116-2
あれから1年か。
時が経つのは本当に早いね。
今年はお互いに受験生。なので会いに行くことは叶わないが、ここからきみの武運を祈っているよ。
さて、私は私でやらなくてはならないことが多々あるが、せっかくだから今日は休息日としようか。
今日やるべきタスクは明日の私にでも任せればいいのさ。根を詰め過ぎてもよくないからね。がんばれ、明日の私。
しかし受験か。
「将来のことをよく考えた上で、進路を決めなさい」
3年前。担任の教師にそう言われた。
担任のおすすめは、隣の市にある県内で1番の公立校。毎年20名以上の東大生を輩出する、そこの生徒というだけで大人から一目置かれる進学校だ。
一方で私の希望は、県内で50番にも入らない公立校だった。
正直、アホかと思ったね。当然、担任にだよ。
結局はこうして『決めさせない』という手を打ってくるわけだ。
さながら、私の選択が間違っていると言わんばかりにね。
愚かしいにも程がある。その1番の公立校に行くことこそが『よく考えずに進路を決める』に他ならないと分からないものかね。
学年で1番の成績だから、県内で1番の学校に進学する。
それは理に適っているようで、ただの思考停止だ。
自分が矛盾した発言をしていることに気付きもしない。
本当にアホだね。
まあ、私もアホだったと言わざるを得ないけども。
『自宅から最も近いから』
担任にはそんなバカげた理由を語った。けど本当は、
『好きな人がそこに通うから』
そんなもっとバカげた理由だったからね。
後悔はしていない。
勉強はやる気にさえなればどこでもできると理解していたしさ。
むしろ良かったとすら思っている。
多くの貴重な経験をすることもできたしね。まあ、途中から好きな人のことなんてどうでもよくなったし、選択の判断基準としては大きく間違っていたと言えるけど。
当時の私に教えてやったらしょっぱい顔をするだろうね。でも、どうせ私のことだから同じ道を選ぶと思うよ。
もしも進学校に行っていたら、それはそれで素晴らしいストーリーが待ち受けていたのかもしれないが、そんなのは比較のしようがないから考えたって仕方ないしさ。
というか、楽しんだもの勝ちだと思うんだよね。
ほら、大人どもはズルいからさ。
勉強をしなさい。将来、後悔することになるよ。
そんなことを言うくせにさ。
今を思いっきり楽しみなさい。1度しかない学生生活なんだから。
そんなことも言うよね。
あいつら。どうせ自分の言葉に責任を持つ気なんてないんだ。
場末の占い師みたいなものだよ。好き勝手に言うだけさ。
あの子はどうなのかな。
進む道を自分で決めることができたのかな。
まあ、心配は無用か。
どんな道でも、あの子なら笑って歩いていくだろう。
今は老婆心を働かせるよりも、この良き日を祝おうじゃないか。
ハッピーバースデイ。
そして願わくは、サクラサケ。
咲き乱れろ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます