第9話 青いノートは空洞のよう

〈少し明るい洞窟にて〉


リッキーもヴルサもブルーノートの頭に銃を突きつける緊迫した状況。当たり前だ。怪しさmaxだからな。


「何の用だ?」


「──特に。ここで凍え死んでしまうのは見ていられんからな」


前のようなノイズは無く、仮面も被っていない。しかしその声は紛れもなくブルーノートである。

見えている顔は黒髪でセンター分け。そしてハイライトすらない黒の瞳。そして服装は茶色いコートとブーツに中のシャツは白いTシャツ。首からぶら下げているアクセサリーは結構特徴的だった


彼は何一つ表情を動かさず眉も動かさない。まるでそこにが立っているかのような感じだ。


実際存在感も感じられない。そもそも人と話しているのか?という感覚。何とも奇妙だ。


「敵意は無い。銃を下ろせ」


「リッキー、ヴルサ」


俺が2人に声をかけて銃を下ろしてもらう。それでも緊張感は解けず、疑問に感じていた事を彼に問いただす。


「疑問に感じていたがサンクシンを殺したのはアンタか?」


「ああ、俺だ」


やはり無機質な声で返事をする。全員が驚いて何故殺したのか問いただしても答えられないの一点張りのみ。


答えられない質問と答えられる質問があるようでとりあえず俺は質問する。


「そういえば前会った時仮面をつけていなかったか?」


「ああ、この仮面の事か」


そう言ってブルーノートはポケットから前見たのと同じ仮面を取り出した。その仮面は白い仮面で黒の眼の部分が2つあるのみ。眼の付近はひび割れていたが。


「ここでは大丈夫だが、あの国ではの範囲内だった」


「だからこれを付ける必要がある。そうすれば


見るだけでも禍々しい仮面。ノイズ混じりで俺たちに現れたのはその仮面をつけていたからなのだという。


その仮面の性質は不明でただただ表現出来る言葉は不気味。ただひたすらに不気味だった。


見た目ではなく、本能的に。


「あまりにも不気味だ……!少し隠してくれないか……?」


ヴルサも何か怯えていてそれを察したリッキーが隠すように指示する。それを受けてブルーノートは「すまない」と少し謝ったあと仮面を隠した。


そうして彼が仮面を隠すと禍々しいオーラは消えた。制御出来る何かがあるのだろうか?


「話を変えるが──」


「今からメルテスに向かうそうだな」


「待てよ、何故それをお前が知って────」


ヴルサもリッキーも俺も全員が疑問を生やす。先程の会話で出していないのに彼は知っている。そもそもまだ誰にも話してないはずだ。

それを何故────


「所長との対談でいくつか数字が出てくる。そして6を選べ。それがお前の運命の分岐点だ」


「……6?」


俺の疑問さえスルーしてよく分からないことを言ってくる。でも前助けてくれたことは事実だし、信用出来る人なのだろうか……?


敵ならばどうせあそこで見過ごしてただろうし味方なんだろう、きっと。


「これから過酷な冒険がお前を待っているだろうが、頑張ればいい」


そう言ってブルーノートはそろそろ出るかのように外へ緩やかに歩き出し、俺が"待て!さっきの話何故お前が知ってるんだ!?"と止めようとしたがそれさえ無視して洞窟の外に出る。


最後に彼は無機質な顔をこちらに振り向かせて何かを言おうと唇を動かして言い始める前に吹雪に包まれてどこかへと消えた。


「消えた……?何だったんだあの野郎……」


「ね。ずっと無表情で何を考えてるか分からなかったし、こっちの質問もあんまり答えてくれなかったし」


彼が出てから少し風が強まった気がして考察を後にして俺たちは洞窟を出た。


「これから吹雪が来る可能性なんて十分ある。急ごう」


ブルーノートから防寒具一式を貰ったけどもうちょい強まるとさすがに死にそうって感じの吹雪だからな。早くこっから出るしかない。


しかも見事その予想は当たりで俺たちが雪の山道を降りている頃には吹雪が凄いことになっていた。凄いことになった時にはもう少しだった為乗り越えられたが。


「あともう少し……だな」


雪山を乗り越えた先には針葉樹の森林地帯があってその森林地帯の先にメルテスがあるのだという。


俺たちは休憩しながらメルテスへと向かう。


木々の樹海を潜り抜け、川を通り、休息をとる。


そして時には雑談をしたり。


ヴルサとリッキーと出会ってから1週間以上は立っているがこの出会いには感謝している。


最初会った時からツンツンだったヴルサも次第に打ち解けてきて今ではもう雑談をする仲だ。


お互いの過去の事だったり色々ね。


「そういえばアランがスラムにいた時って両親と暮らしてなかったの?」


「そうだな、一人暮らし」


「へー、じゃあ両親って今どこに?」


「あー……俺を置いてどっかに行った」


「なっ!?」


驚くのも無理は無い。それに俺もなんで両親が置いてったのかも分からない。ただうっすらと記憶があるのみだ。顔も覚えていない。


しかし、両親との最後はおぼえている。


たまに夢でも見るぐらいだ。


ノイズがかった様な光景。周りは木造の一軒家みたいに机があったりランプがあったり。


その目の前で両親が何やら話してる。


「────」


俺が話しかけようとしても何故か俺の意見は届かない。でも何か悲しげだ。何故そんなに悲しんでいるのだろう?


〈突然シーンが切り替わる〉


「────」


銃声のような、それでいて悲鳴のようなうるさい音が聞こえる。その中でお父さんとお母さんが悲しんでる。


「────、███」


最後に何か話していた気がするがいつもそれにたどり着かないまま現実に引き戻される。


「待って!」


その言葉は虚しくも届かず、気付いた時には朝のひばりが差し込んでる。その繰り返し。


「──てな感じで夢は見るんだけどさ、自分でも何が何だか分からねぇんだ」


両親の事についてはよく分からないし、生まれ育ったセヴィニアもいつからいたのかもわからない。


気付けば居たって感じがピッタリかな。


「なるほどね、情報量が少なすぎて私も分からないけどアランの両親って今も生きてるの?」


「さあ?死んでも生きてても関係ねぇ」


「冷たい〜って思ったけどあんまり両親との記憶が無いんだったらそんなもんだよね」


両親の生死も自分でもよく分からず、生きていればもう一度会いたい。死んでたらそれはそれで悲しいが。


“RESISTANCE”


森に入って2時間ほどしたその時、レジスタンスと書いてある少し汚れた木の看板を見つけた。


「んだこれ、レジスタンス……?」


「ああ、もうすぐ……か。割と長いようで短い旅だったな」


「──てことはリッキーの言ってた……メルテス?」


「ああ、そうだ」


先程までの道は少し雑草も多くて通るのに困っていたが、レジスタンスと書いてある看板のその先は雑草が少なくて割と通りやすい道だった。


「さっきよりものすごく通りやすい……」


「だな、さっきはひっつき虫とか嫌な雑草を避けながらだったけどこっちは何一つ無くて良いな」


「リッキーはひっつき虫に結構苦戦してたけどな」


「やめろ……その話は……」


談笑で盛り上がる。歩いて5分ぐらい経つと何やら苔で囲まれてる古いような赤レンガの建物が見えてきた。

おそらくあれが────


「メル、テス……」


俺達がしばらく建物を見ているとメルテスの建物の中から何者かが蹴られて飛び出してきた。


「ヒィヤァァァァアァアァアァァァァアァアァァ!!!!」


「よし!これで反省してくださ───あ」


レナは勢いよく所長を蹴り飛ばしてシュート!しかし、その先には人がいて……


「お前ら避け────あ、無理かも」


何かがこちらに向かって来るが、速すぎて避ける意識に持っていく瞬間すら作れず避けることが出来ないことを察する。


無論その予想は当たっていたが。


“「ギィャアァァアァアァアアアァァアァアアア」”


勢いよく飛んでいき、木が何本か倒れる。そんで20mほど飛んで行った所で止まった。


飛ばされた俺とヴルサとリッキーはグルグル目になって倒れる。もちろん、目の前の誰だか知らんおっさんもだが。


「あわわわわ……!大丈夫ですか!?救護班……!救護班を呼んで!今すぐに!」


あたふたしながらさっき蹴った美少女がしばらく待機してるとその部下の男性2名と女性2名が寄ってくる。


1人目の男子は白髪と黒目が特徴でいたって普通の髪型。そして来ている服は青を彷彿とさせる制服に首にネックレスがかかっている。スボンだけみんな違ってこいつは青のジーパン。


2人目の男子は茶色の髪と青が少し混じった茶色の瞳が特徴的。髪型はツーブロックみたいな。制服も1人目と同じ制服。


3人目と4人目は双子っぽいというか見た目からして双子。


3人目は水色の髪に青色の澄み渡った瞳。しかも目が隠れてる。そして髪はポニーテール。でも表情が無表情っぽいというか……。あまり喋らなさそうな感じがする。服は白衣で看護師みたいな感じだな。


4人目は3人目の髪が緑で隠れてる目が反対側にある版の人。


そして彼らが用意した担架に乗せられて医務室によっこらしょと運ばれベッドに放り込まれる。


男子達は何か話しかけてこようとしたが、気絶してから目を開ける事が出来たのは少しの瞬間で彼らがかけた声は届かず、また目を閉じた。


***


────?時間後


「あれ……ここは……」


状況の整理に手間取ったが大体の状況は把握し、起き上がってベッドから降りる。


「(包帯……?服も結構汚れてる……でも大体の汚れは血か?)」


周りは普通の医務室で、窓は空いていてそこから清々しいそよ風が頬をつく。


「(暖か……)」


そよ風は暖かかった。


暑い、というわけでも無く。


寒い、わけでもなく。


ただ暖かい。まるで春の訪れを感じさせるかのように。


***


〈俺は部屋の引き戸を引きとりあえず外に出る〉


あの時足が結構怪我してたような気がするんだが……治ってる。気の所為か?


あの怪我は全治何週間とかかってもおかしくない……それに牢獄の時からのちょっとした怪我も治ってる。俺を担架で運んだ4人組の誰かが治療してくれたのかな?


それを考えながら俺がぶらぶら廊下を歩こうとした瞬間──


「おや。誰かと思えば所長ローリングに巻き添えになった患者様じゃないですか」


「どこにお行きになるつもりで?」


後ろを振り向くとメガネをかけた優しそうな20代の青年っぽい医者の服を着た何者かが立っていた。
















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