叛逆の最中「予定調和」

集まった場所は地下街の奥、私とカルナとヘレナ、それからレベリオの人達が20人程度。

侵攻するには充分すぎると思えるほどの人数だ。



「思ってたより集まったな。礼を言うよ。バルカン。よく集めてくれた。」


「こんだけ集めんのは大変だったんだぜ?まぁ、こいつらも、なるべく血を流さずに済むのならってことで着いてきてくれたんだ。そんで、侵攻は何処から始めんだ?」


「あぁ、それについては開始地点に移動しながら話そう。着いてきてくれ」



そう言って、カルナは私達の手を引き、南区の方へと向かっていった。


しばらくして、南区の100番棟付近に到着した時、カルナが立ち止まり、こう言った。



「さて、ここから我々の新しい時代を始める。レベリオも、地下街の住人も、都市民も、軍人も、全て皆が平等で平和な時代。母なる機械に守られながら、天寿を全うする平穏の時代。その為には今の政府を打倒する他無い。行くぞ!覚悟を決め、今ここに我等がいるのだと証明するのだ!」



士気は十分に高まった。これから私達は政府に歯向かい、自分達の生きる権利を取り戻すのだ。

だがここで、あることに気づく。


ヘレナが居ない。

レベリオの中に紛れ込んでしまったのだろうか。

南区の人混みの中ではぐれてしまったのだろうか。

カルナも気づいた様子で、辺りを探している。

しかし、もう侵攻は始まってしまった。

レベリオの人達は既に騒ぎを起こし、周辺から一般市民を遠ざけるよう行動している。

もう戻れない。今は目の前のことに集中して、事が済んだら探そう。


侵攻開始からおよそ2時間が経った頃、南区の外側から4棟程が半壊している。

既に住民が居ないことを確認してから破壊工作を行うため、人的被害は出ていないようだ。

そう思っていた矢先、閃光と共に、最前線が真っ赤に染まる。

先頭を行ったうちの1人が、原型を留めぬ程散り散りになっていた。



「叛逆者共を殲滅せよ!!!」



軍人だ。

大きな声で轟いたその号令は、彼らの士気を上げ、全線は一気に混戦状態となった。

私達はともかく、レベリオの人達は、皆強力な異能を持っており、不意打ちで殺された1人を除けば基本的には優勢である。

だが、カルナの立てた「不殺」が枷となり、一向に前線が進まない。

さらに、政府軍は「まるで今日この時間に侵攻が始まるのを知っていたかのように」完全武装だった。

内通者がいたとしか考えられない。

カルナが先程会話をしていた「バルカン」とやらの仲間か。

それとも⋯。

いや、今はそんな事を考えていても意味は無い。

一刻も早く前線を押し上げ、交渉のテーブルにつかねば。

犠牲者がこれ以上出る前に。


そうしてしばらく前線が動かぬまま、さらに1時間がすぎた。

これまでに半壊した建物は9棟。

予定よりも政府軍の到着が早く、予定よりも遅いペースでしか進まず。そして前線は動かない。

レベリオも政府軍も犠牲者は出ず、疲弊したお互いの間に、1時間前よりもずっと多くの血飛沫が上がった。

惨劇と共に現れたそれは、多くの血を浴びて艷めく双剣を携えて、私とカルナの前で立ち止まり、聞き覚えのある愛らしい声でこう言った。



「お疲れ様でした。カルナ姉さん、マキナ姉さん。束の間の幸福は楽しかったですか?」



内通者は、ヘレナ・シルヴェスター、彼女だった。

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