第33話 喧騒の端で
魔物襲来後の数日は、壁の瓦礫撤去と魔物の運搬をやった。
そして俺たちがそれをしている間に男たちが口を割った。
「町に行ったのは魔物をなすりつけるため」、「交換所で売るより良い値段を付けてくれる人がいる」、「前潜ったときに追ってきた大量の魔物がいなくなったからチャンスと思って」的なことを話したらしい。
どうやって話させたのか……考えることじゃないだろう。
ともかく真相は分かった、導き出された解答も合っていた。
だが申し訳無さというか。
結果として負傷者は出たが、死者が出なかったのは幸いか。
今回のことで町の人から疎まれているわけでもないと感じるし、なんなら少し感謝されてる。
町を守った人みたくなってる。
「さすがに守ったは言い過ぎだろうけど」町の様子は数日前と変わっていた、ただ悪くなったわけではない。
一言で表すなら騒いでいる、椅子やら机やらを外に持ち出して手には、たぶん酒であろう物が握られている。
その風景が町の1階にずらっと並んでいて露店みたいなのもあり、まるで祭りのようだ。祭りに行ったことはないが。
どうしてこうなったのか詳しい経緯は知らない。
ちらっと聞いた話では魔物の襲来で町も不安そうだから騒ごうと言った人がいるとかいないとか。
そんな風景を俺は少し離れたところで見ていた。
町の端らへんに置かれた瓦礫に座り、近くで買ったジュースを飲む。
申し訳無さはあるが、同時に達成感もあった。この感じは前のダンジョンでスレンダーな魔物を倒したときにも感じた。
だけど少し違うようにも感じる。なんでなんだろうか。
「あっ黒瀬さん」がやがやとしている風景を眺めていたら、黒瀬さんがいた。
彼女も気づいたようでこっちに来た。
お互いお疲れ様と言い合って瓦礫撤去や魔物運搬の苦労などを話したり。
そして、もちろんというべきか、あのでかいボデロックについても。
「倒せて良かったです、でかぶつ」
「ええ、本当に。……でかぶつとゴブリン相手にして、無傷であんな機敏に、よく動けましたね」機敏といっても、余裕がなくて必死だったからだが。
「必死だったのと、あとはまあ似たようなことを昔に練習しまくって、魔物はいなかったですけど」
「すごいな……」黒瀬さんはボソッとそう言った。
「黒瀬さんがいて、魔道具もあったから倒せたんですよ」俺だけの力じゃない、魔道具がなければ遠くのゴブリンを倒せなかったしでかぶつの攻撃も防ぎきれなかったかもしれない。それに「足を削って崩してくれなかったらゴブリンの餌食になってました」
「倒れたでかぶつに潰されなくて良かったです」
「そうですね」不思議な達成感、一緒に戦ったからあるんだろうか。……そうかもしれないな。
まあでも良かった、誰も死ななくて。
「あんなでかぶつ一撃で倒せるぐらい強くならないと」穏やかで、目の前の騒ぎに掻き消えるだろう声。でも聞こえた近くにいるから。
「俺も強くならないとな」だから同意した。俺も独り言みたいな声量で。
自由に生きれるぐらい強くなってやろうじゃないかと。
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