第2話 西片玲

俺の名前は西片玲にしかた れい。ある国立大学に通う2年生だ。



そんな俺は今・・・・・・














シャワーを浴びてます。


えどうでもいい? それな




ちなみに身体で最初に洗う箇所は




・・・・・・左肩だよ


えこれもどうでもいいの? ほんとそれな



俺は朝シャワーを浴びるのが好きだ。

前日までのとかとかも泡となって流れてくれるような気持ちになるから。



俺は毎晩オフトュンに入った後、睡魔に意識を刈り取られるまでは、その日にあったことを振り返って「あのときああすればよかった」とか「なんで俺こんなこと言ったん?きもちわるぅ」とかを考える反省会をする。1人で。


え引かないでくださいお願いします。



俺以外にもひとり反省会とか夜にする人っていると思うし、自分の成長につながるから基本的に良いことだと思うんだ。



でも俺の反省会は・・・・よくない。


何がよくないって、ダメだった所しか振り返らない。まぁ俺には良かった所なんて1つも、1μmもないからしょーがないんだけどね。あはははは

ミカヅキモ大先生もびっくり。


みんなは反省会するときは、ダメだったところ以上に良かったところを自分で評価して、自分を褒めてあげよう。君と僕との約束だぜっ。



ダメだったところばかりを振り返ってると少しずつ、「やっぱ俺ってだめだね」って気づき始める。「いいとことか取り柄なんて何ひとつないね」って自覚し始める。

まぁもともと知ってたけどねそんなことは。


んで、気分も滅入っていって少しずつ、そう少しずつだけど着実に、









自分が嫌いになっていく。



じゃあそゆこと考えるのやめればいーじゃーんてなるじゃん?

でももともとの性格なのか、昔から日常的に色々なことが気になって考えちゃう癖があった。


何かについて深く考えたり思ったりするのはすごく良いことだと思うし、そのおかげで周りの人たちから「玲は他の同年代の子より大人びてるね」って言われるから、昔はこの癖が良い方向に働いてたんだと思う。


でも今は・・・・



「昔はこんなんじゃなかったんだけどなー」



誰もいないお風呂場で、驚くほどに冷たい声が、温かいシャワーに掻き消された。


その言葉が持つ異常なほどの冷たさは、まるで自分のことではなく全く関係のない他人のことについて話すような・・・・


その言葉は、その思いは、誰にも届かない。

否、彼は誰にも届けようとしない。




俺みたいなやつのこんなつまんない話、聞いてもらうのは申し訳ないもんね。


誰にも迷惑はかけたくない。

俺みたいなやつにそんな資格は、ない。


まぁ俺ってば超天才だから何でも自分で解決できるから別にいいんだけどねーーーーー!





────そうやって彼は、また自分の負の感情から目を逸らし、気づかないふりをする。蓋をする。


プラスの感情は積極的に表現していくが、彼は他人にマイナスの感情を見せない。


迷惑をかけるから。



彼は偏った客観視と自己分析によって、自分のよくないところやマイナスな面に関しては熟知していた。

また、昔からの性格のおかげか変に達観している節があった。




そのため彼は、









彼自身を諦めている。自分に何も期待しない。



暗い性格というわけでは決してない。むしろ人前ではとても明るく、楽しそうに過ごす。


故に、異常なのだ。少しずつ彼の中で、彼の価値が薄れていく。


実際、友人や琳月といるときはこのような思考は働かない。


否、彼自身が無意識のうちに働かせないようにしているのかもしれない。


そのおかげか周りの人間には恵まれ、彼女もできたため幸せな生活を送れていた。



しかし、夜などに1人になると・・・・・



「・・・・・まぁ、別にいいんだけどね」



いつしかこれが、彼の口癖になっていた。

自分に関することに対して諦めているが故に出てくる言葉。この言葉は彼自身に対してしか使われない。


それが彼の諦観に拍車をかけていく。




彼は自分に何も期待などしない。



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