自宅
鍵をかざしてオートロックの扉を開け、エントランスを通り、エレベーターに乗り込んで、最上階のボタンを押した。
玄関に入ると、靴を履いたままその場に一度へたり込んだ。今日は本当に疲れた。
のろのろと歩いて洗面所の電気をつけ、手を洗った。土が入り込んだ爪の間を念入りに洗ったけれど、しつこく黒く残り続けた。
1人で暮らすには、あまりにも広いリビングの電気をつけて、制服から部屋着に着替えると、やっと体が少し軽くなった気がした。
ソファーに座り、スマホを開く。
『ジョージ 女子 人気』
『ジョージ 戦争』
などと調べると、すぐにジョージが何者かわかった。
天宮ジョージ 。5人組男性アイドルの1人で、女子高生を中心に絶大な人気があり、アクスタというものなど様々なグッズがすぐに売り切れてしまうらしく、その争奪戦を戦争というのだそうだ。
エンスタを開き、ジョージをフォローした。
今日19時から、ジョージはエンスタライブをやるらしい。
スイッターを開き、ジョージ アクスタで検索すると、ジョージがこぞって血まみれになっていた。
だけど、画像を遡ると無事なジョージもたくさんいた。
重体のジョージはつい最近のものだけで、半年、1年と前のものは、ジョージの笑顔を確認できた。
昼間のノートを取り出し、清水の発言を振り返ってみる。
“このジョージ、死ぬほどイケメンすぎて…”
このジョージと限定したから?
清水のジョージと同じ種類のものだけが、死ぬほどの傷を受けたのかもしれない。
あとは、本人への影響が気になるところだ。
ライブの5分前にアラームを設定し、今日の報告に取り掛かる。
テレビの横の引き出しから、報告用紙とペンを取り出し、書き連ねていった。
1月12日(木)
出席番号1番 石田大祐
持久走後、両上下肢死亡消滅。
出席番号30番 牧田理一
友人佐々木に殺され、死亡消滅。
佐々木は3ヶ月ほど前にすでに死亡消滅していますが、他者への言葉の効力は有効のようです。
男性アイドルグループ 天宮ジョージ
イケメンのため一部アクスタが重体。
――あ。そう言えば、公園の小学生は消えた姿を見ていない。あれもゲーム内に留まるのか、本人まで影響するのか確認しなきゃいけなかったな。
…まぁいいや、公園のことは無かったことにしよう…。
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