宇宙三国志 G(ギャラクチカ) シナリオ編

高原伸安

第1話

宇宙三国志 G(ギャラクチカ) シナリオ編


                            高原伸安


主な登場人物

リュウ……主人公。少年。光の子。人間。

シャン……連合国総司令官。人間。

コウメイ……リュウの忠臣。連合国軍師。人間。

ファー……リュウの忠臣。セミ型エイリアン。

ガイ……同。オラウータン型エイリアン。

子龍(しりゅう)……リュウの親友。少年のアンドロイド。

ナオミ……リュウのガールフレンド。人間。

武蔵……リュウの親友。後の臣下。

明……リュウの親友。後の臣下。

ヒヒ総統……ギーガ帝国総統。金属人間。

エメリッヒ……ギーガ帝国総合司令官。ヒヒの腹心。金属人間。

ラミ女王……ラーラ王国女王。植物人間。

ローズ……ラーラ王国総司令官。バラ。植物人間。

ミミ……ラーラ王国副総司令官。ユリ。植物人間。

ショウ……銀河帝国皇帝。リュウの双子の兄。

ロロ……シャナ教教皇。

イザヤ……シャナ教十字軍の若き総司令官。

サスケ……コウメイの同門。在野。

ユタ……暗殺者。変幻自在の金属人間。

レイ……コウメイの親友。バル星の皇子。

ケイ……レイの弟。バル星王位継承者。

トト……連合国将軍。魚型エイリアン。

ホウトウ……連合国提督。ペンギン型エイリアン。

メイダ……連合国司令官。隊長。オーガ艦長。人間。

アルファ……連合国操縦士。機械人間。

ハイジ……連合国作戦立案官。緑色の植物人間。

グー……ギーガ帝国親衛隊長。金属人間。

ガラン……ギーガ帝国伝達官。金属人間。

バーン……ギーガ帝国司令官補佐。金属人間。

ブルー……ギーガ帝国将軍。ブルドッグ型エイリアン。

ドル ……ギーガ帝国将軍。トカゲ型エイリアン。

カーン……ラーラ王国長老。男。キノコ型植物人間。

マロン……ラーラ王国作戦司令官。美しい金属人間。

オウ……シャナ教枢機卿。

フー……シャナ教大司教。

オーサン……シャナ教大司教。

レイラ……銀河帝国皇后。

サイボー、カイン……ケイの母の腹心、参謀。

外……三国志と同じぐらいの登場人物がいる。それぞれの物語に出てくる。


ギーガ帝国の軍服はナチス・ドイツ風の格好いい物、宇宙船も三角形を基本としたもの。ラーラ王国の衣裳・軍服はフランス王朝、織田信長や伊達政宗軍といった華美で優雅な物、宇宙船も円形が基本。連合国は寄せ集めのアメリカの海軍・陸軍風のもので、戦闘機などもF15、16モデル、ステルス戦闘機といったような物。また法王庁(中世の十字軍、戦国時代の本願寺)の衣裳はローマ法王庁のような赤や白の法衣のような宗教的なもので、軍服は十字軍のようなデザインの物。宇宙船はコウモリとか神秘的な形のもの。もちろん部隊によって、その帽子、ヘルメット、兜、軍服、防護服、鎧など違う。etc。いろいろユニークで雅なものにする。


「バル星の戦い」の章。


第1話、帝国


○地幕。スター・ウオーズのノリ。

N(ナレーション)「我が、銀河帝国は、今や混沌の頂点にあった。ちまたには、宇宙海賊メギドが出没し、宮廷は皇帝の側近の思いのままで腐敗と堕落が蔓延していた。

そんな中、この銀河帝国は、皇帝を頂くヒヒ総統率いるギーガ帝国と、ラミ王女を中心とするラーラ王国、その他平和を願う連合国に分れて、この銀河の覇権を争うようになった。そして、ロロ教皇を頂点とするシャナ教の教団も一大勢力となっていた。

これは、その皇帝の弟、連合軍のリュウの目を通してみた光の戦いの物語である」


○銀河。

 宇宙空母インディペンデント内。スクリーンに、ギーガ帝国軍と連合軍の戦いの様子が映し出されている。連合軍が、遙かに劣勢で、宇宙戦艦や戦闘機が次々に撃ち落とされている。老総司令官のシャン、リュウ少年、他の乗組員(クルー)達が痛ましそうに、それを見ている。

シャン総司令官「全軍、撤退せよ」

リュウ「でも、まだ勝敗はわかりません」

シャン「このままでは全滅だ。逃げるも勝ちということもある。お前も、まだまだ学ぶことは一杯ある」


○ギーガ帝国、空母内。ヒヒ総統が指揮を取っている。大柄な白金色の金属人間で、ナチス・ドイツのような軍服でマントを羽織っている。

ヒヒ総統「連合軍のすべてを、この宇宙から抹殺するのだ」

エメリッヒ総合司令官「仰せのとおりに!」

 空母から、分子破壊ビームがでて、連合軍の空母フリーダムに当たり、炎上する。

グー親衛隊長、バーン司令官補佐「やったぞ!」

 この司令室にいる幹部連中は、すべて金属人間や機械人間である。


○少し離れたラーラ王国、空母内。巨大な駒形の円盤(UFO)である。スクリーンの前に四人の侍女を従えたラミ女王が王座に座っている。煌びやかな髪飾りと衣裳を身につけている。美しい植物人間で、首のところがポルトガルの宣教師の服の襟のような萼が付いている。

その横に、ローズ総司令官とミミ副総司令官が立っている。ローズは赤いバラ、ミミは白ユリのような美人の植物人間である。

その傍に、カーン長老とマロン作戦司令官が控えている。カーン長老は女王の相談役で唯一男のキノコ型人間で、背が高い真っ赤な帽子を被り、杖をついている。マロン作戦司令官はブリリアントな金属人間である。

ラミ女王「この戦い、ギーガの勝ちでしょうね」

カーン長老「そうでしょうナ。今は、傍観しているのが一番ですじゃ」

マロン「この作戦自体が失敗だったのです」


○奇妙な形をした神秘的な戦艦の中。法王庁の教皇や司教達がこの戦いを静観している。シャナ教のシンボル・マークが入ったゆったりした法衣を纏ったロロ教皇の周りに、オウ枢機卿、フー大司教、オーサン大司教などが、この戦闘を見守っている。

スクリーンの中では、連合軍の空母インディペンデント、エンタープライズが攻撃を受け、被害が拡大している。


○同じ時。遠く離れたバル星。首都バルガの宮殿の広場。国王のクオーツが、集まった民衆の前で演説をしている。

クオーツ「私は、まだ帝国側につくかどうか、決めかねている。すべては国民の意志次第だ。その決定は、今回の国民投票に委ねるつもりだ(国民に手を上げて答える)」


○バル星、首都広場の斜め前、連邦ビルの屋上。

金属人間の暗殺者のユタが身代わりの犯人を抱えて現われる。一瞬にして、ユタはそのバル星人に変身し、連合軍の狙撃銃を構え、国王に照準を定める。

国王の演説は、最高潮に達している。スコープの向こうで、国王が後ろに吹き飛ばされ、胸から血を流す。

護衛はビルの屋上に、狙撃兵を発見し、発砲してくる。ユタは銃を捨て、陰の犠牲者にレイ銃(ガン)を握らせ自殺させる。次に、また警備員に変身し、屋上から消える。


○銀河。帝国と連合軍の戦場。

ギーガ帝国の総攻撃の前に、連合軍はなすすべもなく、空母インディペンデント、エンタープライズ等、主だった艦が次々にワープ航法により、宇宙の果てに消えていく。連合軍が退却したのである。バル星を目指して……。

ギーガ軍は、残った艦隊を掃討していく。この戦いは連合軍の完敗だった。


○バル星。宮殿内。バル星評議会。

 急遽招集された評議員が恐々諤々議論している。次期、国王を決する会議である。

長男で、人気もあり、人格者のレイ、現后の実子で次男のケイの姿も見える。良識のある穏健派の長老のザボや議長のルーガはレイを応援しているが、后の腹心で実力者のサイボー、その参謀のカインなどはケイを支援している。


○同、国民評議会会場。レイのブース。レイは見るからに精悍な青年である。

ザボ「(レイの方へ囁くように)父君の暗殺で国民は知性を重んじるより、盲目のごとく感情的になっています。あの帝国支持派が圧勝した国民投票の結果を見ても明らかでしょう」

レイ「(暗い表情で)それは、ここでもケイが勝つってことか?」


○同会場。ケイ、后のブース。

后は美しく大きな武器になっている。ケイは、取り立てて何もない平凡な若者で、置物のように座っている。

カイン「(ケイと后の御機嫌を取るべく)サイボー様に任せておけば、ケイ様が必ずこの星の国王に祭り上げられるはずです」

后「それは本当か?」


○同会場。壇上。

サイボー「国民評議会の諸君、我が国父クオーツを暗殺したのは、連合軍を支持する輩であった。だから、我々は親連合の立場に立つレイ様を国王に押すことは道理が通らない。よって、我々は帝国を支持するケイ王子を国王と頂くべきであろう。それが国民の意志でもある」

 大きな拍手と喝采の声で、会場が包まれる。


○同会場。電光掲示板。

 ケイ支持二九三対レイ支持一五九。棄権四八票。

レイはガックリ肩を落し、ケイは母の后と抱き合い、后は笑顔でサイボー、カインと握手する。


第2話、逃亡


○バル星。宮殿のレイの控室。

 レイ、ホログラムのコウメイと話している。レイの参謀の若いライラも、横に控えている。コウメイは、連合軍の青年軍師で、レイの友人である。

コウメイ「レイ、いますぐその星を脱出しろ。さもなければ、父君と同じような目に会うことになる」

レイ「(驚いた顔で)ケイにか?」

コウメイ「ケイ王子は何も知らないだろう。問題はサイボーとカインだ」


○バル星。宮殿のレイの控えの間。

 カインのホログラムと数体の戦闘アンドロイドが踏み込む。

カイン「レイ様、国家反逆罪であなたを逮捕します」

 部屋はすでに空っぽで、だれもいない。

カイン「(地団駄を踏んで)ヤッ、逃げられたか?」


○バル星。バルガ軍事空港。レイの戦艦内。

レイ「それじゃ、そろそろ出発しよう」

ライラ「さらば、我が故郷。しばらくの別離です」

 レイの旅団の艦隊が次々にバル星を飛び立って行く。


○バル星の星系。空母インディペンデント、エンタープライズ、戦艦オーガ等連合軍の艦隊が現われる。

 インディペンデント、ブリッジ内。

シャン総司令官「バル星へ交信せよ」

アルファ「バル星からの返信です」

 アルファはこの艦のナビゲーターで、正確無比な機械人間だ。

 スクリーンにサイボーが現われる。

シャン「私は連合軍のシャン総司令官です。我々は、燃料や物品の補給をしたいだけです。それが済んだら、速やかに出ていきます。我々はケイ国王に寄港の許可をお願いします」

サイボー「よくわかっているよ、シャン総司令官。しかし、答はノーだ。我々はギーガ帝国と手を結んだ。だから、貴公らの条件を飲むことは、同盟に反することになる。すぐにこの星系から出ていきたまえ。さもなければ、総攻撃に移る」

 破壊光線がバル星から発射され、インディペンデントを掠める。

サイボー「安心したまえ。ただの脅しだ。しかし、今度は容赦しない。直ちに行動しないと、君たちは後悔することになる」

 交信が、一方的に切れる。


○バル星の星系。バル星から再び破壊光線が発射され、戦艦の一つが炎に包まれる。バル星からも次々と戦艦が発進してくる。

シャン「(追い立てられるように)仕方がない。出発だ」

ホウトウ提督「しかし、もう燃料もほとんどありません」

地味な仕事人のペンギン型の鳥人間である。

シャン「戦う力も残っていないだろう」

 全艦、補給基地がある惑星パオパオへ向かう。


○バル星系の辺境。インディペンデント、エンタープライズ、オーガを中心にした連合軍が、バル星の艦隊に追われ攻撃を受けている。


○インディペンデントのブリッジ内。

リュウの忠臣のファー、ガイ、友達の子龍、幼馴染みのナオミ達もいる。

ファーはセミ型昆虫人間で、ガイはオラウータン型異星人である。どちらも、二.五メートル超の大型の漢だ。子龍はリュウと同じ程の子供のアンドロイドである。

メイダ隊長「どうしましょう。もう我軍には戦うだけの余力はありません」

ファー「戦うしかありますまい」

ガイ「それしか方法はなさそうだ」

ナオミ「逃げきれないわ」

アルファ「前方の何者かからの交信です」

シャン総司令官「応答しろ」

 スクリーンに大艦隊が現れる。

コウメイ「あれはレイの部隊だ」

 スクリーンは、レイの姿に切り替わる。

レイ「皆さんを助けに参りました」

子龍「助かった!」

 ブリッジの乗組員から歓声が沸き上がる。

レイ「ちょっと鬼退治に行ってきます」

 レイの船団から、次々と光子魚雷が射たれバル星の艦隊を破壊していく。しかし、致命傷にならない程度だ。同国人なのだからだろう。バル星の兵士は、目の前に現われた新しい敵のために混乱し、同士討ちまでする始末だ。カインの戦艦も被弾し、カインも命からがら脱出艇で落ちのびていく。


○空母インディペンデント。展望指令室。

シャン総司令官「いまの銀河の勢力地図は、どうなっている?」

ハイジ作戦立案官「領土は別にして、兵力だけをいえば、ギーガ帝国が4、ラーラ王国2、連合国1・5といったところでしょうか? あと、法王庁が1・5、その他が1でしょう。法王庁は、信者の心の中に入っているので、何とも云えません。でも、いまや帝国軍が圧倒的に有利です」

シャン「シャナ教は侮れないぞ! ギーガ帝国やラーラ王国の中にも信者がいると言うからな。あのギーガ帝国の中にもだ。属国の首長でさえ、シャナ教に帰依している者がいるといわれている」

ハイジ「金属人間といえども、心を持っていますからね。動・植物と何ら変わりはありません。エルム星への巡礼は、後を絶たないといいますよ」

シャン「宗教は、麻薬と同じだ」

ハイジ「彼らは、法王庁を潤す糧となっています。法王庁も財力では、ギーガ帝国に引けを取っていません。それに、イザヤという若きリーダーがいます」

シャン「ラーラ王国も、忠誠心という点では盤石だし、どこも敵に廻すと、恐い存在だ」


○バル星の軌道上。ギーガ帝国の空母のブリッジ内。ヒヒ総統の前で、サイボーとカインが首(こうべ)を垂れて小さくなっている。

ヒヒ総統「レイ皇子を逃がし、そのうえ連合軍を打ち漏らした罪は重いぞ! 今頃は宇宙の塵になっていたものを!」

サイボー、カイン「申し訳ございません。今度こそは、息の根を止めてやります」

ヒヒ「よし、もう一度だけチャンスをやろう。次はないものと思え」

エメリッヒ総合司令官「今度おめおめと逃げ帰って来たら、私が首をねじ切ってやるぞ!」

 サイボーとカイン、スゴスゴとブリッジを出て行く。

ブルーとドルの二人の将軍がヒヒ総統の前へ進み出る。ブルーはブルドッグの顔をした動物型人間。ドルはトカゲが進化した爬虫類型エイリアンだ。共通なのはどちらも、冷血で残忍だということである。

ブルー、ドル「今度はわたしたちにやらせてください。千の兵でも貸していただけたら、奴等を根絶やしにしてやります」

ヒヒ「最早、勝機は去ったわ。予が命令を下すまで待機しておけ!」

ブルー、ドル「ハハアー、仰せの通りに!」


第3話、同盟


○惑星パオパオの地下の秘密基地。この星は、氷の惑星である。快適な会議室の中、様々な種族の人々が集まっている。シャン総司令官、リュウ、トト将軍、ハイジ作戦立案官、コウメイ参謀長などがいる。

トト将軍は魚型、ハイジ作戦立案官は緑色の植物人間のエイリアンである。

シャン「トト将軍から、現在の我軍の状況を説明してもらおう」

トト「先の戦いで私たちは空母フリーダム、戦艦グリフィン、アルカンを失い、現在の戦力はレイ皇子の助力を得た今も3/5ほどに落ちています。態勢を立て直すまでには、悲しいことかな、半年程かかる計算です」

ハイジ「そんなに悠長なことを言っているひまはありません。その間に、ギーガ帝国はこの宇宙の大半を支配してしまうでしょう。そうなっては手遅れです」

シャン「何か名案があるかね? ハイジ君」

ハイジ「一つだけあります。ラーラ王国と同盟を結ぶのです。手を組めば、帝国の武力に対抗できるでしょう」

 ハイジ、一人ひとりに目を注ぐ。

ハイジ「これは、なにも私が植物人間だからという理由からではありません。同じ生態系で共存できる生物だからです。あの冷酷な金属人間達とは同盟はできません」

コウメイ「僕もハイジ女史の意見に賛成です。皆さんは、あの”トーマ星の悲劇”を忘れたわけではありますまい。ギーガ帝国は平和を唱えるトーマ星を、連合軍の婦女子を匿ったという理由だけで、バイオ爆弾を落して、死の星にしたのです。植物も動物も生きるものすべてを殺戮してしまった。心やさしいラミ女王の心から、そのことは決して離れてはいないでしょう。それに、古(いにしえ)の地球から発見された『三国志』という古書に三国鼎立(ていりつ)というのがあります。三国が互いに睨みを利かせ、鼎(かなえ)のように立脚するというものです。三つの足のどれを欠いても転倒します。弱っている我らに残されているのは、この方法しかありません。いまは、ラーラ王国との同盟が必要なのです」

シャン「選択の余地なしか? 他に意見のある者は?」

 シャン、周りを見回す。

シャン「それで、誰が使者として出向く?」

ハイジ「私が言い出したのですから、私が行きます」

コウメイ「それは駄目です」

ハイジ「(憤慨して)同族だから、私が裏切るとでも?」

コウメイ「そうじゃありません。同門相食むという諺もあります。あなたが使者に立てば、相手が感情的になってしまうでしょう。それじゃあ、まともに交渉はできません」

シャン「それでは誰が?」

コウメイ「僕が行きます」

リュウ「ボクも行きたい」

シャン「駄目だ。交渉不成立の場合は殺されるかもしれないのだぞ」

コウメイ「確かに難しい任務です。しかし、我が主君のリュウには、光がみえます。それは、暗黒を照らす一条の光です。僕は、リュウに賭けてみたい」

シャン「それでは、二人に任せることにしよう。ファー、ガイ、子龍が護衛だ」


○アベル星の軌道上。ギーガ帝国の人工小惑星内。王座の間。

王座に銀河帝国の皇帝ショウが、その横に皇后のレイラが座っている。その斜め後ろには、オウマイ、コウツ、エツという側近が控えている。また、レイラの横には侍女の若いユウリが立っている。伝達官のガラン、親衛隊長のグーという腹心を引き連れたヒヒ総統が、部屋に入ってきて、皇帝の前で恭しく頭を下げる。その態度は神妙にみえて、実に傲岸不遜である。

ヒヒ総統「閣下におかれましては、御機嫌麗しゅう……」

ショウ皇帝「麗しくない」

ヒヒ「なぜでございます」

ショウ「予は、もうこれ以上、お前の殺戮など見たくない」

ヒヒ「私は陛下に弓引く反逆者どもに剣とナイフをもって挑んでいるだけです。今の乱れた世界を統治するには、力で平定するしかありません。私は陛下の望む平和を実現させようと日夜努力しているのです」

ショウ「詭弁だ!」

ヒヒ「陛下はまだ子供ですから、そのような論理はおわかりにならないのかもしれません」

レイカ「ヒヒ総統、口が過ぎますよ!」

ヒヒ「どうも申し訳ございません。しかし、閣下に感謝していただける日がやってくることでしょう。すべて私に任せて、大船に乗った気持ちでいてくだされば、よろしいのです」


○ギーガ帝国空母、ブリッジ内。

ヒヒ総統の横にエメリッヒ総合司令官が立っている。

エメリッヒ「総統、もう陛下は用済みなのじゃありませんか。もう始末してしまっても?」

ヒヒ「確かに、銀河帝国の半ばを手中に収めた現在、皇帝の名は利用価値が少なくなっているかもしれん。しかし、法王庁との戦いにおいては、まだ必要なのだ。奴らは、権威のあるものが好きだからな」

エメリッヒ「皇帝を戴く限り、法王庁といえども面と向かって、我らに歯向かうことはできません。しかし、全宇宙のエイリアンの1/3以上が信者だというシャナ教もやっかいなものです。法王が死ねといえば、自ら命を絶つのですから……。我がギーガ帝国の兵士にも信者がいると聞いています。噂ですが」

ヒヒ「宗教のような形のないものこそ、手強いものだ。だから、一線を引くためにも皇帝が必要なのだ。シャナ教を潰すまで、あの若造は生かしておいてやろう」


○ラーラ王国の女王専用船。小型宇宙船が巨大な女王専用船に近づいていく。

船長「ラミ女王様に敬意を表し、連合軍の使者が乗船を望んでいます」

ラーラ王国母船「どうぞご乗船ください」

 コクピットの窓外に、女王専用船が浮かび上がり、接近してくる。リュウ、コウメイ、緊張した顔をしている。


○女王専用船の中。

小型宇宙船から、リュウ、コウメイ、護衛としてついてきているファー、ガイ、子龍等が降りる。

 広い通路にずらりと煌びやかなラーラ王国の女兵士が並んでいる。一行は、その中を控室まで案内される。リュウ、コウメイ特使とファー、ガイ、子龍等護衛は別々の部屋へ案内される。


第4話、三国鼎立(ていりつ)


○女王専用船の中。女王謁見の間。

 着飾って美しいラミ女王が王座に座わり、その前のテーブルの両脇に、カーン長老、ローズ総司令官、ミミ副総司令官、マロン作戦司令官、元老院のアリン、マン等名だたる実力者達が黙って席についている。

 女王の前に、リュウとコウメイが立ち、今はコウメイがその熱弁をふるっている。

コウメイ「ですから、我々とまったく生態系を別にする金属人間とは共栄、共存は不可能の運命にあるのです。それが、彼らが我々に対して、あんなにも残酷になれる所存です」

ラミ女王「トーマ星の例を持ち出されるまでもなく、ギーガ帝国の残虐非道ぶりは目に余るものがあります。あの繁栄を誇った千年王国を一夜にして地獄に変えてしまったのですものね。あの星は、今後千年以上生物は住めないときいています。あの悲劇のことを思い出す度に私の心は痛みます」

コウメイ「ギーガ帝国はショウ皇帝の名を騙ったいわゆる傀儡国家です。ですから奸賊ヒヒを倒し、皇帝陛下を救い出さなくてはなりません。そのショウ皇帝陛下こそ、このリュウの兄君なのです」

 この爆弾発言で座がざわつく。

カーン長老「皇帝陛下の弟だとナ。そういえば瓜二つだな。一度、お会いしたことがある」

 カーン長老、リュウをジッと見る。

カーン長老「ワシも、ある噂を聞いたことがある。先の王妃は、双子を生んだ。しかし、王は二人立たずということで、側近のズーは弟のリュウ君を亡きモノにしようとした。そこで、王妃の密命を帯びた乳母のミュウは、リュウ君を辺境の惑星に逃れさしたとナ」

コウメイ「そこで、貧しいながらも温かい養父母に、リュウ君は守られて大きくなりました。極貧とも言ってもいい環境ながら、リュウ君は真っ直ぐに育ちました。それが、我らのリュウ君なのです」

カーン長老「玉に育ちつつあるというわけか?」

コウメイ「話を戻しましょう。ギーガ帝国は巨大です。その敵を倒すのは並たいていのことではありません。そのためには、ラーラ王国と連合軍が手を取って戦うしかないのです」

ローズ「その報酬はなに? ヒヒ総統は、あなた方の領土の半分で、同盟を申し込んで来ているわ」

コウメイ「代償は、ギーガ帝国からの『安全』です。もし我々が亡んだら、ギーガ帝国は、今度はあなた方に牙を向けるでしょう。しかし三国が鼎立していると、帝国も容易に攻めて来られないでしょう。お互いにとって都合がいいというものです」

ミミ「ハッキリ、ものをおっしゃる方ね」

コウメイ「ありがとうございます。それにー」

ローズ「それに、何? 言い出して止めるなんて男らしくないわ」

コウメイ「女王陛下の前では、口にするのも汚らわしいことなのですが……。ヒヒ総統の言葉です……”植物はもともと観賞用にあるべきだ。ラミ女王は、花のように美しい女だそうな。いっそのこと、ラーラ王国を滅ぼして、ラミ女王を、そばにおいて愛でるのもいいな“と言ったとか、言わなかったとか……」

 あちこちで非難の声があがるが、女王は顔色ひとつ変えずに、落ち着いて座っている。

 ローズ、バラのような顔を真っ赤にして立ち上がる。

ローズ「ヒヒの奸賊め。こうなれば、我が軍の力を目にもの見せてくれようぞ!」

ラミ女王「ローズ、落ちつきなさい。(視線をコウメイの方へ直し)使者のおっしゃることはよくわかりました。追って返事をいたしますので、席を外してお待ち下さい」


○数時間後。同、女王の間。先程のそうそうたるメンバーが顔を揃えている。

 コウメイとリュウが入って来て、女王の前に立つ。

ラミ女王「(立って、言葉をかける)私たちは全員一致で、あなた方の申し出を受け入れます」

リュウ「それじゃあ」

ラミ女王「同盟成立です」

 ラミ女王、高らかに宣言する。

リュウ、コウメイ「(頭を下げ)ありがとうございます」

ラミ女王「こちらこそ!」

 全ての人々が、全員拍手している。


○女王専用船。晩餐の間。

 華やかで、ゴージャスなホールである。

 みんな、テーブルについている。

 ローズを挟んで、リュウとファーがいる。ガイ、向かいの席で、ミミとコウメイ相手に酒を飲んでいる。子龍、その横でおとなしくしている。

ローズ「(リュウに向かって)きみは、あの“ミア”の戦いで、勲章をもらったそうね」

リュウ「はい。でも。ぼくは、ナオミたちを助けるために必死に戦っただけです」

ローズ「勇気ある少年ね」

リュウ「ありがとう。でも、お姉さんは、やさしいんだね?」

ローズ「意外? 本当は、恐いのよ」

リュウ「みんな、そう言っているけど、本当は違うよ。ぼくには、わかるんだ」

ローズ「どう違うの?」

リュウ「とても心が暖かいんだって。ぼくにも、大人の男の人のように接してくれるし……」

ローズ「でも、よく厳しすぎると言われるわ」

リュウ「それは、司令官なんだから、仕方がないよ。時には、非情にならなければならない時も、あるでしょう。これは、戦争なんだから」

ローズ「やさしいのね。きみには、人を惹きつける魅力があるわ。とてもチャーミングよ」

リュウ「ぼくは、お姉さんが好きだよ」

ローズ「ローズでいいわ」

リュウ「(手を取って)ほら、こんなに暖かい」

ローズ「ありがとう(頬にチュッとキスをする)」

リュウ「恥ずかしいよ」

子龍「ナオミに告げ口しちゃうぞ」

 ファー、無言で笑って見ている。ガイ、テーブルの向こうから、酒を飲みながら、囃し立てる。みんな、微笑みを湛えた目で眺めている。


○女王専用船。貴賓の間。パーティーをしている。煌びやかな女性ばかりのせいか、華やかな雰囲気である。

リュウ「女王様は、いい匂いがするね。それにものすごくきれいだ」

コウメイ「美しい花に心を奪われましたか? ナオミさんが、やきもちをやきますよ。アッ、これは単なる比喩的な表現ですが」

リュウ「(赤くなって)そんなんじゃないよ。でも、女王様は優しいし、好きになっちゃったみたい」

コウメイ「素直なんですね。でも、それが人を惹きつける」

ミミ「コウメイさんと踊っていいかしら?」

 コウメイは戸惑うが、リュウが、「どうぞ、どうぞ」と言って押し出す。

 リュウ、コウメイがぎこちなく踊っているのを見て笑う。


第5話、戦い


○ギーガ帝国、母船。展望室。

ガラン伝達官「大変です。スパイから、連合軍とラーラ王国が同盟を結んだとの情報が入りました」

ヒヒ総統「おのれ! 外道どもめ、ふたつの国もろとも、死の星にしてくれるわ。どちらも、予が自ら根絶やしにしてやろうぞ」

エメリッヒ総合司令官「そのお言葉を待っていました。必ずや、この剣の露にしてくれましょうぞ」

ヒヒ「同盟を結んだとて、一枚岩ではない。しょせん寄せ集めの軍団よ。もっとスパイを放て! 裏切り者は、必ず出てくる」

エメリッヒ「そうですとも。裏切り者に寝首を掻かせるのも、兵法のひとつです。母国に人質を取られている者など、こちらに靡(なび)きそうな者を、甘言をもって迎え入れましょう」

ヒヒ「お前も、そうとうな悪よな」


○連合軍、宇宙空母インディペンデント内。会議室の前の通路。

 リュウ、ファー、ガイ、子龍が歩いている。

 ラーラ王国の作戦司令官のマロンが会議室に入って行く。金属人間である。

ガイ「どこも、かしこも会議、会議だな。しかも極秘と来ている」

ファー「作戦が敵に漏れてはまずいだろう。即致命的な敗北に繋がる」

ガイ「しかし、マロンという女、大丈夫かな? 金属人間だろう」

リュウ「人を疑うなんてことは良くないことだよ」

子龍「……」

ファー「いつもの冗談です。ガイは、マロン作戦司令官も、うちのアルファも疑ってなんかいませんよ。もちろん子龍もね」

ガイ「(照れて)シャン総司令官とラミ女王は、法王庁のロロ法王に対して、特使を派遣して協力を要請したそうですね」

リュウ「でも、コウメイは、たぶん色好い返事はもらえないだろうと言っていたよ」

ファー「どうしてです?」

リュウ「たぶん、法王庁はボクたちとギーガ帝国を両天秤にかけるだろうってさ。いざ戦争が始まれば法王庁は形勢が有利な方に味方するだろうって。コウメイの予想はよく当たるんだ」

ガイ「勝つ者にしかつかない、俺が一番嫌いなタイプだ」

リュウ「コウメイは、それは必要な知恵だっていっていたよ。その知恵がなければこの乱世では生き残れないって」

ガイ「そんなものかな」


○ラーラ王国の女王専用船。女王の間。

 ラミ女王、子供たちとあそんでいる。表情は、慈愛に満ちている。

 ローズ、ミミ、それを眺めている。

ローズ「ラミ様は、お美しいナ」

ミミ「心やさしいお方よ」

ローズ「アタシは、女王様のためなら死ねる」

ミミ「富める時も、貧しい時も、一緒ですわ」

ローズ「あのリュウという男の子は、勇気ある少年だナ。いつかは麒麟になるかもしれない」

ミミ「コウメイ様も、いつも涼しげで、知性に溢れていますわ」

ローズ「いかにも。ミミが好みそうな青年だナ。でも、用心しなければ! 相当の曲者よ」

ミミ「アナタも、人を見る目はありますわね」

ローズ「お前のように、頭が良くない分、情に厚いのさ。これでも、いろんな奴らを見てきたからナ」

ミミ「アナタは、口が悪くて損をしていますわ」

ローズ「お前のように、いつも冷静沈着ではいられない。しかし、ラミ女王様に対する忠誠心では負けはしない」

ミミ「それは、お互いさまよ」

 二人、ニッコリ笑う。


○ラーラ王国空母メタル。格納庫内。

 戦闘機の前に兵士たちが並んでいる。閲兵式である。ローズ、ミミ、カーン、マロン、シャン、リュウ、コウメイ、ファー、ガイ、ハイジ、アルファたち、主だった顔も見える。

 ラミ女王も二階のデッキに奇麗なフードを被った侍女と一緒にいる。ラミ女王が立ち上がり手を振り式典は終了する。

ローズ「マロン作戦司令官、前へ出なさい。今日のあなたの作戦は一体何なの? なってないわ。あなたは敵が同じ金属人間だから手を抜いたの?」

マロン「そんなことありません。一生懸命やっています」

ローズ「(顔を真赤にして)嘘おっしゃい!」

マロン「ローズ総司令官、あなたは私が金属人間だから憎いんでしょう」

ローズ「(バラのようになり)上官に向かって、その口の利き方は何! お黙りなさい(マロンの頬を強く平手打ちする)」

リュウ、思わず自分の頬に手をやる。

マロン、堪らず倒れる。ローズ、ムチを取り、力任せにマロンを何回も打つ。

ローズ「(顔がまるで血の色である)お前の親玉は、ラミ女王を美術品と言ったのよ。そんなこと、アタシが生きているかぎり赦さないわ」

 マロンをアルファと少年兵のアンドロイド子龍が身を呈して庇う。

ローズ「(ますますいきり立ち)お前たちも仲間か。ラミ女王には指一本触れさせないぞ!」

ラミ女王「(マイクの声)ローズ、お止めなさい。マロン、アルファ、子龍、許して下さい。ローズに代わってお詫びします」

 ローズ、手を止めたままマロンを睨む。

ラミ女王「ローズ、後で私の部屋に来なさい」


 第6話、決戦


○ギーガ帝国、母船、ブリッジ内。

 ヒヒ総統、漂泊の学者サスケと話している。貧相な人間の男のようで、何一つ特徴がない。

ヒヒ「お前も士官の口を探しに来たのだろう。だったら、予の質問に答えよ。人間と金属人間の違いは?」

サスケ「人間は感情で動くが、金属人間は論理で動くところですかな。しかし、総統が私を呼んだのはそんなことではないはずです」

ヒヒ「だったら、何でだ?」

サスケ「この船体の揺れです。このバル星の星系のこの辺りは、ブラック・ホールや小惑星群が多い。私はこの辺りが、連合軍、ラーラ王国同盟軍とギーガ帝国の決戦の場になると睨んでいます。しかし、この辺は、重力場が不安定のため、絶えず船隊が揺れています。そのためいかに金属人間といえども、船酔いの似た状態を示す者が多いし、計器類も狂いが生じ易い。その対策のためでしょう?」

ヒヒ「お前も面白い男だな。して、その答えは?」

サスケ「あなたは空母を六つお持ちだ。連合軍が二つ、王国が三つで五つだから、あなたがたの方が勝っています。その六つの空母を連結して巨大宇宙ステーションを作るのです。さすれば質量も巨大になり重力の影響を受け難くなるのは常識です」

ヒヒ「なるほど、そういう手があったか。早速試してみよう。褒美は後で取らすから待っておれ」


○ギーガ帝国、空母を六つ繋いで巨大な宇宙ステーションを形成している。

その母艦のブリッジ内。サスケ、ヒヒ総統、エメリッヒ総合司令官、ガラン伝達官、バーン司令官補佐がいる。

ヒヒ「サスケ、お前の御陰で予の心配は解消した。振動もほとんど感じないし、兵士も元気がでてきた」

エメリッヒ「しかし、目標が一つになったという危険はあります」

ヒヒ「心配はいらない。ただの宇宙ステーションではなく動力源があるからどこにでも行ける」

サスケ「宇宙船というより、まるで小惑星ですね」

ヒヒ「(サスケの方を向き)ところでサスケとやら、お前は我ギーガ軍と下賤な生き物の戦いはどちらが勝つと思う?」

サスケ「私がこちらへ来たことから、明らかでしょう」

エメリッヒ「軍事力の差が歴然としているか?」

ガラン「それに、あいつらの中に獅子身中の虫が、二匹もいるんだから、勝てるものも勝てないさ」

エメリッヒ「ガラン喋りすぎだぞ」

ヒヒ「まあ、いいではないか。サスケ君には、この艦で世紀のショーを見物してもらえばいい」

バーン「ここにいれば、安全だ」


○空母メタル。マロンの部屋。

 マロン、ヒヒ総統のホログラムと何か話している。


○空母インディペンデント。アルファの部屋。エメリッヒ総司令官のホログラムが消えてから、アルファは考えに沈んでいる。


○ラーラ王国、空母キララ。ブリッジ内。

スクリーンへマロンが指揮する艦隊が映っている。ラーラ王国の1/6の兵力を引連れている。

ローズ「マロンに任せて大丈夫なんですか?」

ラミ女王「(スクリーンで)マロンは裏切りません」


○法王庁の母艦のブリッジ内に、ロロ教皇をはじめとするオウ枢機卿、フー、オーサン大司教が鳩首会議をしている。

 この場には、まだ若年だがイザヤ総司令官も末席に席っている。イザヤは、知的な青い顔と逞しい身体を持った若者である。


○空母インディペンデント。ブリッジ内。

シャン総司令官「いよいよ決戦の時だ」


○ラーラ王国、空母キララ。ブリッジ内。

ローズ「さあ、これからショーの始まりよ」

ミミ「(横目で)元気いいのね」


○空母インディペンデント。ブリッジ内。

 皆がスクリーンを見ている。アルファが率いる補給部隊が、味方の部隊へ向かっている。長い隊列を作っている。それを、スクリーンで見ている。

 シャン総司令官は冷静だが、トト将軍は緊張している。

トト「こんな大事をアルファに託してよろしいんですか」

シャン「アルファだから、任せたんだ」


○乗っ取った敵戦闘機のコクピット内。

リュウ、ファー、ガイ、子龍、ギーガ帝国の宇宙ステーションへ乗り込もうとしている。

リュウ「これからが本番だよ」

ガイ、ファー「オウ!」、「お任せを」

子龍「ドキドキするな」


○ギーガ帝国母艦。ブリッジ内。スクリーンにマロン、アルファの艦隊が映っている。

エメリッヒ「いよいよですね」

ヒヒ「もうすぐ、下賤な生物どもの終焉だ」


○ラーラ王国、空母キララ。ブリッジ内。

操縦士「マロン司令官、コースを外れています。戻ってください。繰り返します。マロン司令官、コースを外れています。戻ってください。交信が途絶えました」

ローズ「裏切ったな!」

ミミ「(スクリーンをくいいるようにみつめながら)ギーガ帝国の防御線の中に入って行きます」


○空母インディペンデント。ブリッジ内。

シャン総司令官「アルファ、どこに行くんだ。そちらじゃないぞ」

通信士「通信のスイッチを切ったようです」

トト将軍「反逆だ!」


○法王庁の母艦。展望ブリッジ。

ロロ教皇、オウ枢機卿、フー、オーサン大司教がいる。

ロロ「我らが、帝国軍に力を貸すのを躊躇わせるのも、あのトーマ星のことがあるからだ。ヒヒ総統も非情だが、シバという母(マザー)もまた冷酷ぞ」

オーサン「シバは、ギーガ帝国そのものですからね」

オウ「シバも、またミステリアスな存在であり、強大な知力を持っておる。恐れながら、ロロ様にも匹敵する力だ。我が君が、神秘的な力で人を従わせるならば、彼女(シバ)は圧倒的な力で人をひれ伏せさせる」

フー「帝国軍の参謀はエメリッヒじゃが、ヒヒは意見を聞くだけじゃ」

オウ「連合軍の軍師がコウメイなら、ラーラ王国はミミ、この教皇軍にはイザヤがおる。みな知将よ。しかし、イザヤは文武両道を兼ね備えておる。イザヤは、輝ける星ぞ! ワシは、そう信じている」

オーサン「連合軍には、皇帝の弟のリュウがいると聞いています。聡明で勇気をもった少年だそうです」

ロロ「お前の占いに、そう出たのか? 我に禍をなすと?」

オーサン「……」

オウ「ワシもその者の噂は聞いておるが、如何せんまだ幼い。いずれは恐るべき者になるやもしれんが、いまはまだ恐れるに足りずじゃ」


第7話、勝敗


○ギーガ帝国、母艦。帰還口。

 ファー、ガイ、リュウ、子龍、金属人間の甲冑を着て偽装している。スクリーンへコントロール室の金属人間が映っている。

ファー「着陸の許可をお願いします」

ナビゲーター「わかった。着艦を許可する」

ギーガ帝国の母艦の牽引ビームが、リュウ達の戦闘機を捕らえ引っ張っていく。


○ギーガ帝国。母艦。着陸デッキ。

 戦闘機のハッチが開き搬入口から、三人の金属人間が搬送車でいくつもの箱を載せて出てくる。小さいため、子龍がリュウを肩車して大人ひとりに化けているのだ。

箱の中身はコンピューター・ウイルスをばら蒔く論理爆弾である。


○ギーガ帝国。母艦。サスケの客室。ドアが開き、サスケが出て来る。

サスケ「(独り言)この艦と心中するのはまっぴらじゃ」

 サスケは、ゆったりとした衣裳を着ている。


○ギーガ帝国、母艦。ブリッジ内。

カメラ通信士「(空母インディペンデント、キララの音を盗聴している)敵は混乱しています」

ヒヒ「そうだろうとも。ラーラ軍艦隊の1/6と連合軍の輸送部隊が反旗を翻(ひるがえ)したんだからな」


○ギーガ帝国、母艦、通路。

サスケ「(独り言で)あいつらうまくやっているかな」

 金属人間警備兵、サスケの前へ現れる。

警備兵「おい、お前。どこへ行く」

サスケ「エメリッヒ総合司令官に呼ばれて、ブリッジへ」

警備兵「そちらは離着陸デッキだ。ブリッジは、あっちだ」


○同、母艦内への入口。リュウ達、中へ。

警備兵A「(三人を止めて)それは?」

ガイ「総統へのお土産でさあ。連合軍の輸送船から、分捕ったのです」

警備兵B「(箱のふたを開けると、金銀財宝が詰っている)よし、通れ!」


○同、母艦の通路。ファー、ガイ、リュウ、子龍の四人、あちこちに論理爆弾を仕掛けている。

リュウ「よし、これで最後だ」

 スイッチを押すとカウント・ダウンが開始される。赤い電光文字が残り一五:〇〇を示している。


○同、時間。母艦。ブリッジ内。

通信士「二人の裏切り者からの交信が跡(と)切れました。再々の停船命令を無視して、突っ込んで来ます」

エメリッヒ「罠(トラップ)だ!」

ヒヒ「全軍、攻撃開始」


○同、宇宙ステーション。六つの空母から、次々に戦闘機が飛び立ち、マロン、アルファの輸送船に向かって攻撃しようとする。マロンの艦隊等も迎撃体勢を取る。

マロンの船には電磁爆弾(ハイテク器機をすべて破壊する)が、アルファの船には重力爆弾(重力を発生させ相手を殲滅する)が満載されている。


○連合軍空母インディペンデント。ブリッジ内。

シャン総司令官「攻撃開始!」

トト将軍「畏まりました」


○ラーラ王国、女王専用船。女王の間。

ラミ女王「攻撃を開始してください」

ローズ「(スクリーンで)待ってました」


○連合軍空母インディペンデント、エンタープライズ、ラーラ王国メタル、キララ、ランから、次々に戦闘機が飛び立ち、戦闘に参加する。


○宇宙空間。激しい戦闘が繰り広げられる。戦局は、一進一退で、勝負の行方が見えない。戦闘機、レーザー光線、(ギーガ帝国の)破壊光線、(ラーラ王国の)プラズマ光線、(連合軍の)光子弾などが飛び交っている。


○ギーガ帝国、母艦。通路。

 金属人間の警備パトロール、不審な三人組に気づき近づいて来る。

警備兵A「おい、お前たち、そこで何をしている」

ファー「いえ、ワタシたちは、何も……」

警備兵B「(論理爆弾を発見し)これは、何だ」

警備兵C「お前達を逮捕する」

 次の瞬間、警備兵たちは、ファーの電子青竜刀、ガイの光子蛇鉾で切り裂かれる。倒される前に一発光銃を射つ。

偽金属人間の腹、リュウの股間と子龍の頭の間に大穴が開く。リュウと子龍、鎧、兜を脱ぎ捨てる。

リュウ「危ないところだった」

子龍「危機一髪だ」

ファー「さあ脱出です」

 ファー、ガイ、リュウ、子龍、反重力スクーター、スケートボードなどで、横の壁や天井を走り、先程の戦闘機へ向かう。追っ手も宇宙オートバイなどで、猛スピードで追撃して来る。サイド・カーに乘っている兵士がリュウたちへ発砲するがことごとく外れる。


○ギーガ帝国。宇宙ステーション。シールドの外。

アルファ、マロンの船、接近している。


○空母インディペンデント。ブリッジ内。

トト「あと八分だ。それまでに論理爆弾が爆発して、シールドを消さなければ効果がない。それに動力炉が停止すれば大爆発が誘発される」

シャン「(思案顔で)あとはリュウたちに任そう」


○ギーガ帝国。宇宙ステーション外。

マロン、アルファたち、輸送船から脱出艇で、脱出する。


○ギーガ帝国。母艦。離着陸デッキ内。

グー親衛隊長、ブルー将軍、ドル将軍、暗殺者ユタがリュウたち四人を待っている。

グー「おや、君達どこへ行くつもりだい?」

ブルー「我らが相手をしよう」

 ファーが電子青竜刀、ガイが光子蛇鉾、リュウ、子龍が光子剣、ギーガ帝国幹部がレーザー・ソードを抜いて、刃を交える。グー親衛隊長と相対しているファー、ブルー将軍と剣を交えているガイは優勢だが、暗殺者ユタと戦っているリュウ、ドル将軍と対決している子龍は劣勢を余儀無くされている。


○同、母艦。

論理爆弾のカウント、三・二・一・〇!。艦内の何カ所かで、大爆発が起こる。床が揺れる。この隙をつき、リュウは光子剣でユタを倒す。


○ギーガ帝国、宇宙ステーション。

 シールドが消えている。

マロン、アルファの輸送船、宇宙ステーションへ激突し大爆発する。


○同、宇宙ステーションの近く。

亜空間から、法王庁の見えない戦闘艦隊が現われ、ブラック・ホール弾(黒い影が飛び重力で相手を押し潰す)などでギーガ帝国軍を攻撃し出す。不気味で神秘的な形の艦である。

ロロ教皇「敵はギーガ軍ぞ!」

オウ枢機卿「仰せのままに」


第8話、大勝利


○宇宙ステーション。

ヒヒ総統「(そちらへ振り向き)また、会おうぞ!」


○同、宇宙ステーション。ヒヒ総統、エメリッヒ総合司令官、ガラン伝達官、バーン司令官補佐等それぞれの脱出艇で命からがら脱出する。


○同、宇宙ステーション。グー親衛隊長。ブルー将軍、ドル将軍、離着陸デッキより宇宙へ飛び立つ。


○宇宙戦艦オーガ。ブリッジ内。

ナオミ「やった!」

ホウトウ提督「やりましたね」

メイダ隊長「一気に攻めましょう」


○ギーガ帝国、宇宙ステーション。離着地区デッキ内。ファー、ガイ、リュウ、子龍、サスケ、ひとつの中型の戦闘機で脱出する。

子龍「危機一髪だね」

リュウ「こんなのばっかりだ」

ファー「もうこんなのは、勘弁してくださいよ」

ガイ「本当だ」


○同、瀕死の宇宙ステーション。重力爆弾に引き摺られて、ブラック・ホールの中に落ちて、消滅する。

同盟国の面々から、歓声が沸き上がる。

リュウたちの戦闘機、ヒヒ総統の脱出艇を追っている。


○ラーラ王国。空母キララ。ブリッジ内。

スクリーンへ宇宙ステーションの大爆発が映っている。

ローズ「やった、大勝利だ」

ミミ「大成功だわ」

 スクリーン、マロンの顔へ変わる。

ローズ「マロン、ごめんなさい。辛い思いをさせちゃって」

マロン「私が考えた作戦ですよ」

 今度は、アルファ、子龍の顔へ移る。

ローズ「二人とも、ごめんなさい。本心じゃないのよ」

アルファ「(画面で)構いません」

リュウ「(画面で)お姉さんがやさしいのは、わかっているよ」

子龍「(画面で)すっかり、騙されちゃった」

ローズ「ウソばっかり。でも、人を騙すには、まず味方からって言うでしょう」


○リュウたちの乘船した戦闘機。

ヒヒ総統たちの脱出艇の一団に近づく。

リュウ「これで、すべてを終わりにしてやるぞ」

 リュウ、脱出艇目掛けてレーザー光線を浴びせ掛けるが、今一歩で外れる。

 その時、目前に敵の艦隊が現われる。

ファー「敵の艦隊です。逃げましょう。勝機を逸しました」

 リュウの戦闘機、一八〇度転換で、尻尾を巻いて逃げる。


○ラーラ王国、空母キララ。ミミの部屋。

ミミとコウメイの二人きりである。

コウメイ「(少し緊張して)お話があるとか?」

ミミ「まあ、お座りになって」

 コウメイ、素直にロッキング・チェアに座る。ミミ、コウメイの横に来て、いきなりキスをする。コウメイ、目を白黒させる。

ミミ「積極的な女って嫌い?」

コウメイ「(赤くなり)そういうわけじゃ……。でも、ミミ司令官って、見かけによらず大胆なんですね。ラーラ王国の女性って、みんな(後は聞こえない)?」

ミミ「ミミって呼んで」

コウメイ「はい、ミミ」

ミミ「物事には潮時ってあるでしょう。ワタシは、みすみすチャンスを逃したくないの」

 ミミ、コウメイの瞳を覗き込む。

ミミ「じゃないと、ここまで登って来られません」

コウメイ「そうですよね」

 ミミ、一枚のCDを渡す。

ミミ「これは、バル星を廻るワタシたちのスパイ衛星が偶然撮ったものなの。きっと、あなたのお友達のお役に立てるはずよ」

 コウメイが、デッキにCDを差し込むと、ユタが兵士に姿を変え、バル星の国王を暗殺し、兵士に濡れ衣を着せる光景(シーン)が映し出される。

ミミ「気に入ってくれたかしら?」

コウメイ「とても、素敵なプレゼントです。ありがとう。なんとお礼を言っていいやら」

 コウメイ、ミミにお礼のキスをすると、慌てて部屋を出て行く。

ミミ「(呆れた顔で)もう、せっかちなんだから」


○バル星。

レイを中心とした反乱軍が決起している。激しい戦闘の結果、レイはサイボー、カイン達を倒し、勝利する。ケイと后は、許され、名実ともにレイがバル星の国王になる。


○バル星。宮殿の前の広場。

 レイが国民へ演説している。

レイ「我々は人民の、人民による、人民のための政治を行なうだろう」

 会場は拍手喝采である。


○連合軍空母インディペンデント、エンタープライズ、ラーラ王国空母メタル、キララ、ライアの乗組員全員から歓声が上がる。シャンペンを抜いたりして、この大勝利を祝福している。


○エルム星。シャナ教の聖地である。

この星は、聖地だけあって青く自然が豊かで、三国の境界にあり、直前までギーガ帝国の影響が強かった星である。


○同、エルム星。

連合軍戦艦オーガがギーガ軍の掃討へ向かっている。

ナオミ「大勝利だわ」

ホウトウ提督「見事な作戦だ」

 戦艦オーガ、任務を終了の後、休憩している。そこへ、法王庁十字軍の見えない戦隊が現われ、オーガ他すべての連合軍を制圧してしまう。コウモリ型の不気味なバトル・シップ艦隊である。

 大きなコウモリ型の戦艦ジャベリンの中でイザヤが指揮を執っている。

イザヤ総司令官「(スクリーンに現われ) 乗組員諸君、君たち全員の降伏と投降を要請する。抵抗しなければ、君達の安全は保証する」

 イザヤ、胸にシャナ教の赤い紋章が入った甲冑を着ている。


○戦艦オーガ、空母インディペンデントなど連合軍の艦隊の全スクリーンの中。

イザヤ「速やかな投降をお願いする。我らも無益な殺生はしたくはない。我らが目的は、エルム星の奪回だけだ」

 白と赤の紋章入りの戦闘服を身に付けたイザヤ軍の兵士たちが、制圧した連合軍の艦船に乗り込んでいく。オーガの乗組員も、無抵抗でイザヤに従っている。


○同、エルム星。上空。

 法王庁十字軍の戦隊。

その様子を静観している。


○同、エルム星。連合軍戦艦オーガ。ブリッジ内。

ナオミ「なぜ法王軍が?」

メイダ隊長「ここは、シャナ教の聖地なんだ。だから、エルム星の奪取は、法王や教皇の長年の悲願なのだよ。だから、この時を、待っていたんだろう」


○同、エルム星。地上。

 戦艦オーガ、戦艦シャルム、着陸している。戦艦オーガの乗組員、シャナ教の兵士たちに誘導され、地上の施設に入っていく。しかし、その扱いは乱暴ではなく、規則と礼儀に守られている。

ナオミ「これから、どうなるの?」

ホウトウ提督「イザヤ総司令官は、人望もあり、人格者でもある立派な将軍だ。捕虜として我々の人権も名誉も守ってくれるだろう」

 ホウトウ、ナオミをやさしく見る。

ホウトウ提督「大丈夫だ! 何も心配することはない。我らの安全は確保されるはずだ」

ナオミ「シャナ教はこの星をどうするつもりなの?」

ホウトウ提督「自分たちの支配下に置くだろう。それから、我らの追放」

メイダ隊長「ナオミ、キミたちは心配することはない。シャン総司令官も、その線で交渉に応じるだろう」


○空母インディペンデント。ブリッジ内。

リュウ「ナオミたちを助けなきゃ」

シャン総司令官「きっと、みんな無事だ。イザヤは無闇に人に危害を加える男ではない」

リュウ「絶対、大丈夫だよね」

シャン「さあ、救出へ向かおう!」

 空母インディペンデント、オーガ救出ためにエルム星へ向かう。


                 「ギーガ帝国の逆襲」へ、つづく


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宇宙三国志 G(ギャラクチカ) シナリオ編 高原伸安 @nmbu

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