受付嬢が二人座っていた。冒険者ギルドに新規登録に来たと告げる。美人受付嬢だけど、僕とは年齢差がありすぎる。シネマ女優さんみたいだ。
「新規登録は3番の窓口です」
「どうもありがとう、綺麗なお姉さん」
凄いな。まったく表情が変わらなかった。云われ慣れているのだろう。
3番の窓口へ行った。
今朝、少年の儀を一緒に受けた同世代の子たちが六人ロビーにいた。友達同士なのかな。男の子が四人、女の子が二人だ。見覚えがないので違う学校の子かもしれない。いや、違うな、市内に学校がひとつしかない。オンライン授業だから顔を知らないだけか。
左手首に或る見えない加護の腕輪を機械で読み込んで、冒険者登録は終了。その左手首の腕輪に腕時計のようにつける冒険者専用端末というのを貰った。設定済みの奴だ。いや、正確にいうならレンタル品なので、借りたと云うべきだろう。
登録料は3,500円。
冒険者専用端末のレンタル料が月に1,000円。
新人はGランクスタート。
レベル10になるとFランクにあがる。Gランクの間は、毎月末までに窓口で1,000円を払うらしい。現金で。どうやら、一年目に限りGランクの生存確認のためという。これを怠ると、冒険者専用端末の機能が停止して資格停止となると教えてもらった。
それ以外の事は、冒険者専用端末で講義を受けるとルールとか攻略情報とか、魔獣分布とかいろんなことがわかるらしい。累計100時間。
講義開始後、チュートリアルモードが始まる。クエストも受けられると云う。Gランクのクエストなので、お遣いクエスト中心だ。
そのチュートリアルが終了する頃にはレベルが10になっている。レベル10までは、学生だと平均すると半年くらいとのこと。結構かかるんだな。春休みの間にレベルを上げておきたいな。
僕と桜は、パーティ登録をするために、ロビーの椅子に座った。
冒険者専用端末を操作する。
ステータス画面と同じように目の前の空間に透明なボードが開いた。検索画面からパーティ登録を調べる。パーティ名とリーダー名を登録して、メンバー申請を受付ける。それを一般公開すると他からの参加者も募れる。という仕組みのようだ。
「桜、パーティ登録、リーダーは桜がする?」
「ハル兄がして」
「わかった。パーティ名が春桜、リーダーが僕、桜にデータを送信するよ」
「うん」
桜がパーティ加入要請を『承諾』すれば、完了だ。
「募集は一般公開しなくていいよね」
「うん、しなくていい」
『ピコン!桜さんがあなたのパーティ申請を承諾しました。パーティ春桜のメンバーが二人になりました』
いきなり、冒険者専用端末からドキッとするほど大きな音声が流れた。女性ボイスというやつか。
おっと、音声オフとかにできないのかな。僕が冒険者専用端末の設定画面を探している間に、さきほどの音声を聴きつけたのか、六人がこちらへ振り返り歩いてきた。
「桜ちゃんだっけ?今日から冒険者なの?」
「凄いね、もう初心者冒険者セットを身に着けているんだ」
「僕たちと一緒に冒険しようよ」
いきなり妹に声をかけるお前らが凄いと思うわ。
六人の先頭を歩いていた一番大柄な男の子とその隣にいる男の子たちが、桜に声をかけた。桜の知り合いでもなさそうだ。
「僕らと一緒の冒険者パーティに入ってよ、そこの二人の女の子たちも一緒だよ」
「私たちは入ると決めていません」
「そうよ、勝手に決めないで」
おやおや?
「なんだよ、さっき申請を送っただろう?早く承諾を押せよ」
「勝手に送ってこないでよ」
「迷惑よ」
おやおや?
女の子同士が顔を見合わせている。どうやらこの男女は友達ではなく、女の子二人を餌に桜を勧誘したいだけのようだ。
「桜、知っている子?」
「知らない」
僕は設定画面で、冒険者専用端末の音声の音量を20/100まで下げた。オフという機能はないようだ。なんか面白い音声とかないかな。お、復唱機能があるな。しかも声はさっきのアナウンスお姉さんの声。
左手の加護の腕輪に触れ、ステータスを確認した。
▽レベル1 ステータス
強さ:4(+15 力の指輪)
速さ:4(+20 迅速の腕輪)
HP:13(+35 初心者冒険者装備)
MP:4
桜も腕輪と指輪を付けているよな。僕は自分のステータスを桜に見せる。桜も肯いた。
「桜、帰ろうか」
「ハル兄、女の子は助けないの?お御籤で『争いごとは丸く収めよ』って書いてあったよね」
正直、面倒、これ。レベル6~7くらいのステータスになっているし。
「助けてもいいけど、男の子を追っ払うだけだよ?」
「ああ?」
「なんか生意気だな、コイツ」
「そうだそうだ」
「やっちゃう?」
男達四人が僕を向いた。それを無視して女の子二人に尋ねる。
「助けが必要?君たち二人の方が強そうにみえるけど。自分で断ればいいのに」
「だって、その桜って子を勧誘出来たら、私たちは入らなくていいって云われた」
どういうこと?
会話が通じない。この子たちも蒔き餌なの?
「お前は黙っていろよ」
「うるさいわね」
「アンタが黙れば?」
おやおや?君たち意外と気が強いね。
しかしなんだこの茶番劇は。目の前の男女六人がすったもんだしはじめた。
「桜、帰ろう」
「うん」
「待てよ」
「クレクレ星から来たのかよ、会話の通じない子どもの相手って面倒なんだよな、ぶん殴れば丸く収まるんだっけ。こういう展開は世間も食傷気味なんだけど」
「ハル兄、全部、声に出ているよ。それに先制攻撃はだめよ」
「てめえ」
「喧嘩、売っているのか?」
「生意気だ」
「ボコるぞ!」
あいやー。何時代だよ、まったく。
「お前ら、ちんちんに毛、生えた?」
僕は、得意げに尋ねてみた。
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