第41話 共闘
「【創造主の宝珠】がない? 本当にここにあったのですか?」
ダンジョンの最奥部。厳かなクリスタルの立ち並ぶ幻想的な部屋でアレキアはあたりを見回した。確かに大仰な台座がありそこに宝珠があってよさそうな雰囲気ではあるが、その台座には何も乗っていない。
「うぬ。間違いない、逆行前の時はあったはずなのに何故今回はないのじゃ?」
ジャルガが首をかしげる。
「……誰かが先にもっていったということでしょうか?」
シャルロッテが周りの探知スキルの範囲を広め……その気配を察してメンバーに盾スキルを発動した。そのスキルの発動にジャルガとアレキアも構える。
「ふぉふぉふぉふぉ。さすがは英霊。我らを察知できるとはな」
そう言ってクリスタルの陰から現れたのは、四天王の一人。老人姿の魔族。濁水のグーン。
「貴様、濁水のグーン!」
構えるアレキア。
「四天王がおでましとはまた豪勢じゃな。だが正直我々の敵ではないのじゃ」
むんっとジャルガが胸を張る。四天王はいままで別の時間枠で倒した相手だ。ジャルガが負けることはないだろう。
「確かに前の俺達のままならな」
狂炎のガルフがにやりと笑った。
「何?」
「魔王様の裏にいたのが光神ネロスだったのは驚いた……じゃが光神は我らに力をくれたのじゃ。お前たちをも凌ぐ力をな」
そう言って。濁水のグーンの背から無数の触手が現れるのだった。
★★★
俺の見守る中、クリスタルに映し出された英霊3人VS四天王3人の戦闘がはじまった。なんだか知らんがグーンたちはパワーアップしてる。
おそらく神ネロスが何かしたのだろう。
あのダンジョンは純粋な魂、英霊や魔族しかはいれない。
それを知っていて、アレキアたちを邪魔するために四天王を向かわせたらしい。
「なるほど、【創造主の宝珠】を手に入れるのを邪魔して、俺の作戦を阻止しようってか」
俺がにやりと笑うと、聖女はにっこり笑う。
「ええ、その通りよ。四天王を神のしもべにして、邪悪な皇子の部下にされてしまったあの子たちを救済に向かわせたの」
「またかよ。殺すことが救済とかこえーな」
「何度も言わせないで、これは救いよ。新たな幸福の世界に生まれ変わるための。
神ネロスはいまある不浄な魂を全て浄化して、創造主の宝珠で新たな世界を作ってくれるわ。次こそは争いのない平和な世界を」
「お前神ネロスの事わかってねーな。理想の世界なんてすぐすぐ飽きるぞ。そして飽きたら壊してまたすぐ別の世界を作って生物を争わせて、楽しむに決まってる」
俺が呆れたように言うと、聖女は初めて怒りの表情を見せる。
「貴方は何を言うのですっ!!!神ネロスはそんな事をするようなお方ではありまっ……」
聖女が言葉を言った途端。
ざんっ!!!!!
物凄い光が、聖女の後ろを横切り、その光は少し向こうで暴れていた【聖光のゴーレム】と、ついでに皇帝を一瞬で破壊した。
「なっ!???」
あまりの事に驚愕する聖女。
犯人は俺じゃない、もう一人。別の客だ。
おそらく対神具用の破滅魔法で一撃粉砕したのだろう。
俺が光の方向をみるとそこにいたのはぷかぷかと空に浮いたエルフの大賢者。
奴もやっと意識を取り戻したらしい。
「……いまの話……本当ですか」
エルフの大賢者が杖を持つ手を震わせて言う。その顔は真っ青で、どうやらかなり前から俺たちの話を盗み聞きしていたらしい。
まぁこちらの時間軸のエルフの大賢者は黒幕が神だということは初耳なのだからショックだろうなと、俺は薄目でみた。キルディスはカルナを抱えてものすごい後方まで逃げていた。正直あの二人がいると本気をだせないのでキルディスの大賢者嫌いはありがたくもある。
「……まさか一撃でゴーレムを倒すのは予想外でしたが、役者がそろいましたわね」
聖女がにっこり笑う。
「まるでエルフの大賢者が来るのがわかっていたみたいだな」
俺が聖女に言うと、
「ふふっ。私は神の意志を聞けるのですから、貴方達の行動など手に取るようにわかりますわ。神は常に貴方達を視ていたのだから」
「視ていた?」
大賢者が目を細めて聖女に聞く。
「神は全てを見渡せるもの。異世界人の貴方の行動も常に視ていました」
そう言って俺を見る。
「貴方が【救済の天使】を内側から破壊するために、【救済の天使】様にいくはずの殺した人間の魂をすりかえて、迷宮の魂を送りこんでいたことも。全部視ていたのです」
「へぇ、ならネロスは何故わかっていて俺の行動を容認していた?」
「簡単な事ですわ。神がそれを必要としていたからです。貴方のやっていたことは全て神の手のひらの中だったのですよ。世界を一度浄化して新たな楽園をつくるための」
聖女がにたーっと笑った。
ざしゅっ!!!!
そして聖女はエルフの大賢者が放った魔法の矢に貫かれる。
「がはぁぁぁっ!!」
聖女が矢に貫かれて変な声をあげて倒れ込む聖女。
「ちょ、お前喋っている間にやるか!?」
俺がエルフの大賢者に突っ込むと、エルフの大賢者はさらに詠唱を重ねている。
そう、奴も気づいている。あんな魔法くらいでこの女が倒せるわけがないということ。
『救済を!! 全てに救済を!!!』
奇声をあげながら、肉の塊になりめきめきと姿をかえていく聖女。
よくある第二段階にパワーアップするやつだろう。
エルフの大賢者が容赦ない魔法連打をくらわすが、再生能力が半端なく、魔法で攻撃したところがもこもこと余計勢いをつけて増殖しだす。そして次は鋼鉄の皮膚になり、エルフの大賢者の魔法を全て、跳ね返しはじめた。エルフの大賢者の超チート魔法が効いていない。ひょっとしたらあの皮膚は魔法反射系かもしれない。
一通りやることの終わった、エルフの大賢者が聖女から距離を取り、
「聞きましょう!貴方は今回どちら側です!?」
と、俺に問う。
「そうだな。今回は共闘といこうじゃないか。エルフの大賢者様。」
そう言って俺は構えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。