第45話 療養なんです

 レイドリークス様が退出して、一息ついた後。

 私は配膳してもらった食事を食べることにしました。

 先生からいただいたスープは、野菜が細かく刻んで入っていて、味が体に染み込むような感じがします。

 食べきると、すごくホッとしました。

 少し、体に力が入りすぎていたようです。

 ここ数日は、本当に大変な目にあったのである種当然かもしれません。

 お医者様と先生には感謝してもしきれないな、と思います。


 私はご馳走様を言い終わると、食べ終わった食器を下げるためにベッドから出ることにしました。

 夕方に帰宅できるということは、動く許可も出ているだろうと推測してのことです。

 が、立ち上がった途端ヨロヨロとよろけ、倒れてしまいました。


 ガターン!


 椅子を巻き込んでしまったのですごい音がします。

 うう、まずいです。


「っジュラルタさん?!」


 立ち上がりかけたところで、ウィッシュバーグ先生が駆けつけてくださいました。

 予想より体が言うことを聞かず、お手を煩わせてしまって申し訳ない気持ちになります。


「すみません、転んでしまって。すぐ立ち上がりますから」

「慌てずゆっくりね? リハビリしようと思ったんだろうけど、結構血が抜けてたから、まだゆっくりとしか動けないと思うよ?」

「わかりました。お皿を下げようと思ったんですけど……」

「そういったことは、声かけてくれたらやるよ〜。ま、体を動かすことは禁止しないから、ベッドの手すりとかを頼りにしながら、この部屋の中で、ね?」

「はい。ありがとうございます」

「いいえ〜」


 テキパキとお皿を持っていきながら、先生は衝立ついたての向こうへと下がっていかれました。

 私は今度はゆっくりと立ち上がりながら、ベッドの手すりを持ち、一歩一歩、歩いてみます。

 少しくらりとしました。

 先生の言ったように、やはり血がたりなさそうです。

 動くより回復に努めたほうがよさそうな具合に、再び私はベッドへと戻ったのでした。




 夕方。

 迎えに来てくれたのはお父様とガリューシュでした。

 お父様に抱えられて学校の門をくぐり、馬車で家へと帰ります。

 二日ぶりの我が家です。

 全員で出迎えてもらい、私は自室へと運んでもらいました。

 後二、三日は自宅療養して学校はそれからだそうで、私はどう過ごすか考えを巡らせました。

 が、結局。

 体が休息を求めていたのか、それからまた丸一日ほど、眠ってしまったのでした。




 結局療養には四日を要しました。


 四日目の朝にようやく普段と同じように動けるようになり、学校へと向かいます。


「姉上。言いたくないけど大人しくしてろよ? 傷は縫っただけなんだろ、あんまり動くと傷口開くかんな」

「わかってますよ、気をつけます」


 年長者のはずなんですが、馬車の中でガリューシュにまで釘を刺されてしまいました。


 学校へ着きクラスへ行くと、カシューが慌てて私の元へとやってきました。

 何日ぶりでしょうか、彼女の顔は今にも泣きそうです。


「ああ、ルル!! ララと心配していましたのよっ。あなた、あんな…………っ。無事で、よかったですわ」


 言うなり本当に泣いてしまって、ゆっくりと傷にさわらぬよう抱擁されます。

 私はそれに抱擁で返しながら、言葉を発しました。


「無茶をして、ごめんなさい。魔獣を前に功を焦ってしまいました。次は、気をつけます」


 そう、この話はあのグループとお父様や治療にあたってくださった方だけの秘匿なので、対外的には私の失敗として話すことになっていました。

 いずれ世に出る話かもしれませんが、今は拙いそうなので。


「そうね、そうしてもらえたら友人として安心だわ。もう、傷は良いのかしら」

「はい、内臓は全く。傷口の方は、まだくっついたわけではないので、少しは痛いですけど」

「無理はしないでね? 何か不便があれば言って頂戴、わたくしにも手伝えることがあるかもしれないもの」

「わかりました、困ったことがあればカシューに伝えますね」


 そう言ってもらえたのが嬉しくて、私は満面の笑顔でそう答えました。

 目の前のカシューが少し歪んで見えますが、気のせいです。


 私達はその後、授業開始のチャイムが鳴るまで、休んでいた間の授業などの話に花を咲かせたのでした。




 その日はつつがなく授業を済ませ、帰宅しました。

 数日は穏やかな日々が続きます。

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