私の能力

ニアという外に住む女性とガスの採取を初めて約1年、私は研究を続けていた。

原因がガスであることはわかった。

だけど、なぜそのガスで「緑化症」を発症するのかが全くもって分からない。

そうして1年間足踏みを続けている。

ニアの体に生えていた植物も徐々に彼女を蝕み、出会った時は腕だけだったものが今では上半身全体を覆うように伸びている。


そうして実験を寝る間を惜しんで、食事もろくに食べずに研究に没頭していたある時、私は気を失ってしまった。

しばらくして目が覚めると、何か違和感を感じた。

視点が低い、そして少し歩きづらい。

視界に写る手が小さい。

流石におかしい。そんな訳ない。

そう思って私は鏡に向かった。

洗面台が高い⋯。いや、私が低いのか。

何とか足場を使って洗面台の鏡を見ると、そこにはかなり幼くなった私がいた。



「嘘でしょ⋯?いやいやそんな訳⋯。いやでも⋯、確かに幼い⋯。背も小さいし⋯。」



見た感じは10歳くらいと言ったところだろうか。

明らかに幼くなっている。

今思い返してみれば確かにおかしかった。

ろくに寝ていなかったのに眠くなかった。

何も食べてないのにお腹が空かなかった。

疲れだって感じなかった。


地下街にいた頃から特異な能力を持つ子はいた。

ただ、まさか自分がそんなものを持っているとは思わなかった。

でもこれは⋯。



「デメリットしかない⋯かな。」



若返りは悪い事では無い。ただ調整出来ない。

下手をすれば年齢を超えて消滅してしまうかもしれない。

疲労、空腹、眠気を感じないのも、無理をしていることに気づけないだけだ。

というかこれは恐らく「感じてないだけ」だ。

実際体は休息を、食事を、睡眠を求めてるんだ。

これから気をつけなければ「緑化症」を研究するどころか生きることすらままならなくなってしまう。

というか10歳くらいって大変じゃない?

白衣は大きすぎるし、普段着てる服も着られない。

研究室の設備だって位置が高すぎて足場がないと届かない。



「これは⋯困ったな⋯。この先どうしよう⋯。」



そう言えば、私は研究者志望だったが、孤児院にいた時一番得意なのは工作だった。

簡単な電気で動く人形くらいなら作れる。

自分で出来ないのなら、他にやらせてしまえばいいのだ。

そう思って私はまず材料を買うところから始めた。

もちろん自分では運べないので配達になってしまうが、幸い金属系の素材ならある程度は仕入れられる。



「あとはまともに使える奴が作れるかどうか⋯だけだな。」



とりあえず私は材料が届くまでの間に、設計図を描くところから始めた。

これが、私が自分の才能を知るきっかけになるのだった。

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