第8話ポケットベルが鳴らなくて…でも鳴りすぎるのも困りもんで

大仏さんは仕事で必要だからと携帯電話とポケットベルを持っていた

だから両方の電話番号を教えてもらっていた

私から電話をすることはほとんどなかったけれど電話しようと思ったら家からか職場の前の公衆電話から連絡を取るしかなくて

ついつい待ち合わせは彼が営業でお店にくる日が多くなっていた



私もポケットベル持つかな〜

そうしたら大仏さんが電話欲しい時に鳴らしてくれたら折り返し電話できるし

とポケットベルを買うことにした

まぁ買ってみたもののあまり長い間持つこともなかったんだけど

バイトの子に暗号分のような数字のメッセージの読み解き方を習ったりしたけど相手に通じないので結局使えなかった

(あれはおっさんとおばさんが使うもんじゃありませんな)


ポケットベル長い間使わなかったのは新聞に載っていた懸賞で携帯電話が当たって携帯の契約をする事になったから(契約事務手数料だけ自己負担)


でもしばらくの間は職場の近辺でしか使えなかったから少し不便だった

家族には用があっても職場にかけて呼び出して貰うことがなくなったって喜ばれた


少しづつアンテナが整備されて家の中にいて電波が3本立つとめっちゃ嬉しかったな


携帯を持ったことで連絡は取りやすくなったけどこっちから電話をかけることが多くなった


それはそれでなんだかなー

腑に落ちない

惚れた弱み?


大仏さんと付き合い始めて初めての自分の誕生日が1ヶ月後に迫った頃職場に私を訪ねて来た人がいた


話を聞いて以前息子の嫁に来て欲しいと家を訪ねて来た人だとわかった

手紙を出してから半年位経っていたので忘れていた


その方は体調を崩されていたそうで連絡ができなくて申し訳無いと恐縮されていたが、ぜひ息子とあって欲しいと頼まれてしまった

「今お付き合いを始めた方がいて出来ればお会いしない方が良いと思うんですけど」とやんわり断ろうとしたが

「まだその方と再婚を決めていないのならまだ考える余地はあるはずだから1度会ってみるだけでも」

なんだかんだと押し切られて店の前で待ち合わせをすることになった


その人との待ち合わせの前に大仏さんに会うことになった

ドライブして人気の無いグランドのベンチに座って話をした

大仏さんと付き合う前にお見合いの話が来ていた事

その人と数日後に会うことになった事

私は出来れば断ろうと思っていること

でも全てを話した後彼から告げられたのは


「うん、やっぱり芽茄ちゃんは子供たちの為に再婚した方が幸せだと思う。俺じゃ芽茄ちゃんを幸せにしてあげれないよ。もう会わない方が良いね」


そう言って優しく抱き寄せた


それってすごく卑怯だと思う

でも結婚したいって気持ちが心の奥底にある以上私は彼とは一緒に居続ける事は無理なのかな

もう涙が溢れて止まらない

呆気なく終わった

やっぱりちゃんと断れば良かったと後悔しても遅かった


別れを決めた2日後大仏さんがお店に営業で来ていた


全然顔を合わせようとしない

もうほんとに別れるんだと泣きそうになった



1週間後お見合い相手と会った

悪い人では無い

お互いの話をして気に入って貰ったらしい

子供たちともその2日後に会ってくれた

一緒に動物園に行った

ただ動物が臭いとしきりにこぼしていたのは少し違和感を感じたが子供たちはお菓子を買ってもらったりしてそれなりに喜んでいた


それにいきなり会って2日目で「芽茄」って呼び捨てされるのもなんだか違う

とモヤモヤしていた


そのモヤモヤが爆発に変わるのはそんなに時間もかからなかった


その人からは毎日電話がかかってきた

仕事中だろうがお構い無しだ

「いつ家に来てくれる?」

「早く結婚しよう」の連発に電話に出る事も怖くなった

携帯電話にでなければポケットベルに連絡するようにメッセージが入る


1週間後には職場まで訪ねてきた

もう我慢出来なかった

「もう来ないでください

あなたとは結婚できません」

それを言うのが精一杯だった


プレゼントされた指輪も送り返した



誕生日が過ぎた

恐る恐る大仏さんに連絡をとってみた

「芽茄ちゃん?どうしたの?電話してきちゃダメだろ」

「ごめんなさい。どうしても会いたくて」

その日すぐあってくれることになった

車に乗り込むと「悪い子だ。こんな事して」そっと手を握る


ほんとに悪い女だ

彼を試すような事をした罰だと思った


HOTELにつくと黙って抱きしめられた

「ごめんなさい」それしか出てこない

今まで以上に熱く求められた

「いいの?後悔しないね❓」

黙って頷く

「そうか」

あとは何も言わなかった

彼を深く受け入れて熱い波に身体を預ける

彼の身体の重みを感じながらウトウトしていると不意に

「誕生日過ぎちゃったね。ごめん会えるって思ってなかったからプレゼント用意できなくて」

「ううん。会えただけで十分」


ポケットベルが数度鳴っていたらしい

入っていた電話番号を確認して

ポケットベルは解約しよう再確認した


1度目の危機が通り過ぎて行った













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