第18話遠距離2年目は色々ありまして
彼とはそれまでも会う約束をしたい時だけ連絡を取りあっていたので(それでも向こうからは滅多にかかってこなかったけど)
遠距離になったからと言って連絡をしょっちゅう取ることもなく
月に2回程度こっちに帰ってきた時彼の家に行くようになった
それでも晩御飯を2人で食べてゆっくりとした時間を過ごすまもなく彼が寝たのを見届けて家に帰っていた
翌日どうしても早くでなければいけない時は泊めてもらうのだが早めに寝てしまわないとなかなか寝させてくれないのだ
たとえ夜素っ気なく過ごしても朝起きるとすぐに求められてしまう
スーパーでの配置換えや長女の高校卒業次女の中学卒業など目まぐるしく日々が過ぎていく
中学校ではPTAの役員を引き受ける羽目になってしまう
けれど肝心の三女が学校へ行けなくなってしまう
担任に言ってみても暖簾に腕押しそれどころか逆に娘を追い込む結果になってしまった
2ヶ月ほぼ毎朝学校に休み連絡を入れていたが担任の対応に疑問を感じ始め連絡も入れなくなってしまった
そんな年の秋
実の弟の事故死
1週間前に父と話をして帰ったと聞いていたのに
変わり果てた姿の弟を見て言葉も出なかった
残された妻子たちの事を考えると泣いてばかりはいられない
仕事中の事故だったため葬儀の後も義理の妹の所へ何度か話を聞きに行く事になった
四十九日の法要が終わり実家の近くの納骨堂が完成するのを待ってそこに納骨する事になった
半年後義理の妹は免許を取って娘たちと車で実家を訪ねてきた
彼女のがんばりにエールを送るしかない
三女の気持ちが変わり始めたのはそれからしばらくしてだった
それでもなかなか学校に行くことはできなかったけれど
心配してくれた中学の校長先生のおかげで支援教室に週一回通うことになった
支援員の先生も時々彼女を連れ出して話を色々聞いてくれたのも良かったみたいだ
私は健康診断の度に指摘される貧血がさらに酷くなり時々脳貧血を起こすようになってしまった
元々病院嫌いで本当は行きたくなかったのを妹に無理やり引っ張っていかれ渋々内科を受診した
胃カメラまでのんで調べて貰ったけど胃は綺麗だねと太鼓判をもらう
それではと内科の先生から婦人科に行くように勧められ後日受診
血液検査にエコーなどの検査の結果子宮内膜症のせいで子宮が肥大しているらしいことがわかった
このまま貧血が治らないようなら摘出手術も有ると言われた
様子見で鉄剤の服用から始めることになった
その結果を聞いた日
彼にメールで
「私にもし子宮が無くなっても今まで通り付き合ってくれますか?」
と送ってしまった
彼からはなんの音沙汰もなかった
いつもの事だ
彼からメールが帰ってくることはないのだから
夜更けに突然鳴り響く電話のベル
「もしもし」
「健輔だけど、もしかして癌だったの?」
「ううん違うけど」
「もし君の子宮が無くなっても今までも一緒だよ」
「ありがとう」声にならなかった
ひとしきり泣いた後週末帰るから会おうって話になった
季節は秋を迎えていた
付き合い初めて12年が過ぎて行った
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