第6話 授業なんです
言葉巧みに相手を誘導する
どちらかといえば……苦手です……悔しいですが。
それ以上試すのはやめ、話し相手をしつつここから離脱する方法へ変えることにしました。
「覚えると言っても私は最終学年、殿下は四年です。接点もないですし申し訳ありませんが覚える程交流していただこうとも思いません」
「では毎日俺と一緒にここで昼食を取らないかい?」
「ですから、私は――」
「料理人に、リクエストが可能か聞いてみよう」
「――そうではなくて」
「菓子職人への、食後のデザートの手配もつける」
「
……私は、自分の食い気に負けました……。
殿下はその返事に満足したのか、ふわり、と無くした宝物が見つかった時のような表情になりながら、やれあのご飯が美味しくてだの、デザートならこの前食べたあれがだの言い続けています。
そんな顔はなんだかよくわかりませんが……とにかくずるい! そう思いました。
勿体無いは撤回します。
美味しい、大好きです!!
うっかりが過ぎたお昼ご飯もなんとか無事終わり、自分の教室に帰ってきました。
途中廊下で他の方の視線をバチバチと受けましたが、自分にどうにかできる範囲ではないので……諦めます。
魔法学校は午前に三時限、午後からは一時限だけあります。
今日の午後からの授業は魔法学です。
お昼ご飯の時に感じた謎の敗北感を、なんとか
先生が教壇で挨拶をし、今日の授業内容を話し始めます。
「皆さんご機嫌よう。いよいよ最終学年ですが、
魔法――それはこの世界の何処にでもある当たり前の概念です。
あらゆる存在と魔力は密接に関わりがあって、この世で
特にこの国は魔法の素地のある者の割合が多く、魔法学もとても発展していて。
その素地を人が最大限活かせるように、法整備もされてきたそう。
先程皇子殿下との話で出てきた、イメージングステイもそのうちの一つです。
素地のある子が十歳になると一年間
何故、知らない土地へ行くのか。
魔力とは、自分や自然界の魔力を自分の体内で練ってやっと使える力なのだそうです。
力を目に見える形にする源は摂理に
この世界にある、
人が自分の生活圏の中で知れることは実はそんなに多くは無いそうです。
そこを補う為に昔の研究者が、イメージングステイする、という仕組みを提唱したと聞いています。
先生が魔法の基礎についてを話し終わりました。
習学の程をみる為か、教室を見渡すと一人のクラスメイトを指名します。
「それでは今の話を踏まえまして、ガレージアさん。魔力を目に見える形にする為に必要な要素はなんですか?」
「はい先生。魔力を安定して練る為の体幹力と、その魔力を外へ放出する為の正確な“
「良く学んでいますね、正解です。席についてください」
ほっとしながら彼が席に着くのが見えました。
基礎を学んだのはもう六年も前のこと。
割と息をするようにこなせるようになっている物事を、改めて言語化するのはなかなかに大変です……心中を察しながら、話を再開した先生の言葉に耳を傾けます。
「建国物語ではこう語られています――かつてこの土地には邪竜がおり、禍々しい気と共にその地に住む人々を苦しめていた。ある時そこへ勇者が降り立ち邪竜を打ち倒したが禍々しい気が残った。それを浄化したのがその土地の巫女である、と。勇者に感謝した人々はその地の巫女とその勇者が結ばれ統べることを熱望し、勇者もまたそれに応えて夫婦となりやがて国が成った――」
一旦区切りながらさらに続けます。
「研究者の間では浄化した邪気が魔力に変換されたのではと」
ビビビビビビ
話の途中でチャイムがなってしまいました。
途中でしたが今日の授業はこれまで、と言うと先生は教室から出ていかれたのでした。
怒涛の一日が終わり家へと帰宅しました。
昨日の祝賀会からこっち、なんだか心労がすごい気がして体も重いです。
こんな時は癒されたい!
まずは癒しその一のお部屋へ、いざ参る! です。
コンコン
「マークス、今ちょっといいですか?」
「いいよ〜」
返事をもらえたのでドアを開けて部屋へと入ります。
そう、私には可愛い可愛い弟がいるのです! しかも三人。
そのうち一番末の弟がこのマークス、今年の誕生日を迎えると十一になります。
とても優秀だった為イメージングステイ期間をかなり短縮して、今は家に帰ってきていました。
まだ姉からすると可愛い盛りなので、こうして疲れた時には時々、抱擁しに来たりおしゃべりしに来たりして楽しい時間を過ごさせてもらっています。
「ん〜、今日も可愛いっ!」
「姉様、また何かあったの?」
抱きついた弟に聞かれて、私は少し悩みます……なんて言えば良いかしら?
良い案はなかったのでそのまま伝えてみることにしました。
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