第27話 秋山の護衛
「いやー清心君がいてくれて助かるよ。魔物見放題、探検し放題」
なるほどそれが来た理由か。
水斬りナイフを持って護衛、それが今していることだ。
ちなみに俺1人、秋山さんの我儘でこうなっているのではと思ってしまう。
「さあ行こう。魔物を見て探検をしよう」
「ほどほどにしてください、俺も守りきれるか分からないですからね」今までの護衛で魔物の強さと数は分かっているから大丈夫だろうけど。
さすがに護衛1人なのはどうなんだと思うが結果として1人だからどうしようもない。
一応、秋山さんも護身なのかハンマーを持っている。
いざとなったら戦うんだろうか。
もし何かあってもここにいる魔物なら逃げ切れるはずだ。ゴブリンとボデロック、足はそこまで速くなかった。
町まで引き付けないで逃げる必要はあるけど。
「おっ、さっそくだね」洞窟を進んでしばらく、奥からゴブリンが1体やってきた。
「倒していいんですよね?」
「ああ、いいぞやってくれ」
ゴブリンに近づき倒して、引いてきたリヤカーに乗せる。
魔物と洞窟を生で見て、魔物の死体を連れて帰ることを護衛するのが俺の今日の役割。進んで魔物を倒しているから護衛ともちょっと違うかもだけど。
「次行こうか」ずんずん先に行ってる。
俺はリヤカーを引きながら秋山さんに付いていく。やっぱりこれ護衛じゃないな。
しっかりと警戒しながら進んでいたつもりだった、そう警戒していたはずだ。
秋山さんが色々な場所で調査をしていたときも魔物を警戒していたが、気づいたら魔物が1体近づいてきてその後ろにも数体、いや数十体いて逃げることになっていた。
魔物を引き連れて町に帰るわけにもいかず洞窟内を右往左往。
倒してもよかったんだが、さすがにあの数だと秋山さんを守りきれるかわからない。
なら逃げて巻くか、散らせるかしたほうがいいと考え逃げた。
「こんなダッシュするなんてな」なんて呑気な。
だけど足の速さは俺より速い。
リヤカーを引いているせいもあるが、引いてなくても俺より速いんじゃないか。
「あまり先に行かないでください」逃げた先にも魔物がいる可能性もある、挟み撃ちなんて考えたくもない。
「っ! ……これは」
「?」先に行っていた秋山さんが急に止まり近くの岩に隠れた。
なんだ、魔物でもいたのか? と思いながらリヤカーをその場に置いて、追いつき俺も岩に隠れる。
膝を地面につけて岩から先を覗いている秋山さんと同じように覗くと「……!」魔物がいた数は数えれない、それほどに多い。
「ほう」秋山さんは興味深そうな顔で見ている。
今にも飛び込みそうなほどだ。
「逃げますよ」こんな場所に留まる理由はない、いつ魔物がこっちに気づいて襲ってくるか分からないんだから。
「……ああ、好奇心で殺されるのはまだ早いからね」
早い? いや何も言うまい。
俺たちは気づかれないように匍匐前進じみた動きをして慎重に戻った、しっかりとリヤカーも引いている。
来た道を戻ってみれば、追ってきていた数十体の魔物は数体になっていたから上手く巻けたらしい。
その数体を倒しながら移動したけど、思ったより奥まで来ていた。
事前にここらへんの地図はもらっているから大丈夫かと思ったが普通に迷った。
諦めず歩いてなんとか町に戻ってこれたが、軽く道に迷って死ぬ可能性が頭をよぎってもいた。
無事に帰れて良かった……。
その後、俺たちは長の家に行き魔物が大量にいた場所について報告した。
「なるほど。引き寄せてはいないんだな?」対面に座っている長は俺と秋山さんを交互に見て聞いてくる。
「はい。慎重に後ろを確認しながら戻りました」あの場所から離れて町に戻るまで、そういった抜かりはない。
現に町に戻ってからここまで魔物の大群が来たという情報はない。
だから大丈夫なはず。
「……報告ありがとう」
「はい。失礼しました」長の家を出る。
「お疲れ」
「ええ」結局リヤカーを引いたまま魔物からも逃げ道中で魔物と戦闘もした、よくできたなと自分でも思う。
せめて魔物の死体は有効に活用して欲しい、何にどう活用するか知らないけど。
「僕は地上に帰るよ。魔物討伐するにしろしないにしろ、できることはないからね」
そう言って集合所1近くに置いたリヤカーまで移動して、魔物の死体を乗せたリヤカーを引きながら秋山さんは去っていった。
賭場からここまで急な人だな。
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