第6話 誰かの死

「…………え?」


嘘であってくれ。嘘であってくれ。嘘であってくれ────


「ははは……冗談はよせよ」


「冗談じゃないよ」


イルウィの真剣な眼差し。その眼に怯んで俺は信じるしか無くなった。それから俺は取り乱して────


「ああ、そっか。そうなのか」


「俺、人間を食っちゃったんだ……!あは!あははは!」


狂気的な笑いを浮かべる。まるで別人格に憑依されたかのように。悪魔に取り憑かれたかのように。


乱舞するような、狂気に苛まれて。


イルウィはそんな俺を見かねてビンタで正気を取り戻させた。しかもすっげぇ痛くて「いてて」と声が出るほどに


「落ち着いて……!こんな話が聞こえたらだいぶまずい事になる!」


「ああ、そうだったな。取り乱した」


そんな俺でも彼は見損なわないで、優しくフォローしてくれる。


「ううん。こんな真実を知ったらみんなそんな感じになると思う。だから今日は寝て落ち着かせて」


「イルウィの言う通りだな。とりあえず今日は寝て頭冷やすわ」


俺は落ち着いた振りをしてベッドに横たわるが、肉の事を思い出すと動揺してしまう。そんな俺を頑張って落ち着かせて眠りにつく。


***


〈朝の牢屋にて〉


「おい!囚人334、起きろ!」


「んだよ──こんな朝早くに──」


看守が呼びに来たという事はまさかまた集会か──?でも眠い。行きたくない。便所に籠る口実を考え……て──……!?


「……あれ?リッ────」


リッキーだった。いい切る前に「しーっ」と名前を呼ぶのを止められたが明らかにリッキーだ


でも、昨日からずっと下痢が酷いとかイルウィが言ってたような……?


何故バレないとか何故ここにいるんだろうかと聞きたいことばかりだったが、着いてこいとしか言わない。

それと連れてかれる道中でガスマスクらしきものがリッキーから渡されて"何故こんなものを?"と質問しても


「服の中にでも入れればいい。この銃もポッケに入れとけ」


「合図するからそのタイミングで着けろ。じゃないと死ぬぞ」


との事。何が何だか分からなかったがとりあえず指示に従おう


そんでつれてこられたのは昨日と同じ広い庭。囚人の波に押されてたどり着いた庭にはミヤはいなくているのはダリングと14人の看守のみ。


「あー、テステス。聞こえているな」


「うむ、時間が無いのでさっさと伝えることを伝えて終いとする」


ダリングは至って冷静でこれは珍しいとイルウィやツニ、ヴルサが口を揃えて言う。確かに昨日の事でいつもキレ散らかしてそうだなーと思っていたが。


「先日起きた事件についてだが、お前たちが昨日食っていたカレーの肉はサンクシン隊長の肉だと判明した」


「──よって」


「お前たちを一人残らず処刑する!」


彼がそう叫ぶと看守達が一斉にガスマスクをして毒ガスらしきものが溢れてくる。そして出口も全て塞がれた。


囚人もザワついたが次第に降り注ぐ毒ガスに倒れていき残ってるのは──俺たちだけ


リッキーも合図をしてくれたが看守もいるのにどう乗り越えろと...?と疑問だったがとりあえずマスクを付けることにした


「お前ッ!何故ガスマスクを持っている!」


ダリングの怒号が響く。そりゃ堂々と付けたらバレるよなぁ


看守達は拳銃を持っててこちらを撃ってこようとしてたが──


リッキーがその前に拳銃を取り出し


────2人ほど弾を当て殺した……?


もしその拳銃が本物の拳銃ならドン引きしていたのだが、殺さなければ死ぬ。その事実の前でそんな正義のレッテルを貼るのはバカに近い。懺悔なんて後から幾らでもすりゃいい


ダリングはこっちに構わず、先にリッキーを殺せと看守に命じて11人全員がリッキーに銃を向ける


「俺の弾丸数じゃ全員にを当てられん!お前たちも何発か撃ってくれ!」


一瞬トラウマが蘇る。トリガーを握る手は震えていて、それでいて怯えていて。そんな俺を見たリッキーは怒号っぽい声で俺に叫ぶ


「死にてぇのか!?それは本物の拳銃じゃない!だから──」


話の最中で銃声が聞こえて横を見る、とイルウィが看守に何発か撃っていた


「アランが撃てないのならボクが撃つ!」


彼は友の為に引き金を引く。


例え、その手が汚れようと────



無論、あちら側から弾は飛んでくるが一発以外は当たらず一発はかすって皮膚を切り裂き、血潮が吹き出た。


それでも、引き金を引く手は止まらない。


止まる訳には行かないのだ。


「……ッ!弾が当たったのに怯みません……!怪物かよコイツッ!」


この看守の周りも次々と撃たれて彼も喋った直後に撃たれる。次はダリングを──


「ははは!無駄死になんかもってのほか!俺はこいつらみたいにお前らを殺せないまま終わらない!」


「ほらよ!銃はある!これでオメーらの中で一番弱そうなヤツを────」


銃口という名の死の牙はヴルサに剥く。誰もが危機感を覚える。


──守ることが出来ないと。


しかし、それは────



「終わりだ!これでサンクシン隊長の仇を討てる!」


「はは!はははは!」


弾丸が発射される。惨い現場を見たくなくて俺は衝動的に目をつぶった。


あぁ──今回も誰も救えなかったんだな。


ごめん、ヴル───サ……?



「バーカ。確かにコイツは身体的には弱いが、心の強さってとこじゃテメーよりつえーぜ?」


弾丸がヴルサに届くことは無く、






























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