第4話 抗えぬ運命

 目の前で起こった不思議な出来事にしばらく私たちは呆然としていた。


「なんだよ、そういうからくりかよ」

 不意に金髪男がニヤリと笑って角刈りおじさんを挑発する。


「見るからにモテ要素なしのおっさんには条件悪いかもな。俺は女たちが寂しがって今ごろ泣いてるだろうからよ、さっさとあっちに戻ることにするわ」


 金髪男はそう言うと、スタスタとシャワールームに入っていきコックをひねった。


 その途端、降り注いだのは周波数の合わないラジオのような不快な雑音ノイズ


「あのタラシ、死んだんだって!」

「バチが当たったのよ。三股とか、気づかないとでも思ってんの?」

「消えてくれてラッキーじゃん!」


 嘲るような女たちの笑い声を頭から浴びた金髪男が、突然叫びだした。


「なっ、何だこりゃあ!!」


 シャワーを浴びたところから、金髪男の体が崩れていく。


「うわぁぁぁぁっっ!!」

 断末魔の叫び声を上げながら、金髪男の体は熱湯を注いだ角砂糖のようにみるみる溶け出した。


「やめろ、死にたくない! 助け……」

ゴプゴプと渦を巻く流水に飲まれながら、金髪男は排水口へと流されていった。 


「やれやれ。彼は誰からも待たれていなかったようですね」

 イチルはそう言うと、排水口に侮蔑の視線を投げた。


「主は気まぐれでこの部屋を作っておきながら運命が変わらないと不機嫌になるんです。全く、勘弁してほしいですよね」

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