叛逆の終わり「友ではなく」

カルナと共に軍人の波を切り開く。

例え自身の拳が血に塗れても。

そうしてまた更に1時間が過ぎ、ようやく私の家の近く、地下街の入口付近へと辿り着く。

だが、このまま地下街へと入ってしまえば、軍人はそれを追って地下街を発見してしまう。

そうなってはおしまいだ。

だから私達はここで軍人をどうにかして撒くか、全滅させるしかない。



「マキナ!あまり深く考えすぎるな!とにかく目の前の敵を倒すことだけ考えろ!」


「わかってるさ!ってか多いなこいつら!私達最初20人くらいいたよな!?」


「殆どヘレナに殺られたんだ!あの子めちゃくちゃ強い!私達にはずっと牙を隠してたんだ!」


「くっ⋯、これ以上は厳しいか⋯!」


「また一旦逃げよう!とにかく少しづつでいいから戦力を削るんだ!」



折角近くまで来れたのに、そう思いながらも、生き残るために1度撤退する。


その後さらに撤退と交戦を繰り返し戦力を削ぎ続ける。

まだ追手はいるものの、戦力はだいぶ削れてきている。少なくとも、最初の頃よりはずっと少ない。

しかも、カルナが交戦中に敵側の司令官を倒している。残りはざっと70人くらいと言ったところか。

そう考えていた時、ふと上から影が落ちる。



「マキナ!危ない!!」



その一言で何が起きたのかを理解する。

路地裏に入り、隠れていた私達を敵側の1人が、上から襲いかかってきたのだった。

私は避け切れず、その敵に殺された。

そのはずだった。

だが目の前にあったのは私ではなく、親友の血。

私を庇い、致命的な傷を負わされた、私の大切な親友。

続け様に襲いかかって来た敵を思い切り蹴り飛ばし、傷を負ったカルナを抱きかかえる。



「はは⋯、手痛い傷を負っちゃったな。こりゃもう⋯、戦えそうにないや。」


「なぁカルナ⋯、大丈夫だよな⋯?その⋯、私を庇って⋯、死んだりしないよな⋯?」


「どうだろう⋯、ちょっと⋯、厳しいかもな⋯。」


「お願いだ⋯、死なないで⋯。私にはもう⋯カルナしか居ないんだ⋯。」


「泣くなよ⋯、マキナ。私は君の笑った顔が大好きなんだ。最後かもしれないんだから⋯、今くらい笑ってくれよ⋯。」


「で、でも⋯。いや、わかった、泣かないよ。カルナが⋯、そう望むのなら。」



そうは言ったものの、涙が止まることはなく、無理に笑顔を作るが、どうしても上手くできない。



「ねぇマキナ⋯。もう少し⋯、顔を、よく見せてくれるかな。」



そう言われて、顔を少しだけ近づける。

カルナは私の頬に手を添え、目を瞑ってゆっくりと私に口づけをした。

添えられた手から茨が伸び、私の右肩の方へと伸び、定着する。そこには、綺麗な真っ黒の薔薇が咲いていた。



「私からの⋯、最後の贈り物だ。受け取ってくれるかな⋯?いきなり⋯、ごめんね⋯?最後は⋯、最後だけは⋯、マキナと⋯、友ではなく、恋人として⋯、接したかった。」


「いや、いいよ。カルナがそうしたいなら。ねぇカルナ、好きだよ。どうしようもなく、親友としても、恋人としても。だから、死なないでよ。お願いだから⋯、置いていかないで⋯。」


「はは⋯、ごめんね⋯。私も、大好きだよ。マキナ。どうかその花を、私だと思って⋯。愛してる⋯よ。」



添えられた手が力無く垂れる。

まるで死んでしまったように。

受け入れられない。

親友が。私が生きていく意味が。

失った。


もう。


どうでもいい。


頭の中には、カルナがくれた力が。

使い方が浮かぶ。


蹴り飛ばした「肉塊」が、起き上がりこちらへ迫る。


カルナを殺した軍人クソ野郎が。


私は目の前の敵に触れる。

一度目、刻印を与える。


敵の攻撃を躱し、切り返して再び敵に触れる。

二度目、その命を奪う。


私は、もう全てがどうでも良くなった。

家も、地下街も、森も、政府も。

レベリオも、都市民も、軍人も、私自身も。


どうでもいい。

どうでもいいから、今見える全てを壊してしまおう。


それから1時間が経過しただろうか。残っていた軍人全てを殺し、私は地下街へと歩いていった。


あの日歩いていたように、ただふらふらと地下街を行く。

そうすれば、またカルナに会える気がしたから。

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マキナ・リベラティオ 森の医師擬きマーサ・フォクストロットの話 平たいみかん @tachyon0926

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