第4話森林戦

「そうか美龍を発見したか!?」

「はい!敵の大型戦艦を捕捉しました!位置はポイント3O-1です!」

戦艦を発見した兵士が隊長のジャクソン中尉に無線を使って報告する。

「了解した。我々本隊が到着するまで敵戦艦のレーダーに入らないように注意し、尾行しろ!」

「ハッ!了解しました!」

ジェダを起動して距離を空けながら追跡を始める。


「奴等の追跡部隊来ますかね?」

「来るな。この森林地帯は敵機を視認しにくい、仕掛けるならここだろう。」

艦長はリンゴを齧りながらそうつげる。

「我々の戦力はこの戦艦と戦車三機とユダです。やれますかね?」

金髪のクルーがそう聞くと、艦長がやれやれといった感じで答える。

「ウラン少尉。心配なのは分かるがやるしかないのだ。このユダを本国に輸送し、分析できれば戦況は大きく変わるのだ。それは分かるな?」

「はい。ユダの性能はピカ一です。これを分析し、量産できれば我が軍の国力で負けることはありません。」

共和国の国力は合併した国という事もあり大きく上回っている。だがRWの投入によりその国力差はひっくりかえされた。

それだけRWは優秀な兵器なのだ。

「敵機の反応をキャッチ!ジェダタイプだと思われます!」

「もう来たか!?レイ伍長敵の数は?」

艦長はリンゴを置き、焦ってそう訪ねる。

「二機です!」

「偵察隊ですな。戦車隊を出しますか?」

「嫌、恐らく奴等は我々を捕捉しているだろう。たださえ大きいからな。そんな時に戦車など出しても的にしかならん。」

「ですが!本隊に来られたら我々の敗北は確実です!」

あわててウラン伍長はそうつげる。

「分かっている。ユダを出すしかないか。」

艦長は苦渋の決断をする。

敵の狙いのユダをみすみす敵の前に出すというのはネズミを猫の前に放り出すのと同じことだ。

「窮鼠猫を噛むか、それとも猫に捕まるか。どっちにしろか、ユダを発進させろ!本艦はユダを援護し、敵を撃破!」

「「「は!」」」

ウラン少尉は急ぎ戦艦のドックへ向かう。


「何!?起動出来ないだと!?」 

「はい。どうやらセキュリティシステムがあるようで我々では起動できません。」

(またあの少年に頼るしかないのか)

ウラン少尉は少年を戦場に立たせねばならない事実に憤る。

「仕方ない!エイジ君を起こせ!」

「彼は子供ですよ!?戦わせるんですか?」

技術兵は怒りそうつげる。 

「そんな事は分かっている。だが撃沈されるわけにはいかない!」

「...分かりました。」

「すまんな。」

少尉は本当に申し訳なさそうに謝罪する。

「少尉だって子供がいる身です。辛いでしょうに..」

少尉は本国の子供を思い出す。

本当にかわいい金髪の女の子。

そんな娘とたいして変わらぬ年の少年を戦場にたたせる自分の情けなさに憤る。

 

「申し訳無いのだけれど。発進準備OK?」

「はい!OKです!」

エイジは操縦レバーを持ちながらつげる。

「本当は私達がやらなければならないのだけれど...」

「いいえ!大丈夫です!ユダ発進します!」

ユダが急ぎ発進する。

「優しい子ね。そんな彼を戦場に送り出すなんて...大人ってほんと...」

レイは落ち込む。

「レイ通信兵索敵速く!彼をサポートしろ!」

レイは顔を叩き気合いをいれる。

彼を生かすために。

そして生き残るために。


「敵は三時の方向よ。機体数は二機、隠れているから不意打ちに注意して。」

「了解です!レイさん!」

ユダは三時の方向に向かいながら周囲を警戒する。

「敵RW接近!仕掛けますか!?」

慌てて新兵のようなパイロットが上官に聞く。

「待て!まだ仕掛けるな。気づかれていないのなら本隊の到着を待つ。」

「そんな事言ったって見つかって攻撃されたら...奴はジェダを一発で落とせる武装があると聞きます!仕掛けるなら今です!」

「待て!ラガン!」

ラガンは命令を無視し近づく。


ガサッと茂みが動く。

「そこか!」

ユダはビームライフルを発射する。

出てきたのはウサギだった。

「甘いわ!」

ジェダが後ろからタックルをしかける。

ユダはよろめく。

「後ろか!」

「機体は良くてもパイロットはいまいちのようだな!」

『大丈夫ですかマスター?』

「あぁ、大丈夫だよ。」

ユダは反転しライフルを再度構える。

「そ、そのライフルが一発でジェダを沈めるという武器か!だが当たらなければ問題はない!」

ジェダは移動しながらビームピストルを連射する。

「クッ!速い!」

『マスター落ち着いてください!冷静に』

ユダのビームは避けられる。

「な、何て装甲だ、ジェダならとっくに煙を吐いているはずなのに!ならこいつはどうだ!」

ジェダはソードを構える。

『まずあいつの足を止めないと。』

「分かってるよ!でもどうやって」

エイジは二度目の戦闘という事もあり焦る。

「喰らえ!!」

ジェダはソードで斬りかかってくる。

『効きません!』

ユダはシールドで防御する。

だがシールドは押されている。

「何で!?前回はこっちが優勢だったのに!?」

『どうやらエネルギーをソードに集中しているようです!』

「クッ!殺られる!」

ユダの機体にソードが当たりそうになって終わりが見えたその時。

「機体のエネルギーを集中しているということは機動力は遅くなっているはず!なら戦車でも十分だ!」

戦車から砲撃が発射される。

その砲撃はバックパックに命中する。

「戦車だと!?舐めるな!」

「ウラン少尉!下がってください!戦車では!!」

「子供ばかりにまかせられるか!」

戦車は移動しながら砲撃する。

だが、ジェダに避けられる。

「鬱陶しい!」

ジェダはピストルを発射する。

そのピストルは戦車に直撃する。

「クッ!やばいか!?」

『マスター!!』

「あぁ、分かってるよ!少尉下がってください!」

ユダはジェダにライフルを発射する。

「す、すまない。足手まといになるとは!」

戦車は後退する。

『ですが戦車の攻撃のお陰で機動力が下がっています。これなら!』

「あぁ!集中集中!」

ユダはゆっくりライフルを構える。

「くっ、このバックパックでは後退は出来んか!なら一撃喰らわしてやる!」

ジェダはソードを構える。

「そこ!」

ユダはライフルを発射する。

「か、かすっただけで!や、やはりそのライフルだったか..」

ジェダは煙を吹いて倒れる。

「ラガン!!この仇は必ず撃つぞ!!」

上官は拳を握りしめ後退していく。

「敵機のシグナルロスト!退いてエイジ君!」

「了解しました!」

ユダは後退していく。

『何とかなりましたねマスター』

「あぁ、でも少尉がいなければ殺られていた。」

エイジは自分の弱さを認識しながら後退していく。


「また救われたな。ありがとうエイジ君。」

艦長は頭を下げる。

「嫌、そんなことは!今回は少尉に救われましたし。」

エイジは照れながらそういう。

「嫌、俺はあまり活躍出来んかったさ。次はもっと活躍して見せるよ!」

「少尉!あんな危険な行動は止めてください!」

「君が守ってくれるんだろ?」

少尉は笑いながら去っていく。

「少尉!まったく。」

「まぁまぁ、今日は疲れただろう休みたまえ。」

「はい。失礼します!」

エイジは後退していく。


「何!?一機落とされただと!?本当か?」

「はい!やつにラガンを...」

「そうか、やはりただ者では無いようだなあのパイロット..作戦を立て直す後退しろ!」

「ですがラガンの仇をみすみす!」

上官は隊長に立場を忘れてそうつげる。

「お前まで失うわけにはいかんのだラルフ!」

「わ、わかりました...ユダ.. いつかこの報いを受けさせてやる...」



戦争は憎しみの連鎖しか生まないのか。












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