第3話 森の捜索

 前回の任務の影響で、俺たちは徒歩で魔道具を探すことになった。片手に魔力を感知する方位磁石っぽい物を持ちながら。ちなみにここは周囲見渡しても木ぐらいしかない森だから本物の方位磁石や地図もある、他の捜索班とすれ違うこともあるから迷うことはない。



 そして1時間ほど歩いていたら木がなくなって開けた場所に出た。

「辺鄙な場所に家を建てるな」園田の言う通り、便利とは思えない場所にポツンと家が建っていた。


「いわく魔法使いの家だと」と噂されているのを聞いた。真実かどうかは分からない。

「魔法使いって言われると雰囲気ある、ように見えてくるな」


 その家は、2階建ての木造でそこまで大きくなくむしろ小さいぐらい、それでいて長い間放置されていたのが分かる外見。ガラスも割れてる。

 まずは家の周囲を見る。


「もうちょっと大きかったら殺人事件でも起きそう」

「何のことだ」

「定番っていうやつだ」園田の言葉を聞き流しながら、建物に近づく。この建物も捜索対象だ。

「ダンジョンができてたらどうする、入ってみるか?」

「魔物に襲われて終わりだと思うけど」


 ダンジョン、魔道具を放置しているとできる空間で中に魔物がいる。入り口の見た目はダンジョンごとに違い、内部の大きさや見た目も違くてその奥に魔道具があると。


 入ったことないからこれぐらいしか分からないけど、危険だというのは分かる。だから俺たちは必死こいて魔道具を探している。ダンジョンを作って、能力者も生まれる魔道具を。




「その方位磁石で分かるのかいつも不思議に思うよ」

「魔力を感知する道具だからな、ダンジョン付近は魔力が溜まっているから反応する」実際これで魔道具とかダンジョンも見つけたことがある。といっても反応したらすぐに連絡して回収や偵察は別の人たちがやるから見つけたという実感はあまりない。


「なら見つけたら素直に報告するか、魔物が外に出たら大変だ」魔物が外に出るなんて話は聞いたことないけど、あったら一大事もんだな。

「聞いたこと無いけどね。よし入るか」そんな話をしながらも建物の周りをしっかりと調べ終わってから扉に手をかける。


 年月を思わせる扉がキィという音を出しながら開く、鍵はかかってない。まだ太陽はあるのに中は薄暗い、胸につけたライトを光らせほこりっぽい建物に足を踏み入れる。ハンズフリーのライトだ、これで魔道具感知の道具を持っていても片手が空いている、便利だね。


「ごほっごほっ。何年放置されてんだ」園田がほこりを遠ざけるように腕を振るっている。

「本当にな」

 床を見ればほこりは積もっているし、壁はボロボロだしいつ崩れてもおかしくない。

「なんで取り壊さないんだ?」

「時間とお金がかかるからとか」


 わざわざ壊す必要はないんだろう。危険ではあるけど能力とかに関係しないと分かれば基本管理所は介入しない。

 あと、魔法使いの家かもしれないって線もあるな、どこかに隠された通路があると思って壊してないのかもしれない。


 とりあえず1階2階と調べてみるけど「安全だな」魔道具もダンジョンも見つからなかった。

「不満か」

 園田からしたら不完全燃焼かもしれない。


「ちょっとだけファンタジーを感じたかったのは本音だけど……安全に越したことはない」


 前回の刺激が強すぎた、普段俺たちはあんな危険にさらされることは少ない。今回みたいな魔道具やダンジョンの捜索をすることが多い。

 能力者を追いかけることもあるが、魔道具持ちじゃないしそこまで強くもない。前回がイレギュラーだった。


 安全に越したことはないと思い家を出て森の捜索に戻った。



「なあ、このまま逃げたらどうなるだろうな」園田はキョロキョロと辺りを見ながら聞いてくる。

「捕まるか、そうでなくても隠れて暮らさないと」

「そうだよな」どこまでも平坦な声が返ってきた。逃げるか……逃げたところでだよな。



 結果だけ言えばその日、というよりその後も魔道具やダンジョンが見つかることはなく捜索は終わった。少し肩透かし感があるが、もしかしてを危惧しての捜索だったから問題がないならそれに越したことはない。


 だけどこれが嵐の前の静けさだと気づくのはもう少し経ってからだった。

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