第7話 【運用】スキル

「では次に、【運用】スキルの検証をしてみよう」


「規格が3になっているから、希望する武器種を絞ったほうがいい」

「普段使いなら、解体ナイフとメイン武器とサブ武器か」


「遠距離と近接に分けなくていいか?」

「ハル君の希望をまず聞いてみよう」

「そうだな」


 桜がまだ起きてこないので、僕たち家族は、クランハウスの裏庭の訓練場に移動した。そこにある武器のうち、三種類を優先することになった。スキルレベルが上がれば、規格が3から増えるかもしれない、増えないかもしれない。なので、自分の使いやすい武器を試してみることになった。


 そもそも、大剣や長剣は重すぎて持てなかった。レベル1の体力だと当たり前だと笑われた。颯太そうた兄ちゃんが普段使いしている槍は重くて持ち上げられなかった。


大人たちの武器


僕の父 大樹ひろき長剣ロングソード

僕の母 美緒みお:ミスリルロッド


結愛ゆあ姉ちゃん:魔弓

拓斗たくとパパ:戦斧バトルアックス

綾香あやかママ:魔弓


拓斗さんと綾香さんは結愛ゆあ姉ちゃんのパパとママだ。


颯太そうた兄ちゃん:十文字槍

銀次パパ:短剣ショートソード、投擲ナイフ

楓ママ:細剣レイピア


銀次さんと楓さんは、颯太そうた兄ちゃんと桜のパパとママだ。


 僕が選んだ三つは、まず80㎝サイズのショートソード。解体ナイフ、そして投擲ナイフ。解体と投擲は違う型のナイフだけれど、四つ目の候補として70㎝サイズのメイスを選んだ。メンテナンスが簡単で、レベル10以下だと殴れば大体イケルと教えてもらったからだ。


 ショートソードは同じサイズの木剣と両刃型の真剣と鞘を用意してもらった。普段訓練場で素振りをする時に使っていたのは60㎝のタイプだったけど、今回身長が伸びたので80㎝が使いやすく感じた。


 解体ナイフは一般モデルの刃渡り30cmタイプ。


 投擲ナイフは刃渡り10cmタイプだ。ナイフは普段から訓練していたので、使い慣れた長さのものを再び選んだ。そして、メイスは片手持ちができるタイプだ。


 この世界の人外魔獣は大別すると二種類。ダンジョンの中に存在する魔獣は、討伐すると魔石とドロップ品を残して魔素に変わる。地上にあふれ出ている魔獣は、動物と同じで死体が残るので解体が必要。


「ショートソードを振ってみるか」


 お父さんに云われて、80㎝のショートソードを振る。上段、袈裟斬り、横一閃、突き、払いといろいろと試した。体が大きくなったこともあり、スムーズに振れる。ただ、力が非力なので、真剣を持って素振りをすると、30分ほどで腕が重くなってきた。


「体格のせいか、スキルのせいか、よくわからんな」


 みんなの声に僕も同意せざるを得ない。


 投擲練習は自主練。解体ナイフは地上種をみんなが仕留めて持ち帰る物を解体練習することになった。あとは、厨房用のイノシシや鳥を捌くと解体スキルも腕前も、普通ならそのうち上がると教えてもらった。


 とりあえず【運用】スキルの検証は、ステータスボード上何の変化もなく終わった。


 ただいつもなら、投擲だと10本中7本くらいを的に命中させていたんだけど、今日は10本連続で的に当てることが出来た。スキルのおかげなのかは今のところわからない。


「毎日、連続記録を残していけば、わかりやすいかもね」


 ちなみに、お父さんも結愛ゆあ姉ちゃんも10本中10本普通に当てることができる。投擲スキルがないにもかかわらず。これは僕も小さなころから練習していたので、今日10本連続で当てたとしても、スキルのおかげ限定とは云えないんだ。


「冒険者ギルドの登録はどうする?」

「桜ちゃんが起きてから、一緒に行くよ」


 一旦、解散になったので、僕は、結愛ゆあ姉ちゃんに髪を切ってもらった。


 チョキチョキ、チョキン。


「はい、できたわよ、私は桜の様子を見て来るから、ハル君は髪を洗ってくる?」

「うん、そうする。ありがとう」


 僕は、訓練場の武器を片付けて、風呂場に向かった。


 髪の毛を切った後は、背中がチクチクする。頭からお湯をかぶって、シャンプーでワシャワシャしていると、ガラッと浴室のドアが開いた。目をつぶっているので誰かはわからない。


「ほら、桜も髪を洗ってあげるから、ハル君の隣に座って」

「うん」


 どうやら、桜と結愛ゆあ姉ちゃんのようだ。


 僕は髪を洗い終えると、頭から湯を流した。隣をチラッとみると、桜が結愛ゆあ姉ちゃんに髪を洗って貰っている。寝起きなのか呆けっとした感じの横顔だ。なんだか、髪も背も伸びているな。僕と同じか。


 確か昨日は、肩に触れるかくらいの長さだったけど、肩甲骨くらいまで伸びている。あれ?ツルペタだったおっぱいが膨らんでいる。横から見ると腕に隠れているけど、なんか先っちょが膨らみ始めた?


「なんか、ハル兄がアタシのおっぱいを見ている気がする」

「あ、うん。見てた。なんか冒険の第一歩を踏み出したみたい」


「あはは、なにそれ。いいよ、ハル兄専用だもの、というか、声色、変わってない?」

「うん。声変わりしたみたい」


「ふーん。いいと思うよ、その声、大人みたい」

「ありがとう」


「なんかアタシの声も低くなっている?」

「そう云われてみれば、でも違和感はないよ」


「アタシは違和感だらけ、髪はボサボサ、おっぱいは膨み始めて痛いし、毛も生えてるし、衝撃。見てみる?」

「いや、今、見たから」


「どう?」

「なんか、冒険者レベル5みたいな、追い付かないといけない焦りを感じた」


 さばーん。と、頭から結愛ゆあ姉ちゃんがお湯をかけた。


「ほら、桜のギフトとスキルの話をみんな待っているから。その後、冒険者ギルドにも行くんでしょう?パーティ名は決まったの?」


「そうだった」

「パーティ名!まだだ。桜、一緒に考えよう」


「うん」

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