第26話 遊び場

 どこかで見た男がいる、片方はピッケルを持っていて、2人して少年を見下ろしていた。

 危険だよな……。



 俺が一歩踏み出す前に、少年が振り向いてこっちに走ってきて俺の後ろに隠れた。手は背中に当たって、服を掴んでいて、震えているような気がする。


「おい」男の1人がこっちを睨んできた。

 何か言われる前に俺は「邪魔しました。失礼します」割り込むように言って少年の腕を掴んで去った。

 


 この入り組んだ場所をどう走ったのか自分でも覚えてないが、なんとか抜けれた。

 後ろから追ってくる感じもなかったし、まあなんとかなった。


「あっ、いた」

「黒瀬さん、なんで」たったったっと俺たちに近づいてくる。

「裏路地に入っていくのを見たっていうの子供たちから、ここ遊ぶ範囲じゃないし」情報共有速いな。


「すみませんちょっと奥に、張り切りすぎたかな」

「そうですか。無事そうだし大丈夫か」

 無事か、まあ無事だよな。



「……ごめん。あと、助けてくれてありがと」少年はぽつりと言った。なんとも気恥ずかしそうだ。


 それにしても助けたね、腕を掴んで引っ張っただけだけど。かといってここで口を挟むつもりもない「うん、どういたしまして」それだけ言って俺たちは裏路地から背を向けた。






「気になりますか?」

 少年を助けて? 裏路地から離れていくときにチラッと後ろを向いていたら黒瀬さんが話しかけてきた。


「少し。色々危険だから遊び場じゃないのかなと」治安だったり、複雑な道が理由なのかな。

 個人的にあそこに何かあるのかなと気にもなっている。


 ちなみに制限時間内に俺たちは捕まえきれなかったので、もうすでに他の子たちは広場にいるらしい。

 最初の子を捕まえてから全然捕まらなくなったから、まあそうなるだろうなとは思っていた。


 話を俺の疑問に戻そう。


「あそこは入り組んでるし遊ぶ場所として適切じゃないですから。それとあの建物もあるから子供たちに近づいて欲しくないのかな」

「あの建物?」

「後で教えます」


 その後、俺たちは広場にいる子供たちに「僕たちの勝ち」と言われて、もういい時間だからということで子供たちは帰っていた。




 そして「ここが言ってた場所か」俺は今日最後になる町散策、賭場に来ていた。




 黒瀬さんから言われた子供たちに近づいて欲しくない建物というのは、賭場だった。入口を見た感じ、ここら辺の建物の中では大きそうで、想像してたカジノみたいにギラギラした感じではないけど賭場だと分かるような外装になってる。


 確かにあまり踏み込んで欲しくない場所かもしれない、子どもが入って賭け事でもされたら嫌だろうし。



 せっかくだし入ってみようか。

 俺の手持ちで遊べるか、最低賭け金額的なものが高かったら追い出される可能性すらあるがまあせっかくだしね。



「こうなってるのか」内装はシックというか落ち着いてる印象を受ける。

 もっとこう光に輝いている的な印象なんだがそうでもない。

 洞穴でやってる隠れカジノで知る人ぞ知る的な感じだ。


 それでいて賭け事一色かと思ったが、バー的なのもあった。

 大体あるものなんだろうか? 


 これならすぐ追い出されることもないだろう。

 色々と見ようかと歩いていたら「丁か! 半か!」と威勢のいい声が響いた。

 そういう感じのもあるのか、勝手にトランプ系なのを想像していた。

 他には何があるんだろうかと見ていたら。


「丁!」ん? なんか聞き覚えがある声がするな。



 足を進めて声の主を確認してみると「あ~負けたか。おっ! 清心君、元気だった?」


「……何やってるんですか秋山さん」

「何って賭け事。やるか?」そこには微笑している秋山さんがいた。


「いえ遠慮しておきます」賭けるお金もないし。

「そうか。面白いだろうここの町、不思議が一杯あって」流れるように会話をしてくるな。


「……新鮮でした。まさかこんな場所があるなんて思いもしませんでしたよ」洞窟で岩だらけだったり、護衛やって魔物を見たり。

 まさか日常的に岩壁と魔物を見ることになるとは思わなかった。

 ずっと森の中であるかどうか分からない魔道具探したり、人探したりしていた日々が昔のようだ。

 実際はそんなに経ってないだろうけど。


「なかなか愉快な日々を送れて良かったよ」

「ええまあ。あのここで賭け事をするために来たんですか?」地上じゃできないことを考えたら、そのために来てもおかしくはないのか? そこまで賭け事をしたい人なんだろうか秋山さんは。



「いやこれはついでだよついで。うーんそうだな今日は遅い、明日話そう」あっこれたぶん俺が何かすることになるな。



 そんな予想を抱くような言葉を口にして、もういいだろうと秋山さんは店を出て俺も一緒に出た。

 結局、遊ぶことはできなかったけどそもそもお金はあまりなかったからまあいいかと思い、夕食を食べ寝た。


 町のことがよく知れた日だったなと総括してその日を終えて、次の日。


 魔物がいる場所、ダンジョンに俺は秋山さんと一緒にいた。

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