第28話 魔物討伐計画準備
秋山さんが去ってから数時間も経たず、俺は魔道具を持って門をくぐっている。
行き先は魔物を大量に見た場所、俺は案内係。
複数人で行く敵情視察だ。
「この先か」
「はい、この先にいます。俺と秋山さんで大量の魔物を見ました」言ってからそこまで多くいただろうかと疑問になった。
なんせパッと見てすぐ去った、10体以上はいたはずだけどそれで大量は言い過ぎか?
疑問と不安を抱えいつも通り警戒しながら進む。
あのときは魔物に追われた結果見つけたもので運によるところも大きい。
故に何度か道に迷ってしまい怪訝な顔で俺を見る人も時間が経つたび増えた。
あのとき俺が見たのは幻だったのかなんて考えも浮かびかけたが、そんなことはないと目に突きつけられる。
「多いな」
俺たちは岩に隠れながら横から覗く。
魔物がいるのは下だ、ごつごつして下に伸びている地面の先にいる。
下といってもゆるやかな山道程度、一歩間違えれば魔物がこっちに気づいて押し寄せてきてもおかしくない。
岩があるから気づかれていないだけだ、その岩も大きいわけじゃないから膝を地面につけて移動する。
ざっと数えて20体はいる、ゴブリンが多いか? あまり顔は出せないから正確な数は分からない。
しかし、どうしてこんな場所にこれだけの数がいるんだろう。
人気スポットなんだろうか。
「ひとまず長に再度、報告しよう」俺たちは気づかれないように慎重に戻った。
帰る道中で数体ゴブリンやボデロックと遭遇したが倒して町に戻った。
それから俺はそのまま家に戻っていいと言われ素直に戻り、あの魔物はどうするんだろうかという疑問を抱えながらベッドに横になった。
抱えていた疑問は目が覚め集合所1に行けば意外とすぐに解消された。
なぜなら魔物討伐計画なる計画について教えられたからだ。
名は体を表すとはちょっと違うかもしれないが、分かりやすい計画名だと思う。
魔物討伐、どこにいる魔物を指しているのか言うまでもない。
町に迫る驚異を事前に排除するためという説明も思ったとおり。
そんな魔物討伐計画が発表されたことで忙しくなった。
具体的にいえば俺を含んだ数チームに分かれて周囲を探索して他に大量の魔物がいないか調べることになった。
いざ討伐ってことになっても、他の魔物に邪魔されて大損害を被ったら目も当てられないからだろう。
俺はダンジョンに潜り辺りを見る。
いくら見渡しても空は見えず、あるのは岩石だけの洞窟(実際に地上でいう岩石と同じ物質かどうか分からないけど)。
見慣れた風景だ、魔物が来るのも見慣れたものだ。
見渡しながら先に進んでいると、ずいぶん入り組んだというか不思議な場所にきた。太い柱みたいな岩が数本、地面から天井まで伸びている。
どこに魔物がいるのか分からない視界の悪さだ。
どうしようかと、チームの人も困っている。
俺も色々考えて1つの案が浮かんだ。
この場所ならあの柱を蹴って上から見下ろせないだろうかという案だ。
そのことを話したら「いけるのか」と言われた。
「すべての魔物が見えるとは言えませんが、大体は分かると思います」
「ならやってみてくれ」
「はい」俺は見えている柱と壁を見てルートを決めて跳躍した。
壁を蹴って柱に向かい今度は柱を蹴る、次に向かう場所を確認しつつ下にも目を向ける、そして別の柱をまた蹴る。柱や壁を足場にしての上からの偵察。
数分とせずこの奇妙な空間の偵察は終わり、チームの元に戻り魔物の報告をした。
器用だな、なんていう言葉も頂けた。
ともかく見つけた魔物、ボデロックとゴブリンをすぐに倒した。
どちらも離れた場所にいたから他の魔物に乱入されず、倒すことができた。
思ったよりいなかったな、この場所に大量にいたら死角だらけで面倒だったから良かったけど。
他の場所も同じようにしっかりと調べて町に戻る頃には暗くなっていた、ような気がする。
地上と違って上を見たらはっきりと朝昼晩がすぐ分かるわけじゃないのは思ったより違和感がある。
時計があるから夜なのは分かるけど。
探索していた間、町も町で色々と準備していた。
集合所1に色々と報告するために戻ったら、主に武器の準備をしていた。
ハンマーや剣といったものが置いてある。
こういう武器には魔石が使われているんだろうな。
魔力を持った相手にはやはりそれ相応の武器がいる、魔石を使った武器や魔道具などがそれ相応に該当する。ということを秋山さんから聞いたのは最近のこと。
そういえば施設にいたときの警棒に魔石は使われていたんだろうか? 能力者が魔力を使って防御すれば普通の刃物で傷をつけるのは難しいと思うし。
魔道具相手にして切られたあの警棒に魔石……使ってたとしても少量だろうな、もしくは一切使ってないか。
そんなことを考えながらまじまじと武器を見ていたら「魔物が来ないよう気張らないとな」
「来るとは思えねえけど、まあ生まれ育った町だからな」
なんて会話が聞こえてきた。
俺もやるだけのことはやるつもりだけど、数日前に暮らし始めた人間には湧かない動機だ。
「黒瀬はどうなんだ、この町に愛着持ったか」
「……まあ、そこそこ」
「丸くなったな」
「うるさい」扉の開閉音が聞こえ首を向ければ黒瀬さんが去っていた。
町に愛着か。
数ヶ月、数年暮せば分からないが、それも施設次第だしな。
あいも変わらず首輪に繋がれている状況だ。
そんな俺の陰鬱とした気持ちなどお構いなしに、魔物討伐計画は進んでいく猛スピードで。
魔物出現は予測できない、いくら索敵してもまた魔物が出てくる可能性がある。
それ故だろう、翌日にはすでに俺は魔道具を持って、大量の魔物がいる場所に向かっていた。
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