第15話 ダンジョン攻略1
ロープを掴んでゆっくりと下りる。
俺が最初に入って続けて護衛、秋山さんの順。
下り方は滑り台をすべるみたいな体勢だけどロープは背中に方にあるから下りづらい。
それでもゆっくりと確実に下に進む。
これって土、いや岩だな。
まだ深く潜ってないがこれがダンジョンなんだろう。
不思議な感覚のまま慎重に下り続ける。
ん? 足がつく。
秋山さんたちに合図して穴から出て、すぐ周りを確認する。
ロープに視線を向けて進んだら今頃、後ろ向きで穴から出ることになるからあんな体勢で進んでいた。
そしてここはすでに魔物がいる空間。油断できない。
魔物は……いないな。
秋山さんたちもすでに穴から出ていた。
洞窟みたいな見た目をしている。
地面は少し凸凹していて、見上げれば天井が見える、横幅も広く窮屈な感じはしない。
そして何よりちょうどよく明るい。
入るときの穴もほんのりと明るかった、光源らしき物はないのに。
不思議を目の当たりにしながら一応胸にあるライトをつけてみる。
ライトの光も思ったより明るい、さすが管理所が用意しただけある。
まあ目に魔力を流せば見れはするから最悪ライトはなくていいが魔力も有限だ節約できるならしよう。
それでも今はいいかなと思い、ライトは消す。
事前の資料にも書かれていたが、これが洞窟形。
ダンジョンにはいくつか種類がある、今いる洞窟のような見た目、人工物のような見た目、そして極め付きは草木があったり空が見えるようなところもあると聞いた。
完全に別の空間。
単に穴を掘ってできた空間、という考えじゃいけないんだろう。
「3層まで偵察班は行ったんですよね?」
「そうだ。僕たちはさらに奥まで行って魔道具を取ってくるのが目標だ」
「はい」ここの特徴を頭の片隅に置いて、事前に与えられた魔道具の短剣を握りしめ一歩踏み出す。
ここから本格的にダンジョン攻略を開始することになる。
周囲をしっかりと見ながら奥に進むが魔物はいない。
たとえ先に入った人たちが全滅させていたとしても魔物は時間が経てばまた出てくるらしいから油断はできない。
どこから来るか分からない魔物に備えるために上下左右を見ていると「あれは」奥に何かいる。
後ろの2人に合図して近くの岩に隠れ確認する、魔物だな。
ポツリと1体いる、若干猫背気味、二足歩行でふらふらしている。
恐らくゴブリンと呼ばれる魔物のはず、武器は持っていない。
武器持ちが多いと聞いたけど、どっかに置いてきたのか?
倒すべきだよな、無視して突っ込むという手もあるがこの先もたぶんいる。
俺は岩から体を出し近づこうとすると、ゴブリンが反応して走ってきた。
水斬りナイフをしっかりと持つ。
1体のみなら水斬りは使わなくてもいいだろう暴発も怖い、それに確認したいこともある。
魔物の周りを見て1体だと確認してその場で待つ。
徐々にゴブリンとの距離が近くなり。
「ギャッ!」ブンッ! 雄叫びと共に腕を振ってきたが下がって難なく回避。
腕めがけて鞘付きの短剣を勢いよく振る。
ゴブリンの片腕がありえない方向に曲がった。
曲げられた腕に困惑しているところを一気に接近して首めがけて短剣を振る。
短剣から腕に衝撃が伝わり、ゴブリンが壁に激突した。
起き上がる前に駆け寄って追撃を加え動かなくなった。
あっさりとした初戦。
浅いほど魔物は弱いと秋山さんから聞いていたが鞘をつけたまま倒せた。
俺は怪我もしていない。
でも気は抜かないようにしよう。
「どうだった清心君?」
「……怖かったですよ」気の利いた返答はできなかった。
実際、恐怖はあったから仕方ない。
それはゴブリンも同じか、と思い視線をさっき倒したゴブリンに向けてみる。
糸が切れた人形のようにだらんとしているゴブリンがいた。
「倒されてるね」後ろから足音が聞こえ、すぐに秋山さんがゴブリンの近くに寄ってきた。
興味深そうに見ている。
秋山さんまさか能力使ってこっちに来たんじゃないだろうな?
すると護衛もすぐにこっちに向かってきて秋山さんの近くに立った。
この人も大変なことをやらされている。
いやこっちも警戒しないとな。
ダンジョンは倒しても倒してもいつの間にか魔物が湧いてくる。
立ち止まったら警戒し続けないといけないし倒し続けないといけない。
「先に進みます」魔物を倒したのが分かったなら立ち止まる理由はない。
「だな。その鞘も魔物相手に有効だと分かったし」そう水斬りを使わなかった理由の一つにこの鞘の効果を確かめることもあった。
魔物を倒すのに普通の武器じゃ効きにくいらしく、魔力が込められている武器のほうが、効果が高いらしい。
施設で訓練しているときにこの鞘自体も魔物に有効かもしれないと分かったからその確認でもあった。
まあ水斬りを使えなくさせている鞘だし普通のではないのだろうなと思っていたから驚きはしない。
「ダンジョンって魔道具必須の場所ですね」魔道具ぐらいしか魔力が込められた物はないだろうと思っての言葉だったんだけど。
「魔道具の代替として魔石が混じった武器がある」
「そんなのがあるんですか?」
「ある。今はないけど」まあ準備してたらここに来る前に教えられるか。
ないならこれ以上この話は不要だな。
護衛の人をチラッと見て先に行く合図をしてから進んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます