第14話元旦那が亡くなりました
長女が高校、次女が中学へ
w卒業式w入学式でバタバタと3月、4月が過ぎて行った
5月の連休1日位休めると良いなと思いながら通勤していたある朝
どこかで見たトラックが国道脇に止まっていた
運転席にいた人もチラッと見ただけだが元旦那だったような気がする
気のせいかな?
ちょうどその前日から長女は宿泊学習の為遠方の宿泊施設へ行っていたから今朝はこの道を通ることは無い
嫌な予感がした
ゴールデンウィークも休みがなくなって久しい💦
忙しく仕事をしていると私を訪ねて来た人がいた
元旦那の甥っ子だった
「芽茄さんですか?お久しぶりです」
「真司郎君お久しぶりです」
「進太郎おじさんが亡くなりました」
「家に引き取ってくるのでもし良ければ会いに来てやって欲しいと母が言ってました」
「いやそれは・・・」
「自殺だったんです。子供たちに会いたいと遺書に書いてあって」
「ちょっと考えさせてください」
甥っ子の真司郎君は帰って行った
慌てた私は家に電話した
「進太郎さんが亡くなったらしいの、一応顔を出そうと思うので子供たちに制服着せて待たせといて」
「もう離婚して何年経つと思ってるんだ❓そこまでする必要は無いだろう」父が言う
確かにそうだ
別れている間ただの1度も子供たちの事を訪ねて来たわけでもない
ただこのまま子供たちに父親のことを知らせない訳にはいかないだろう
彼にも電話した
「別れた主人が亡くなったらしいの。子供たちを連れてお別れに行こうと思うんだけど…」
「俺はもう離婚してるんだから行かない方が良いと思うけど、それで気が済むなら行っておいで」
仕事を1時間ほど早く上がらせてもらい家に帰宅すると着替えて娘達を義理の姉の家に連れて行く
家には甥っ子のお嫁さんと子供がいた
自己紹介をすると話を聞いていたらしくすぐ部屋に通してくれた
遺体は普通に部屋に寝かせてあって用から帰ってきた義理の姉が
葬式はしない事
明日すぐ火葬だけしてもらうこと
義母の葬儀は地区の方に手伝ってもらって何とか出せたけど元旦那の葬儀に関しては手伝えないと言われたから読経だけあげてもらうと話してくれた
そしてなぐり書きの遺書らしい紙を見せてもらった
それは会社に対しての恨み言ばかりで
下の方に申し訳程度に子供たちと私の名前を書き会いたかったと
借金返済で悩んでいて住む家も無くし同僚の家に転がり込んだうえで色々問題を起こし会社を辞めると言い残して会社の倉庫で首を吊ったらしい
どこまで人に迷惑をかける人なんだろ
全て自分の身から出た錆なのに
悔しくて涙が出た
父親を覚えてない下の2人は黙っていたが長女は泣いていた
彼女も悔しかった
どこかでいつか迎えに来てくれると信じていたらしい
私が山基の姓のままでいたことで義理の姉は
「貴女にまだ進太郎を思う気持ちがあったのなら戻ってきて欲しかった」
私は何も言わなかった
義理の姉は耳が聞こえない
なぜ山基のまま旧姓に戻さなかったのか大きな声で説明したくなかった
義理の姉も離婚している身だからわかってくれていると思っていたが傍から見たらそう思われるんだと悲しかった
明日は来れない事を告げて子供たちを連れて帰る
長女はしばらくの間車の中でもしゃくりあげていたがお腹すいたから途中のコンビニでおむすびを買って渡すとパクパク食べ始めた
「お母さん大変だったね」
「もう私悔しくて悔しくて」
「お父さんほんとに情けない人だったんだね」
次女と三女が口を開く
「お父さん生きてたんだね。もう死んでるんだと思ったよ」
「あれがお父さんだったんだね」
それ以上は誰も言わなかった
その後借金返済の電話が義理の姉のところにひっきりなしにかかってきたり督促状が届くから財産放棄したいと相談に行った義理の姉から娘達が先に財産放棄してくれないとこちらができないからと泣きつかれてしまった
裁判所に行き必要な書類を教えてもらい市役所に行ってそれらの書類などを取り揃え手続きを済ませた
数週間後財産放棄を認められたという書類が帰ってきた
その旨を義理の姉に手紙で知らせ無事姉達も財産放棄の手続きができたらしい
3ヶ月後納骨をするから来れれば来て欲しいと義理の姉から言われたが私は行かなかった
娘たちも行かなくて良いと行ってくれたし
私と大仏さんの間にあった見えない壁が壊れたと気がついたのもこの事があってからだ
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