第23話 町への帰還、そして散策

 周囲を警戒してその間に出てきた魔物は5体。多いのか少ないのか分からないが怪我はしなかった。


 ただ、ボデロック相手にちょっと苦戦した。

 多少削ることはできたが、ゴブリンやスレンダー魔物みたく水斬りですぱすぱ切れなかった。

 岩というのもあるし、防御力も高そうだからな。


 ハンマーがボデロックには適切な武器ってことか。あと黒瀬さんの拳。


 水斬りの威力を制御できれば変わるかもしれないけど。


「そんなバンバン撃って疲れませんか?」黒瀬さんは水斬りを撃っている俺を見てそう尋ねてきた。バンバンというほど撃ってる感覚はないが、傍から見たらそう思うのか。


「大丈夫、なんですよ」そう俺は水斬りを何度か撃っているが疲れない。というより魔力がなくなる感覚がない。施設でやった実験でも、前に潜ったダンジョンでもそうだった。


秋山さんに言ったこともある、そのときに返ってきたのは「本来は魔力を使うけど、魔道具に蓄積されている魔力でも使っているのかもしれない」だった。

見た目よりずっとすごい魔道具なんだろう。


しばらくして護衛メンバーと採掘メンバーが集合して町に帰還することになった。今はこっちに集中しよう。



 俺たちが倒した魔物は使える素材があるから持ち帰るらしい。

 例えばゴブリンの皮やら肉、ボデロックの体にたまにある宝石なんかは使うから持ち帰る。


 リヤカーに魔物を乗せていると「最近は魔物の数も大人しくなったな」「そうか? 変わらないような気もするけどな」なんて会話が聞こえてきた。

 魔物の数、今までが分からないけど、俺が呼ばれた理由でもある。

 つい聞き耳を立ててしまった。

 まあ俺ができることをするしかない。



 乗せ終わったら、魔物やら魔石やらを乗せたリヤカーを引っ張って帰還する。

「魔物を引き連れるなよ」その言葉通り町に魔物を引き連れないよう後方をかなり警戒。

 正直、帰り道のほうが神経を使っている気がする。

 これがいわゆる帰るまでがってやつなのかもな。

 そう思いながら、無事に戦果を引っ張って門をくぐることができた。






 採掘メンバーの護衛という任務をこなして数日。

 思っていたより魔物との戦闘は少ない。

 ボデロックには少し苦戦するが、命の危険とまで言える状況になったことはない。


 それでいて誰かに閉じ込められたり俺を見張っている人がいるわけでもない生活。

 どうやっているのか知らないが上下水道なんかのインフラも整っている。

 ネットはないが、快適といえば快適な生活だ。


 1つ気になることを上げれば、あまりこの町に詳しくないということぐらいか。



 黒瀬さんに初めて会ったときに町のことを説明してもらったが体験はしてない。

 ここ数日、寝て起きて護衛をしてご飯を食べて寝てという流れが定着した。


 せっかくダンジョンというか地下空間の町。ややこしいな、魔物がいる場所がダンジョン、ここは地下空間だ。


 まあとにかく地上にない場所にいるなら色々と見て回ったほうがいいだろう。

 そう思い始めていたら、休日がやってきた。

 なんとなく年中無休かと頭の中に浮かんでいたが、そんなことはなかった。




「さてどうするか」武器庫店内を見渡しながらぽつりとつぶやく。

 実はさっきまでこの町を案内というか説明してくれる人がいた。

 長が気を使って準備してくれたらしいが、その人は口頭で説明してあとは自分の目でと言って去っていった。


 ……とりあえず店を出て歩くか。

 そう決断して席を立った。



 色々な店がある、というか明るいな。

 朝昼夜を示す光に負けない、というかその光を超えるほどの人工的な光量がある。



 1階には食事系、宿屋、でかい交換所がある。

 この交換所は言葉通り魔物や魔石なんかの、ここで取れたものを金銭と交換する場所だ。


 他所の冒険者がこの町のダンジョンで取ったもの、採掘メンバーが採掘した魔石、すべてがここに運ばれる。

 この町で取れたものは、ここの交換所以外で売ってはいけない決まりになってる。


 他所で売られたら、この町の利益はほとんどない。冒険者がここに来て寝たり食事したりしたら少しはあるんだろうが、それだと単にダンジョンを開放しているだけになるからこうなっているんだろう。


 魔物もそう強いのがいるという感じでもなかったし、間引いてもらう必要も。

 ああでも数は増えてるのか、あんまりその危機感は感じないけど。もうすでに結構倒されていそうな気がする。




 さらに見渡すと宝石もとれる町だからか、宝石を使った装飾品を取り扱っている店もあった。

 宝石の名前とか地上にある宝石との違いとか、そもそも知識がないから見ても分からなかったけど綺麗だった。

 この町にある2つの道が、魔物がいる場所と繋がっているなんて思えないな。



 地上からここに来るまでの間にも道はあったから、1つの魔道具ではなくて複数の魔道具でできた地下空間かもしれない。


 魔道具でできた町か、怖くないんだろうか。

 魔道具を取ったら地下空間は崩壊するはずだ俺が知っている限りなら。

 でも周りの人を見ている限り、四六時中怯えて暮らしているわけでもないし慣れなのかな。


 そんなことを考えながら町を散策しているといつの間にか裏路地的な入り組んだ場所にいた。



 適当に歩きすぎたかもしれない。



 左右に建物があり店なのか住宅なのかも分からないし、道は狭いし、建物は高いし。

 最悪、能力使って無理やり脱出もできなくないけど変に目立つのもな。



 どうしよう。

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