第13話 準備
ダンジョン、聞いたことはある。
なんなら森の中を歩き回って探したこともある、懐かしい。
渋谷班長や園田は今どうしているだろうか、俺がいなくなったから人数的に厳しそうな気がする。
「知ってるだろダンジョンは」
「あ、はい」心のなかで懐かしい気持ちと渋谷班の安全を願っていた、いけないこっちに集中しないと。
「テストをしよう、ダンジョンとは何だ?」
「魔道具が作った空間、中には魔物がいるですよね」
「そうだ、清心君にはそこに入ってもらう」なるほどそれが次の実験か。
入ったことはない、それを探すことを今までやってきた。
そんな未経験な俺を入れる。これは魔道具実験の一環なんだろうか。
目的は実用性とかだろうか? 一応それなりの威力があるのはアジト制圧の報告で分かっているはずだ。
なら魔物相手にどれだけ効くかを知るためだろうか。
俺に務まるだろうか……中の情報なんて噂で聞いたくらい。
さすがに、事前に教えてはくれるだろうけど。
「今までしっかりと訓練してきた成果を出せば良い」確かに体動かしたりとかしてきたけど、もしかして。
「このことって前々から決まってたんですか?」
「戦える人材にはしようって人たちもいるから、そうとも言えるな」
なるほど、俺を巡って色々な議論があったらしいしその色々な人の思惑を汲んだ結果、急に襲われたりダンジョンに行くってことになったのか。
いい気分はしないな、モヤモヤするというか上から糸で操られているように感じてしまう。
そういう意味では俺が最初に危惧した人の体が前についた実験をさせられているのだろう(もしくはモルモット)。
「不満か?」
「それは……まあ」
「いい結果を出せば今よりはいい状況にはなるはずだ」秋山さんの言う不満が、俺の感じている不満と一致しているかどうかはさておいて。
いい状況、俺にとってのいい状況とはどういうものか。
……とりあえずあの部屋から出ることだろう、広さはこの際置いておくとして部屋の扉を自由に開閉できないのはこうくるものがある。
せめて自由に扉を開閉したい。
よし! そうだな結果を出してあの部屋を出る、当面の目標だな。
「実際に結果云々で待遇が変わるかどうか保証はしないが、ん? なんだ何か言いたそうだな」
「……いえ」人がせっかくやる気を出したのにすぐ落としてきた。
いや言ってることは分かる。要は俺が危険と思われているからこうなっているのであって、その危険が払拭されることと結果を出すことはイコールじゃないってことだろう。
でも何もしないよりはましだ。
「それじゃ、ダンジョンと魔物について教えようじゃないか」こうしてダンジョン攻略に向けて俺たちは動き出した。
俺たちは施設の班が見つけたダンジョンに潜ることになる。
これがどういうことかというと、一般人に見つかる可能性がある場所に位置するから長く放置するわけにはいかないということ。
準備にかける時間はない。
その限られた時間で俺は秋山さんから魔物などの説明を聞いて、残りの時間で訓練をすることになった。
「ぜひ魔道具がある奥まで行ってほしいね、面白いよ。異様で微音で無人。無人より無魔物って言ったほうがいいか。あくまで僕が知っている限りだけど」
なんて秋山さんは言うけど、奥に行くのは簡単じゃない。
道中で跋扈している魔物を倒すか素通りするかしないと奥には行けない。
ここで魔物と戦うことはできないから、ダンジョン初めての実戦ということになる。
不安はある、死ぬ可能性だってある、それでもやるしかない。
背中を押されているから行くしかないというのもあるが、でもそれだけじゃない。
入ってみたいという思いもある、これは……好奇心もしくはあの魔道具をもう一度使ってみたいのかもしれない実戦で。
単純に、死ぬかもしれないせっかくなら楽しんで入ろうと思っているだけかもしれない。
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