雨と傘

吾名無き

unknown:atoz

つらいことがあると、心に雨が降り始める。

雨が降り始めたことに気づくと、さらに雨が強くなる。

「やまない雨はないよ」

誰かのささやき声。

そんなことはわかってる。

雨を乗り越えてきた人たちは、みんなそう言う。

でも、そうじゃないの。

今降ってるこの雨に耐えられないの。

私は応援の言葉じゃなくて、傘がほしかった。

上手な人は、傘を持ってる人に頼み込んで雨がやむのを待ってる。

私はあろうことか、傘をくれる人の手を振りほどいて。

一緒になって雨に濡れてくれる人を探してた。

私みたいな物好きを、受け入れてくれる人を。

途中で、力尽きた仲間もいた。

私の心の雨は、それを見るたびに強くなっていく。

「最期まで一緒にいようね」

私はそれに添い遂げることができなかった。

仲間を集めて、死なば諸共。

私のすべきことは、傘を持ってる人を見つけることなのに。

「じゃあ、逝こっか」

私の仲間は、どこまでも一緒・・・。

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雨と傘 吾名無き @Warenanaki

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