連絡

 仲間と連絡を取ったグリッドは、握りこぶしを額に当てた。


「あ、やっぱり。待ち伏せしてましたもん」

『近くで俺、待機してたから』

「言ってくださいよ」

『イングランドから情報入ったのが、ほぼ同時だったんだよ』


 スーパーの近くで、待ち伏せしていた三人の外国人は、キング派の一味だった。

 クイーンのそばには、警護として何人か控えている。が、情報は少し遅れて入っていた。

 仲間の情報によると、キング派が妙な動きをしているというのは、勘付いていた。


 だが、母国にいるクイーン派を襲撃するわけではなく、兵隊を日本に移動させた。と、いう情報を得ていた。


 クイーンの安否に気づいた様子はない。

 なら、どういう理由で動いたのか、不明な点があるので警戒を促された。――というのが、ちょうどスーパーで買い物をしている時に、寄越された情報である。


『こっちの仲間を潜り込ませちゃいるが、何分鼻が利く連中だ。迂闊うかつに下手な真似させちゃ、すぐにバレちまう』

「何考えてんスかねぇ」

『さあ。そうだ。配置に付いてるから。クイーンに伝えてくれ』

「あー……」


 歯切れの悪い返事を仲間が怪訝に思う。


『んだよ』

「ベイクさん。あたし、もしかしたら、死ぬかも」

『……囲まれてんのか?』

「え、いえ、そうじゃなくて……」


 離れた民家の屋根の上で、グリッドはため息混じりに言う。


「ユウくんに、惚れられちった」

『バーカ』

「……おい。こっちは、本気なんだって」

『そういう色恋沙汰とか、クソどうでもいいよ。お前で何とかしろ。相手はガキだろ? ほら、年頃のガキなんて、裸の一つでも見せてやりゃ満足する』


 それは現場を知ってるグリッドからすれば、処刑宣告である。


『じゃあな』


 ベイクという仲間は、さっさと通話を切り、配置に戻っていく。

 グリッドが覚悟を決めてアパートに戻るのは、朝方になってからだった。

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