第3話 戦艦美龍


『大丈夫ですかマスター?』

「うん。大丈夫だよ。」 

エイジは初めての戦闘そして人を殺した重圧につぶされかけていた。

それを感じ取ったユダが話しかける。

『この後はどうしますかマスター?』

「とりあえず合流地点に移動する。そして彼女の仲間に謝るんだ。俺のせいでお姉さんは...」

エイジは悲しい顔をしてそうつげる。

自分のせいで人が死んだ。

その経験は少年の心を傷つける。

『わかりましたマスター。ですがあまり気を落とさないでくださいマスターのせいではありません。』

「ありがとうユダ。」

嘘だ。僕がユダを起動しなければ彼女は死ぬことは無かったし、こうも街を破壊されることは無かった。

「とりあえず合流地点を目指そう。」

僕は合流地点にユダに乗り静かに移動する。


「何!?あのジーク兄弟がやられたと!?」

司令はありえないと驚く。

「は!ジーク兄弟のRWの反応が消えましたので恐らく撃破されたものかと考えられます!」

「奴等は歴戦のパイロットだぞ!?」

「そこまでユダの性能が凄まじいのか。それともパイロットが一流なのか。どちらにしても追撃は続けなればならん。あのジーク兄弟がやられたのならば一個小隊を出さねばならんか。」

「そこまで追跡するものなのでしょうか?」

「どういうことだ?ユーラ大佐。」

「いえ、ユダのデータはもう十分取れました。

中立地帯で無理に荒波を立てて追うほどの事はないと思いますが。」

「ユダは破壊せねばならん!もしもあれがばれれば...」

「あれとは?」

「ユーラ少佐は知らなくて良い!とにかくユダはジェック共和国に入る前に破壊せねばならん!分かったか大佐!?」

「了解しました!」

(カランは何をあんなに恐れているのだ。たかが実験RWではないか。)

ユーラ大佐は歩きながらそう考える。

それだけ重要な秘密を隠しているのかと。

(それは利用できるか?)


「まぁ、とにかくユダを追跡する部隊を編成せねばな。まったくこんなときに」

 

「自分を隊長にですか!?ユーラ大佐!」

俺は驚く。

そりゃそうだ。

パイロットからいきなり隊長だ。

「うむ、貴官にはユダ追跡部隊 ハウンド隊の指揮をとって欲しいのだ。」

と珈琲を飲みながらユーラ大佐は告げる。

「自分が隊長でよろしいのでしょうか!?

まだ中尉ですし、指揮の経験もありません。」

「自分をそう過小評価するな!貴官の腕は噂で聞いている。」

「いえ、自分はそんな噂されるほどのパイロットではありません。」

「謙虚なのはいいがそれでは昇進出来んぞ中尉。」

「いえ、自分は一パイロットがお似合いですから。」

と謙遜する。

「隊長任務は明日からだ。任務の成功を祈っているよ。」

と少佐は部屋を後にする。

「待ってください大佐!...まったく強引な人だ。」


「本当によかったのですか?確かにジャクソン中尉は優秀ですがまだ速いのでは?」

と秘書官は心配そうに告げる。

「あぁ、本来ならもう少し場数を積ませたい所だが今は北方戦線もある。歴戦のパイロットは大半が北方戦線に配備している。余計な人員は回せんよ。それに相手は子供のパイロットと聞く。それなりの機体も回すし、行けるだろう。」

「そうですね大佐。」



「ここが合流地点か」

俺達は合流地点である小川の近くに来ていた。

「誰だ!?ジェシカか!?」

と金髪の男は叫び銃を向ける。

「お、お姉さんにここにいけって言われて!」

「お姉さん?ジェシカか!?ジェシカはどこに!?」

「そうかあのお姉さんジェシカって言うんだ...ジェシカさんは僕を庇うために...」

俺はそこで初めて恩人の名前を知る。

彼女の口から直接聞きたかったと唇を噛み締める。

「そうか...ジェシカは先に逝っちまったか。

とりあえず艦長の所に案内する。着いてきてくれ。」

「分かりました。」

エイジは恐る恐る金髪の男についていく。


「そうか...そんなことが...街中なのを気にせず仕掛けてくるとはやはり帝国は新型機がそれほど大事なのか?」

と艦長は考えふける。

「艦長そんなことより!速く船を出さないと!」

と黒髪の少女はやれやれといった感じで告げる。

「そうだな、総員発進準備!メカニックはRWの点検急げ!」

「「「了解!」」」

と船はあわただしく発進する。

「エイジ君は色々あったろ、休みたまえ。案内はエルラにさせる。」

「えぇー子供のお守りですかぁ?私子供苦手なんですよ艦長!」

とエルラは嫌そうに告げる。

「しょうがないでしょ?あなたはこの船では一番したの階級なんだから。」

と眼鏡の女性は告げる。

「はいはい分かりましたよ。全くこの眼鏡ブス」

「何ですって!?」

「ほら!速くいくよ少年!」

と言って逃げていくエルラ


「ここが食堂で...であっちがあんたの部屋。

こんなもんで大丈夫でしょ。何か質問ある?」

「あの、この船何なんですか?そして貴方達は誰なんですか?」

「えぇ、ジェシカ何の説明もしなかったの?

全く、私たちは新型機の調査をするために送り込まれた部隊105小隊通称マウス隊。」

「マウス隊?」

ネズミを想像するエイジ。

「そう、実験ネズミ。本当は新型兵器を開発してテストする部隊だったんだけど、新型機の性能を調べたいってんで送り込まれたの。畑違いもいいとこ何だけどね。」

とやれやれと告げる。

「調査部隊なのにこんな戦艦なんですか?」

エイジは疑問を告げる。

「奪取も計画に含まれてたからね。ある程度の戦闘は予想されてたのよ。予想以上の戦力が配備されたけど。」

「予想以上?どういうことですか?」

「本当なら新型兵器開発にこんなに警備部隊を配備するはずないのよ。そんなに大事なもんだったのかしらねぇ?まぁ、とりあえず私にも仕事があるから質問はこんなもんで、あんたも今日は疲れたでしょ?さっさと休みなさい。」

(このエルラって人子供嫌いっていってたけど案外優しいんだな。)

エイジは部屋に入る。

部屋は普通のシングルサイズの部屋だった。

「今日は疲れたぁ。ジェシカさんすみません」

エイジは眠りにつく。


「見つけた戦艦だ!!隊長に報告だ!速くしろ!」



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