一緒にお買い物


「スカーレットさまぁ。すいませんでした、って」


 グリッドは罰が悪そうに謝る。


「わたくしは、愛の下にユウくんを愛しているだけ。純愛なの」


 後ろを歩くグリッドに、真顔で答えた。


「……じゃあ、キスに熱がこもっているのは」

「あれは、将来の殿方に捧ぐ、わたくしの愛そのものよ」


 二人はカートを押して、今日の夕飯の買い出しをしていた。

 ユウの栄養を考えて、野菜は多め。

 だけど、愛情を入れて、肉はきちんと買う。


「他の欲求、混じってません?」


 すると、振り返ったスカーレットが真顔で見つめてくる。


「わたくしの愛を疑っているの?」

「愛情は疑ってませんけど」

「何が言いたいのかしら。この際だから、ハッキリと言ったら?」

「えー、怒りませんか?」

「場合によるわ」


 言おうか迷ったが、これは人間関係なく、誰もが通る道。


「じゃあ、……ユウくんにとか、できたらどうします?」


 カートの手すりがへこみ、奇妙な音が店内に小さく響く。

 愛することに夢中だったスカーレットは、まさかの可能性を考えていなかったのである。


「そうなった時、スカーレット様がチュッチュしてると、まずいんじゃないかなぁ、って。あたし、思うんですけどぉ?」


 真っ黒に濁った目が右へ、左へ泳ぐ。

 口はムッとして、嫉妬が微かに漏れていた。


「……ありえないわ」

「はあ」

「だって、ユウくんは、わたくしに夢中だもの」


 プライドの高い主人に、従者は笑顔で頷いた。


「そっすね」


 この従者は愚痴を言うし、生意気だが、忠誠心はきちんとあるのだ。

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