叛逆の最中「決意の帰還」

「一気に行きましょう。ここからは殲滅戦です。」



振り返り、彼女は後ろにいた軍人達に向けそう声をかけた。

こちら側の人数が減ったためか拮抗していた前線が崩れる。

前線を戦うレベリオ達はもはや「不殺」すら考える余裕はなく、全力を尽くし戦っている。

彼らが全力を振るう故にまだ確認が済んでいない建物も倒壊してゆく。

あれだけで一体何人の犠牲者が出ているのだろうか。

だが、もはや構っては居られない。私達も、生きる為に戦わなければならない。

私達の知るはずの愛らしい彼女はそこにおらず、戦場を踊り、レベリオを狩る彼女は正しく軍人であった。


そうしてさらに1時間が経過した頃、20人程いたレベリオ達は全滅。

あとは私とカルナを残すのみとなり、じりじりと追い詰められる中、ヘレナが他の軍人に止まるよう指示し、私達2人にではなく、カルナに向けて声をかける



「カルナ姉さん、私の事、最後まで信用してくれませんでしたね。1年も一緒に暮らしてたのに、ただの一度も私を信用してなかった。まぁ、心配したりはしてくれてましたけど。でもそれってマキナ姉さんのためでしょう?マキナ姉さんが私の事を妹のように思っていたから、だから私の心配をしたんですよね?でも、それも無意味でしたね。だって私が裏切り者だったんですから。滑稽ですね。頭が良くて、なんでも出来る器用なカルナ姉さん?」



ヘレナは小馬鹿にしたように軽く笑って、今度は私の方に向き直る



「マキナ姉さん、私の事沢山可愛がってくれましたね。それは亡くなったお母さんの穴を埋める為ですか?残念でしたね。妹のように思っていた相手が、まさか裏切り者だとは思わなかったでしょう?あぁそれと、マキナ姉さんと遊んだボードゲーム、触るのは初めてでしたけど、ずっと手加減してたんですよ。私、マキナ姉さん程頭が悪くはないので。ふふっ、可愛い可愛いマキナ姉さん。最後まで状況をちゃんと理解出来なくて可哀想ですね。」



そう言って軍人達の方へと戻りながら、私達2人を嘲笑っていた。

目の前にいる彼らの後ろへ立ち去って行く彼女は、最後に軍人達にこう声をかけた。



「もう飽きてしまいました。私は報告してくるので、あとよろしくお願いしますね。」



ヘレナは、ひらひらと手を振って立ち去っていく。

無力な私と、大切な親友を置いて。

どうしようもなく打ちひしがれる私に、カルナは声をかけた。



「生きて帰るよ、マキナ。それがせめてもの弔いなんだ。」



その一言は、絞り出したようにか細く、カルナ自身も追い詰められているのだとよくわかった。

でもその一言で、私はとても勇気が出た。

必ず2人で生きて帰ると、そう心に決めた。



「あぁ、そうだ。生きて帰ろう。」



応えるように私も声を絞り出し、立ちはだかる軍人達に応戦することを決めた。



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