第9話 説明
扉は開けられ、男たちに付いていく。
周りを見ると、前に2人後ろに1人いる。3人の内、俺を挟んでいる2人は警棒を携帯している。
たぶん2人は監視だろうけど、一番前の人はなんだ? 考えながら人以外も見る。
俺がいた部屋と似たような部屋がいくつかある、やっぱり牢屋的な場所だったのだろうか。
「安心しろ清心君を閉じ込めた理由についても話す、まあ大したことじゃない」
「俺が危険だからですか?」
「一言で片付けるならそうだ、それに付け加えて色々な憶測が飛び交った結果ともいえる。僕は2人の監視を付けるほど危険だと思えないけど」ニヤリと俺を見て口角が上がった、バカにしたような笑顔だ。
「あのときはちょっと体動かしてて運動してたんです」
「……ああ、それで怪我か。いや何もうちょっとクールな人だと聞いていてね……納得したよ」少し間があったな。
バカにしているとまではいかないかもだけど、間違いなく彼が聞いていたクールな清心とやらは消えたはずだ。まああんな間抜けなとこ見たら誰だってそうなるか。
「誰から聞いたんですか。そのクールって」
「色々な人から、君と話すために情報を仕入れてきたんだから。じゃここに座って話そうか」牢屋みたいな場所から足を進めていたらいつの間にか着いたらしい。
場所は開けていて椅子と机があり俺たち以外にも人がいる。
視線を感じながらも椅子に座る。
対面にさっきまで話していた男性、その横にさっきから一言も発していない監視という配置。
「秘密の話はできないけどいいよね?」
「するつもりもないです」
「そうか、ならまず自己紹介。僕は
「……
「清心君だね、ここで何をやっていたかは大体分かるとして。色々と聞いているよ、なかなか壮絶な人生を送っているようで」
「まあ、はい」
「村で起きた事件を生き延びて、魔法管理所で治療を受けて、仕事をしていたら今に至ると」
「まあ大体そんな感じです」色々と端折ってはいるけど間違ってない。本当なんでこんな今になってしまったのか。
「ところで清心君が魔道具を手にしたときどう感じた?」今までの会話より食い気味で聞いてくる。
「一応、報告書などで何度か伝えたんですけど」
「直接聞きたい」
「分かりました」まあ何回書いていいと思っていたし大した手間じゃない。もう一度アジト制圧のときを頭に浮かべながら話す。
さっきまで秋山さんに感じていた軽さは薄れ、しっかりと俺の話を聞いていた。もう何度か頭の中で考えたりしたからか、結構スムーズに話せた気がする。
「なるほど。どれだけ魔道具や魔法、能力について知っている?」
「魔道具と魔法はほとんど知りません。能力は魔力を使って身体強化ができる程度なら」
「なら教えてあげよう、今の君なら知っていて損はない。最初に魔道具、率直にどんな物だと思う?」
どんな物か。魔法使いが作ったもので、ダンジョンを作る、魔法などを使える、あとは一般人が触れば能力者になる可能性がある、という知っていることを話した。
「うんうん、それが全部か。魔道具っていうのは作った魔法使いの目的のために頑張ったら力を貸してもらえるものだ」
「目的? 貸す?」
「そうだね、例を挙げるなら。世界征服したい魔法使いがいるとすれば、そいつが作った魔道具を手に入れて世界征服を手伝ったら力が発揮される的な感じかな。まあ雑な例だ、必ずしもそうとは限らない。目的もそれぞれだし、そもそも死んでいる魔法使いの魔道具もある。魔法使いが死んでいても魔道具は力を貸してもらえるけどね」
「……要するに、魔道具を持って魔法使いの目的とやらを手伝うと力を貸してもらえる?」まるで魔法使いの手下だな。
魔法管理所で魔道具を持っている人たちも何かしらの目的を手伝っているのだろうか?
「魔道具を持った人いわく、なんとなく作りての魔法使いがして欲しいことが分かるらしい。なんか悪魔との契約っぽいだろ、ただ強制力はない。あくまでなんとなく分かるだけ」
「してほしいこと……」俺が持ったとき分かる感覚はあっただろうか? ないような気がする。力がみなぎる感覚はあったけど。
「それに魔道具自体もそれなりに強い、目的なんか無視して使っている場合もある。それに魔法の被害を防ぎたいなんて目的を持っている魔法使いがどれだけいるか。魔法管理所のお偉い人もそんな目的で行動しているかどうか」
「ここでその発言は」人がいる場所でその言葉は危ないだろう。ただでさえ牢屋みたいな場所にいたんだ戻りたくない。
「ふっ、すまん。ともかく魔道具を使うには魔法使いの考えが重要だと知ればいい」
「そうですか。あのところでなんで俺は閉じ込められたんですか?」気になっていたことを尋ねる。
「なんせ未知の魔道具ですぐに魔法を使えた。魔法使いと似た思想だから? 元から隠し持っていたから? 清心君は魔法使いだったから? なんて憶測が飛び交った結果、閉じ込められた」なんという、~から憶測。
仮に魔法使いだったらもうちょっと強くあって欲しい、最後ふらっふらっだった。
「一応言っておきますけど本当に俺はあの場で短剣、魔道具を拾いましたからね」
「確認のしようがない。それに魔道具を早く使えたって事実もある、なかなかいないからね」
「くっ」これはなんだ、そういうことにされるのか。元から持っていたという憶測が事実に変わらされるのか? その場合は俺をどうするんだ、隠蔽したから死?
いやでも出れたからな……365日強制労働? 何にしろ管理所側にとって都合の良い解釈をされるのは確実なんだろな。
「清心君、君はどんな考えを持っている?」なんだその質問は?
「それは……」どんな考えか。漠然とし過ぎている、答えようがない。
「ここの理念をどう思っている。能力などの被害をなくして一般人の平和云々っていうやつ」
「……難しいでしょうけど理念は間違ってないと思います」
「なら、人を助けるのは好きかい?」
「それは……分かりません」好きかと問われれば分からない。施設に来て、人のためだと言われて、俺も人が死ぬのは見たくなくて、でも好きと言うのは違う気がする。
「なるほど。まあともかく、なんで魔道具の力を使えているのかを知るためにも実験に協力して欲しい」
「実験?」聞きようによっては穏やかじゃない単語だ、特に人の体が前につくようなら。
「実験は大げさだったかな、怖いことはしない単純に力を知りたい」そう言ってその実験について詳しく教えてもらった。話を聞く限りだと体をいじくられる的なことはなく、単純に魔道具を持っているときと持っていないときの身体能力を調べたり、戦闘をしたりする。
戦闘という部分が気になるけど、やることは単純だ。
「まあそれが嫌なら、魔道具なんて捨てて前といつも通りに暮せばいいけど。どうする?」捨てるなんてできるんだろうか?
でも、捨てていつも通り暮らすか。短剣を持っていた手のひらを見る、開いて閉じて。
あの感覚はまだ覚えている。
「……分かりました。実験に協力します」
「よかったよ、捨てるなんて言われなくて。まあ言われても、たぶんできないだろうけど」
結局、拒否権なんてものは俺になかった。これで無理に断ったところでまた閉じ込められるだけだろう。
それに、あの魔道具の力は興味がある。
「清心君は今後僕の監視下にある、勝手な行動はしないように」秋山さんは少し含みを持って笑った。
「秋山さんの監視下ということは、大内班、前の班からは出るんですよね?」
秋山さんは頷いた。だろうな、分かっていたことだ。
挨拶ぐらいはしたいなと思って聞いたが今は無理らしい、仕方ない。
まあ同じ建物内にいるんだ会う機会はたぶんあるだろう。
「よし! 話は終わり、せっかくだシャワーを浴びたらいい。少し臭うよ」
「……はい」運動をしていたから汗臭いのは当たり前なんだけど、こう人に言われるとくるものがあるな。
やっぱり激しい運動は控えるべきだったか。
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