2つ

陽気な電子音が、もうすぐ19時だと知らせた。報告書を書いている途中で、寝てしまったらしい。

ライブを見ると、眼鏡をしていても、画面越しにジョージの元気な姿を確認することができた。

彼は、なかなか魅力的な男だった。


珍しい事例だったので、ジョージに関しては、確認した事実と予測されることを、詳細に記した。



――なお、

『なぜ、地球の人間が、死を暗示する言葉を無思慮に多用するのか』

という我々の疑問については、まだまだ討究の必要があります。


私の潜入先・日本での使用理由は、

“みんな使っているから”であったり、

我々とは違い、

“本当に死なないから”

だと考えられます。


ていうか、無思慮っていう時点で、答え出てるじゃん。何も考えていないから、使うんだよ。


1番最後の部分を、丁寧な言葉で書こうとしたけど、どうしたって角が立ちそうなのでやめた。



引き続き、調査、報告を続けます。



と文を結び、用紙を三つ折りにして封筒に入れ、部屋のど真ん中にあるポストに投函した。数秒して、ポストの頭頂にある緑のランプが点灯するのを確認した。点灯は無事あちらに届いたサインだ。


よし、これで今日の仕事は終わり。


報告は本来、端末間のやり取りで済むのだけれど、

北海道に視察に来た時、札幌駅前に佇む、全国にひとつだけとされるポストがなんだか気に入り、同じものを作ってもらって、手紙形式の報告を希望した。


母も直筆の方がなんだか嬉しいわと喜んだ。


あのポストは人知れず、全国で2つになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る