緑化の原因

なんとか落ち着いた彼女に、私は話を始めた。


「えっと⋯、まずは自己紹介を。私はソフィア・ハミルトンって言います。一応軍属ってことになってますけど、私は地下街のことを報告はしません。そもそも私も地下街の出身なので。」


「そうか。私はニアだ。姓は無い。それで?なんでこれについて調べてんだ?」


「5年くらい前に、地下街で見たんです。腕に花が咲いた人を。それを見て、とっても綺麗だなって思ったんです。だから私、孤児院に拾われる時、研究者になれるところに入れてもらったんですよ。この間なんとか研究者として独り立ちできたので、まずは原因を探ろうと思ってここに来たんです。」


「それで私を見つけて後を追ってまんまと罠にはめられた訳だな。」


「はい⋯、それについては迂闊でした⋯。もう少し周りに気を配れば気付けたはずなのに⋯。」


「んで、これの原因だったな。それなら簡単だぜ。」


「え、もしかして知ってるんですか!?」



こんなに早く原因を知っている人に出会えるとは思っていなかった。

この人と出会えたのはものすごい幸運なのかもしれない。



「あぁ、これはこの都市の外に居る人間みんながかかってる。原因は外に充満してるガスだな。なんでガスがあんのかは知らねぇけど、それが原因なんだって親父が言ってたんだよ。」


「ガス⋯ですか⋯。となると大気汚染か、それとも毒に近いものなのか⋯。」



外、と言うときっと都市の外のことを指しているのだろう。

外には生命は生きられないはずだけど、何か特別な力があるのだろうか。

興味が尽きない⋯。



「あの⋯、もし良ければ、連れて行ってくれませんか?報酬は必ずお渡しします。」


「悪いがそれは出来ねぇ。あんたも死にたい訳じゃ無いだろ?外に出りゃ嫌でもガスを浴びるし、運が悪けりゃそのまま植物になっちまう。私は止むを得ない時以外に人を殺したくは無いんでな。」


「そう⋯ですか⋯。それではもし良ければ次来た時に案内してくれませんか?相応の装備と報酬を持ってきますから。」


「うーん⋯、わかった。次会う時があれば案内してやる。ただし、外に出るのはナシだ。ギリギリの辺りなら採取くらいはできるだろ。」


「ありがとうございます!それじゃあ今日は帰って、準備を始めます!その時はよろしくお願いしますね!」


「帰るんなら地下街出る辺りまで送ってくぜ。ここらはかなり治安も悪いしな。」


「いいんですか⋯?ご迷惑をおかけしてしまうんじゃ⋯。」


「いいっていいって。それに、これについて研究するなら、いつか治せるかもしれないだろ?それなら私だけじゃなくて他の奴も助かるかもしれない。そうなったら研究してくれる奴を守るくらいわけないさ。」


「ありがとうございます!それじゃあお言葉に甘えて、よろしくお願いしますね!」



そうして私は彼女に地下街を出るまで送ってもらった。

本当にいい人に出会えた。

あの人のおかげで研究が一気に進むかもしれない。

そう思うととても胸が踊った。

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