誰かの落書き

ここ最近、ヘレナとカルナは私の家には来ていない。

私が来て欲しくなくてそうしてもらっている。

と言うのも、ヘレナの件があってから、何度も家に落書きがされている。

「逆賊」だの、「反逆者」だの、「裏切り者」だの、ふざけたことばかりが書かれている。

私自身は平気だが、これをもしヘレナやカルナに見られたらと思うと気が気でない。


今日もいつもと同じように家を出ようとすると、そこには居ないはずのカルナがいた。



「はぁ⋯、最近何か考え事をしているようだからおかしいとは思ってたけど⋯。なるほどね、こういうことか。」


「あっ、カルナ⋯。えっと⋯。」


「いいよ、何も言わなくて。誰にされたのかは分からないんだろう?私も犯人探しをするつもりは無いし、ヘレナにも黙っておこう。彼女はああ見えて責任感が強いからね。これを見たらきっと私達と一緒にはいてくれなくなるだろう。」


「あの⋯、ごめん。ずっと黙ってて。」


「いいんだよ、こんなこと言いづらいだろうし。マキナは辛くない?大丈夫?いっその事マキナもうちに引っ越すかい?」


「いや、大丈夫。ありがとう、カルナ。」


「そう、あんまり無理はしないでね。」


「あぁ、わかった。それじゃ、行こうか。」


「うん、私も久しぶりにお母様に挨拶がしたいしね。」



カルナと共に教会で母の墓を訪れ、その後地下街のカルナの家へ向かう。

家に着くと、ヘレナが笑顔で出迎えてくれた。



「おかえりなさい!カルナ姉さん、マキナ姉さん。」


「あぁ、ただいまヘレナ。いい子にしてたかい?」


「うん、大丈夫!ねぇカルナ姉さん、もうここにある本読み終わっちゃったんだけど⋯、他にはないの⋯?」


「うーん、買いに行けばあるかもしれないし、ちょっと行ってくるよ。マキナ、またヘレナと一緒にいてあげてくれるかな?」


「え?あぁ、いいけど⋯、また出かけるのか?」


「あぁ、ちょっと用も出来たしね。それじゃあ行ってくるよ。あんまり時間をかけずに帰ってくるから。」


「わかった、いってらっしゃい。」


「行ってらっしゃい!カルナ姉さん!本いっぱい買ってきてね!」



手をひらひらと振ってカルナは出かけて行った。

ヘレナと2人きりだと、あの時のことが頭をよぎるが、今はあまり暗い顔を見せたくない。



「それじゃ、何かするか?」


「うーん、あっ、じゃあ私これがいい!カルナ姉さんがこの間買ってくれたんだ!『カタン』っていうゲームなんだけど⋯。」



こうしてカルナが戻るまでの間、私はヘレナと新しいゲームで遊び、過ごしていた。

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